1.健康福祉センター(保健所)における女性のための健康相談
平成14年度から全県立保健所15ヶ所において「女性のための健康相談窓口」を開設し、常時、健康相談に応じるとともに、女性医師等による面接相談を実施している。
また、平成15年度からは千葉市および船橋市が当該事業に取り組みを始めたことによって、千葉県内のすべての健康福祉センター(保健所)において相談が受けられるようになり、現在は、県内16ヶ所で定例の健康相談を実施している。
県立健康福祉センター(保健所)における健康相談は、更に地域住民のニーズに応えるため、定例相談の実施にとどまらず、夜間、各種イベント時の開催、相談場所を移しての開催(出前相談)、市との共催による開催、コメディカルによる相談等、地域のニーズに沿った取組みへの広がりを見せている。
(1)平成16年度(4〜12月末日)14ヶ所の健康福祉センターにおける相談者の状況
平成16年12月末日の相談者の状況は、表1のとおりである。相談者総数は922人(平成14年度開設当初からの累積相談者数3,686人)、そのうち、面談による相談者は382人(41.4%)、電話のみの相談者は540人(58.6%)であり、1ヶ月平均の相談者数は、103人であり、開設当初よりやや減少している。なお、相談回数は健康福祉センター毎に月1〜3回の開催で、合計214回となっている。
(2)相談者の年齢
相談者の年齢は表2のとおりである。30〜39歳(24.6%)が最も多く、次いで40〜49歳(22.1%)、50〜59歳(17.9%)の順であり、最小年齢3歳から最高年齢90歳と幅広い年齢層となっている。
(3)相談者の主訴
相談者の主訴(相談者の訴え)は表3のとおりである。その内容をみると、不安、不眠、うつ状態等精神的訴え(30.9%)が最も多く、次いで月経不順、子宮筋腫、不妊等産婦人科領域の訴え(27.7%)、のぼせ、ほてり、頭痛等更年期症状(13.3%)と順になっている。特に、精神的訴えの相談者が1/3を占めており、必要に応じ、各健康福祉センターで別途定例開催をしている精神保健福祉相談へ紹介し連携を図っているところである。
また、その他の訴えの中には、生活習慣病を始めとする各種疾患、排泄等身体症状、DVや家族関係、生活上の問題等多岐にわたっている。
面相談を担当する者は、内科医、産婦人科医、心療内科医、精神科医、助産師、臨床心理士、保健師等である。
2.女性専用外来の拡充
平成13年9月に、都道府県立病院としては全国はじめての女性専用外来を県立東金病院に開設して以来、県内各地の女性たちからの強い要望に応え、女性専用外来の設置促進するため補助制度を創設し、現在では、県立の医療機関3ヶ所、公的・民間の医療機関7ヶ所の合せて10ヶ所に拡大し、概ね二次保健医療圏毎に女性専用外来が開設されている。
平成16年12月末日現在、県内10ヶ所の女性専用外来において、延べ5,600人(平成13年9月以降の累積受診者数約14,600人)の女性が受診し、450人余りの待機者がいる。
また、これらの受診者の主訴を見ると表4のとおりであり、更年期障害(33.7%)が最も多く、精神科疾患(21.0%)、産婦人科疾患(14.9%)となっている。
主訴について健康福祉センターと女性専用外来を比較してみると、更年期症状が最も大きな差であり、女性専用外来の方が約20ポイントと高くなっている。
3.女性の健康応援団ジョイナス事業
−県内各健康福祉センターを核とした地域ネットワークの構築−
女性のライフステージを通じて、自分で健康管理ができるようにするためには、行政や地域の様々な保健医療サービスを担っている機関・関係者が、その地域で女性の健康を支援するネットワークを構築することが大切である。
このため、平成14年度には、2カ所の保健所で女性の健康支援体制促進事業モデル事業を実施、平成15年度からは全県立保健所において取り組みを行い、地区医師会、歯科医師会、薬剤師会、助産師会、看護協会、産業保健関係者、教育関係者、市町村、住民などで構成される協議会等の設置が図られた。
平成16年度は、更にその協議会を中心に、関係機関における具体的な取組みや連携強化が進んでおり、S健康福祉センターにおける取組み例を記述する。
平成15年度協議会を設置し、関係機関との連携のあり方について検討が行われ、関係機関の見学や健康福祉センターにおける出張相談、市町村における健康相談の開設等の取組みが推進された。
