1.全国の女性外来の現状調査(性差に基づく女性医療のあゆみ:天野恵子):2004年12月末で47都道府県全てに設置され、328施設を確認できている。女性外来の質は医師・保健士の人柄とその力量によるが、全国の女性外来担当医師は平成14年12月より体系的な漢方とメンタルヘルスならびに生活習慣病に関する勉強会を継続し成果を上げている。漢方に関しては、じほうよりテキストとして「女性外来スターターキット」が発刊された。千葉県ではコメデイカルのための勉強会も東金病院を中心として持ち回り形式で行われ、本年3月には東金病院女性外来患者による「よりよい女性医療のための患者の会」が立ち上がった。
2.女性外来担当医師への情報発信と教育提供の場としてのWEBサイトにおける運用(性差医療情報ネットワークNAHW:松永晶子):現在、全国の女性外来情報ならびに海外ニュースが随時更新されており、女性外来に関する情報ソースとしては最も信頼が置けるサイトであり、ユーザーからのアクセス数が最も多い医療ウエブサイトである。ホームページならびにメイリングリストにより全国で展開されている女性医療関連のセミナーの紹介、予約申し込みをも行っている。年に1回学術集会を行い、女性外来担当医師の情報交換の場ともなっている。NAHWについては千葉支部が平成15年度に、東京支部が平成16年度に立ち上がり「性差に基づく女性医療」を目指した系統的な勉強会を展開している。
3.全国の女性外来患者を対象とする疫学調査のためのデータファイリングシステムの開発と運用(性差に基づく女性医療―患者調査・データファイリングシステム・遺伝子多型臨床研究:竹尾愛里):千葉県立東金病院を2001年〜2003年に受診した患者データを基として、全国の女性外来で共通に使用しうる使い勝手の良いデータファイリングシステム「女性外来患者データベース」の開発を行い、2004年のアクセス版による試行期間を経て、2005年よりWEB版の運用を開始している。病名に関しては将来電子カルテ中において利用できるようにするため、ICD10のコード番号と連携したソフトを構築した。全国10ケ所の施設に現在は無料配布され、試行を重ねている。データは最終的には千葉県衛生研究所に送付され、データ解析が行われることになっている。
4.女性外来評価法構築のためのプレ調査(東金病院における患者満足度調査:近藤正晃ジェームス):2004年に千葉県立東金病院の受診者を対象として、患者のニーズや満足度に及ぼす要因を検討する目的で、アンケートならびに面接による患者満足度調査を行った。受診者の7割が40歳代、50歳代の更年期世代であり、受診者が女性外来に期待するものには「医師との信頼関係」「性差に基づく医療」の2つの側面が見られ、前者については高い満足度が認められたのに対し、後者については患者の満足度は低く医師の技量・経験に大きく左右された。今回の調査から、医療連携等の更に検討されるべき項目も明らかとなり、2005年には千葉県から予算補助を受けている10施設について、患者満足度調査と機関評価を行う予定である。
7.全国9病院における処方内容調査ならびに薬物動態研究(医療薬の薬物動態における性差研究:上野光一):薬局に来局した女性患者に対する性差医療に関した意識調査、全国9病院における医療用医薬品の男女別処方実態調査ならびに遺伝子解析と薬物血中濃度からの動態性差に関する研究を行った。意識調査では、女性専用外来にはニーズがあり、特に更年期の患者での需要が高いことが示唆された。薬剤師に対しては、性差医療や女性専用外来に関する情報提供が望まれていることがわかった。処方については、調査した9医療機関においては、女性に処方されやすい薬剤の方が男性に処方されやすい薬剤よりも多かった。また、女性に処方されやすい薬剤では、中枢神経系用剤が多く、男性に処方されやすい薬剤では循環器官用剤が多いことがわかった。さらに、疾患における性差が処方薬剤に影響していることが示唆された。NAT2遺伝子には性差がないことが示唆された。メトトレキサートに関連する酵素にも性差がない可能性が考えられた。今後、他の遺伝子についても確認する必要があると考える。
8.高齢者医療、生育医療における性差研究(高齢者の生活実態調査に関する性差:太田壽城、女性外来受診患者の心の特性:名取道也)高齢者では、静岡県内の平成11年(1999年)10月1日現在65−84歳の高齢者22040人に対して生活実態調査を行った。ほとんどの項目で性差がみられた。また、年齢を前期高齢者、後期高齢者と分類したところ、男性の後期高齢者が平均寿命の前後の集団であり、女性の後期高齢者が平均寿命前の集団であるにもかかわらず、男性の後期高齢者は生活に満足しており自分が健康で体調がよくて将来に希望をもち、一人で外出できる割合(77.9%)が女性の後期高齢者の割合(59.4%)より有意に高かった。
国立生育医療センターの女性外来受診者を対象とした健康度調査では、女性外来受診患者は、その主訴により心理特性に大きな違いがあることが明らかとなった。不安感、抑うつ感はこころの問題を主訴とする群では有意に強く、内科的主訴を有する患者でも強い結果となった。自分の身体の機能に自信があるか、日常活動にたいし身体面から不安がないかとの、項目においてもこころの問題を主訴とする群、内科的主訴を有する患者の2つの群では有意に低い値となった。 総合的に自分の健康度を評価する項目として、健康感、バイタリティー、社会生活についての自信という3つの項目で評価した結果でも不妊を主訴とする患者でほぼ問題がなく、こころの問題、内科的問題を主訴とする群では低い数値となった。
9.女性外来患者を対象とした臨床研究(「千葉県立東金病院女性専用外来の器質的疾患及び内分泌学的検討」ならびに「更年期障害とエストロゲン受容体多型との相関に関する臨床研究」竹尾愛里):千葉県立東金病院女性専用外来に平成13年9月開設時より平成15年8月までの2年間で受診した879名について、主病名における診断及び骨代謝と甲状腺機能について分析した。診断は更年期障害が27.3%、気分障害などの精神疾患が24.2%、月経困難症、月経前症候群などの婦人科疾患が15.8%と多くを占めた。更年期障害や月経前症候群でも何らかの精神症状を示すことが多く、精神的な症状への対応が必要であることが明らかになった。器質的疾患は21.6%であり、悪性腫瘍を診断されたものも少なくなかった。不定愁訴を訴える患者の中に重大な器質的疾患が存在することがわかった。
千葉県立東金病院女性専用外来を更年期症状を主訴に受診した女性33名及びコントロールとして一般外来を受診しており、更年期症状を殆ど経験していない女性18名について、症状についてのインタビュー調査を行い、WAVE法を用いてCAリピート数を解析し、症状とリピート数との相関について解析した。CAリピート数は14から25まで分布し、18のものが最も頻度が高かった。CAリピート数は3種に分類した。Extremely short(E):13<E<18, Short (S) : 17<S<22, Long (L): 21<L<26。ゲノタイプとしては、EL, SS, SL, LLの4種類に分類された。SLは最も頻度が多く、自律神経症状、精神神経症状が軽度であった。これに比較して、SS, LL, ELでは症状が認められるものが多かった。SSでは自律神経失調症状が認められる頻度が高く(odd's ratio(OR):7.0; 95% 信頼区間(CI):1.25-39.15; P value (P)<0.05)、精神神経症状が認められることも多かった(OR:13.0; CI:1.44-117; P<0.01)。また、ELでもホットフラッシュ(P<0.05)、精神神経症状(P<0.05)が多く認められた。