平成16年度は、システムの構築を目指し、個々の事例を通して具体的な検討が行われた。S健康福祉センター管内で開設する女性専用外来A病院との事例検討が重ねられ、お互いの機関における役割や関係者の専門分野に対する理解が深まった。その結果、S健康福祉センターとA病院とで相互に患者(相談者)紹介が円滑に実施され、更に福祉等の課題のある者に対しても、市町村へ連携され適切な支援が行われ、問題解決へと繋がっている。図1のとおり、S健康福祉センターにおける連携システムと地域ネットワークができあがり、今後、それぞれの窓口の明確化を図っていくこととしている。
4.女性のための健康教室
女性の健康に関する自己管理意識の向上を図るため、一般県民を対象に健康教室を平成14年度から開催している。平成15年度は35回開催し、約2,400人の参加があった。平成16年度も更年期や骨粗しょう症等女性の健康問題について、保健師等が講師となり健康教室を開催している。
5.保健・医療従事者等の研修
平成14年度から保健医療従事者の性差医療に対する理解と、女性専用外来や健康相談担当者の資質の向上を図るために研修会を開催してきた。
(1)研修会の開催
平成16年度も、表5のとおりそれぞれの関係者が業務の実施にあたり役立つ知識や技術、夜間や県内各地での開催等関係者が参加しやすい工夫をしながら開催し、延べ450人(平成17年1月末日現在)の参加を得た。研修における必要な知識の習得だけでなく、参加者がお互いの機関の業務を理解し、連携の強化を深め事業の効果的に運営を果たすために役立っている。
また、県主催の研修会だけでなく、健康福祉センターを中心にした事例検討会やNPO等主催による研修会も開催され、多くの関係者が参加している。
(2)「性差を考慮した保健医療シンポジウム」の開催
平成15年度は県内の保健医療従事者や行政関係者を対象とし、平成16年度には一般県民を対象に、生涯を通じ生き生きとした生活を送るために、よりよい保健医療を目指して、保健医療従事者と県民が一体となって方策を考えることを目的に表6のとおり開催をした。県民約1,900人の応募があり、その関心の高さを示した。
パネルディスカッションでは、それぞれの関係機関の代表者がその役割を述べ、今後一層、お互いが連携を図りながら、よりよい保健医療サービスの提供に努めることとされた。
6.疫学調査
平成14年度に設置した「女性の健康に関する疫学調査検討会」の意見を踏まえ、県民の健康状態や生活実態を明らかにするとともに、本県の健康課題について具体的な政策提言につなげることをねらいとした、5つの調査研究を15年度から開始し、その主な調査結果は次のとおりである。
(1)県民健康基礎調査
目的: 女性の健康や医療に関する課題を明らかにし、性差を踏まえた科学的な根拠に基づく保健医療施策を推進するための基礎データ−を収集する。
調査対象: 15歳から74歳までの県民6,000名(住民基本台帳から無作為抽出)
調査項目: 県民の健康状態や健康に関する関心・意識、健康に影響を与える様々な社会的・経済的背景等
調査方法: 郵送によるアンケート調査、隔年実施予定
回収結果: 47.8%(2,868件)
主な調査結果: @女性に顕著なやせ志向、
A男性に多い高血圧、糖尿病、痛風、女性に多い喘息・アレルギー疾患、
B女性の閉経後に急増する高コレステロール血症、
C喫煙率は30〜40歳代男性の約5割、20歳代女性の約3割、
D20〜30歳代女性の健診未受診は約5割、
E女性専用外来の認知度は40〜50歳代女性の約4割、
FDV経験者は女性の約3割
(2)検診データ収集システムの確立(中間報告)
目的: 市町村が老人保健法に基づき実施している基本健康診査で得られる健康情報の標準化・集積し、市町村間で健康指標として活用できるシステムの構築
調査方法: @健診情報から個人特定情報を削除し、情報を集積するプログラムの構築、
A検査機関における制度管理のデータの標準化作業の実施
調査結果: @協力予定市町村数は34(平成15年度16、平成16年度9)、A平成14・15年度分の検査情報収集数は約10,7000人、B7検査機関のデータは標準化の補正なし、C市町村間で血圧測定回数、採血時間、現症状・既往歴・治療状況等に関する入力情報に差異がある。
(3)鴨川市・天津小湊町おたっしゃ調査
調査目的:生活習慣と病気の関連を明らかにし、高齢になっても寝たきりや痴呆などにならない健やかな長寿の実現のための健康増進施策の基礎資料とする。
調査対象: 鴨川市・天津小湊町の40歳以上の全住民23,073人
調査項目: 生活習慣や保健サービス利用状況と健康状態などの関係
調査方法: 郵送によるアンケート方法
回収結果: 46.5%(10,127人)
主な調査結果: @1年前と比べて健康状態の悪化が約2割、A健診に一般住民健診の利用者は約5割、B健診の結果、高血圧は男性の約3割、高脂血症は女性の約4割、C40歳代の男性の約5割が喫煙者、D運動(身体活動)が足りていないと感じている者は約6割、E健康補助食品の利用は女性の約2割
今後、アンケート調査結果と健診結果や介護保険の認定状況との関連、健診結果等の追跡するコホート調査を継続して実施する予定である。
(4)千葉県における子宮頚癌の若年化とHPV感染の実態調査
調査目的: 若年化傾向にある子宮頚癌とHPVとの関連を明らかにする。
調査方法: T病院凍結組織管理委員会の管理する子宮組織について、HPVの感染状況を調査
調査結果: @患者の平均年齢は子宮頚癌患者が51.1歳、子宮体癌患者が60.8歳、AHPVの感染率は、子宮頚癌患者100%(13例)、子宮体癌患者の9%(2例)が陽性、B子宮頚癌患者の罹患年齢は25〜81歳
(5)女性のライフステージ調査
調査目的: 女性の生殖歴に関するライフイベントの統計データを明らかにする。
調査方法: C検診機関が2003年度と1977年度に実施した子宮がん検診受診者の問診データを比較検討
調査結果: @26年間に平均妊娠回数は3.43回から2.55回に、平均出産回数は2.37から2.06回に減少、A閉経年齢は2.0歳(48.3→50.3歳)延長し、初潮年齢は0.7(14.3→13.6歳)若年化している。
以上のとおり、県単独事業として実施した疫学調査については、概ね調査を終え、性差、年齢、地域差多くの健康課題が明らかになった。
今後、継続した調査を重ね、本県の施策展開につながるだけでなく、全国へも貴重な資料が提供できるものと考えている。
7.県内外への波及
(1)県内への波及
県内医療機関における女性専用外来の拡大、健康福祉センターを核とした地域ネットワークの構築、研修会等を通して、県民や保健医療関係者の女性の健康問題に対する関心が高まっている。
(2)県外への波及
本県の女性専用外来の取組みは、全国の医療機関へ拡大し、さらに、厚生労働省が公表した「医療提供体制の改革のビジョン」や「健康フロンティア戦略」においても、「女性専門外来の設置促進」等が明記され、現在では、42都道府県250以上の公的・民間の医療機関で女性専用外来が開設され、多くの女性が受診をしている。
また、全国知事会において、性差に基づく健康課題を明らかにするとともに、女性が生涯を通じた良質な保健医療サービスを得るために、必要な女性の健康支援に関する環境整備や女性専用外来など女性医療の研究及び体制整備の充実を検討する基礎データを収集する目的で、各都道府県を対象に「女性の健康支援に係る調査」を実施しており、現在集計をしているところである。
8.今後の課題
本県が女性の健康支援に取組み始め4年目であり、更に、生涯を通じた健康支援を発展させるために、今後の課題を整理する。
(1)性差を考慮した保健医療の充実
女性専用外来、健康相談及び疫学調査を等の事業を通して、女性・男性という性差が明確になり、「女性」特有の保健医療ではなく、「性差」を考慮した保健医療の視点の重要性が認識されてきた。
患者の心と体を総合的にみ、診断や生活環境等にも大きく性差が影響を与えている視点を踏まえ、予防や診断治療の確立を目指し、患者一人ひとりに適切な保健医療が提供できるよう、更に、体制の充実強化を図っていくことが必要である。
(2)地域のネットワークづくり
健康福祉センターを核とした地域ネットワークが構築され、より身近な地域で気軽に相談が受けられる体制が整備されつつあり、健康相談や女性専用外来と地域の専門医との連携が図られ、相談事業から医療へと継続的な支援も可能となっている。
今後、女性のみならず子どもから高齢者まで県民の誰もが生き生きと暮らせる社会を目指して、サポート体制を整備していくことが必要である。
(3)事業の評価
事業を開始して4年目、健康福祉センターにおける健康相談者の満足度は、平成15年度のアンケート調査で「満足」「ほぼ満足」と回答した者は99%であり、高い評価を受けている。
今後は、健康相談者や女性専用外来の受診者の健康問題が解決され、生活の質の向上がどの程度図られたのか等個々の事例に対する評価が必要である。また、これらの事業を通して、千葉県の総合的な健康づくりを展開する指標として策定した「健康ちば21」の健康課題の解決のためにどのような効果を果たしているか等事業の客観的な評価を行う必要がある。