1患者の健康状態の変化について
本来、調査 1はclinicalもしくはmedicalな面での結果がどうであったのかを調べるものである。それには、まず「女性外来を受診した際の症状について」、「女性外来にかかったことによる症状の変化について」、そして「女性外来で治して欲しいと考えた症状についてどのような改善が見られたのか」を調べる必要がある。調査1でも、女性外来を受診した際の症状を問3で聞いているが、設問の内容に重複が多い。竹尾らの「千葉県立東金病院における女性専用外来の歩みと今後の課題について」 3) によると東金病院の女性専用外来受診者の疾患頻度は、更年期障害43.6%、精神疾患13.6%、 婦人科疾患 12.3%、器質的疾患11.3%、不定愁訴5.9%、その他13.7%となっている。本アンケートの問3で、婦人科疾患や他の器質的疾患に関する症状を主訴として受診する患者を選別することは必要であろうが、それ以外の患者に関しては、決まった症状を呈しづらく、うまく疾患と対応させるために項目の工夫が必要であることが示された。例えば精神疾患の頻度は13.6%なのに対して、「心のこと」選択者は32%、「身体の不調」は79%であるがこれがどの様に主訴と対応しているのか分かりづらい。
また、投薬歴や服薬の有無に関しても触れられていないが、医療機関にかかっていることと服薬の有無とは全く別に考えられるべきものであり、今後は取り組むことが求められる。
次に女性専用外来に受診したことによる症状の改善についてだが、調査 1の問4では「解決した」を選んでいない群が70%なのに対して、健康状態で「ふつう」以上を選択していることから、一見整合性に問題が生じており、治療効果のアウトカム評価については手法の改善の必要性が示唆された。
2受診目的・受診内容について
調査 3において、「女性外来は医師が女性であることが最重要」、「女性外来では(相手が女性医師なので)十分にコミュニケーションが取れるだろうと思い、狭心症・更年期障害について意見を求めて受診した」、「医師の経験が重要。女性であるかどうかは重要視しない。他院の女性外来では若い女性医師に担当されたが、十分な安心感は得られなかった」、「出産後の体調不良に対して、自分の症状にあった治療をしてくれるのではないかと思い女性外来を受診した」といった意見があった。こうした意見を踏まえるなら、患者のニーズが大きく二つに大別されると思われる。即ち「医師との信頼関係を求める」と「性差医療のスペシャリストに見てもらいたい」というものである。実際には勿論その双方を求めているものも多いのであろうし、信頼関係と性差医療を求めている群を明確に分けることは困難であるが、このように患者のニーズを大別することで、後に行うべき患者の層別化に非常に有用であると考えられる。
また、年齢により(比較的低年齢と高年齢層にて)、受診理由・内容の差が認められた (図16・17)。東金病院の患者は40代・50代にその70%が集中しているが、40代・50代における主な受診内容は「身体の不調や更年期障害について説明を求めること」で、受診理由は「女医が診察してくれるから」、「女性疾患に特化した病院だから」というものが多かった。それに対して、20,30,60,70代の患者は残りの30%を占めるが、受診内容は20代・30代では「月経」・「妊娠出産」について、60代・70代では「今受けている治療の説明を聞きたい」というものが多く、受診理由も20代・30代では「女性特有の症状について」、60代・70代では「男性の医者でもいいから今の治療について説明して欲しかった」というものが多かった。これは、40代・50代の更年期障害を中心とした患者群以外の患者群におけるニーズの違いを示唆している。それらの患者群においては満足度にも差が存在した(後述)。
図 16 年齢層による受診内容の違い
図 17 年齢層による受診理由の違い
3患者満足度について
女性専用外来の歴史の浅さを考えても、患者満足度は概ね高いと言える。しかし、改善すべき問題点もいくつか見られる。
具体的には調査 2の結果から、診察中に関しては「医師の知識量が少ない」、「話を理解してもらえない」、「医師による説明が不十分」などの問題点が、診察外に関しては「待ち時間が長すぎる」、「設備が充実していない」、「他科との連携が良くない」などの問題点があった。これは以下の調査3の結果からも同様の意見が多く寄せられている(「待ち時間、アクセス、最終結果を考えると、近くの病院に行った方がましと思う。」や「全体的に設備が汚い、アクセスが悪い、待ち時間が長いのが不満」など)。
診察外の項目に対する改善策としては、様々な経営手法による工夫(例、待ち時間の分析による新たな予約方法の開発など)が可能であるが、そもそも診察外(前・後)の諸要素に対する患者の重要度は低いことを考慮すると、まず着手すべきは診察中の諸要素である。
診察中の項目に関する改善策に関連して、患者は、性差医療の専門的な知識を求めている群(満足度のバラツキが大きい)と、女性医師にじっくり相談したいという医師との信頼関係を求めている群(概して満足度が高い)に分かれることが示唆されることは先に述べた。診察中の満足度は、医師との信頼関係を求めている層は概して満たされているが、専門的な知識を求めている層の満足はそれに比して低い結果となっている (図18)。その背景となる要素として、医師の技量のバラツキが考えられる。そこで、調査1の結果とそれぞれの患者の主訴のデータから、調査1の120人の患者について、「性差医療の専門的な知識を求めている群」 と「医師との信頼関係を求めている群」に分け、主治医ごとにそれぞれの患者群の平均満足度を、調査 1の問8にて「満足した」を2点、「ほぼ満足した」を1点、「不満が残る」を0点として求めた(図19)。「医師との信頼関係を求めている群」では満足度はどの医師でも概ね高かった(1名以外は1点を上回る)が、「性差医療の専門的な知識を求めている群」については主治医により大きなバラツキが存在し、1点を上回るものは2名のみと、医師の専門的技量が多分に問われていることが示された。このように、専門的な知識を求めている層の満足は医師の技量に依存しており、その技量の全体的な底上げこそが今後の課題であることが明らかになった。
図 18 「信頼関係を求める群」と「性差医療を求める群」の満足度の差
なお、先に述べたように、年齢によっても満足度に差が見られた (図20)。図19においてと同様に調査1の結果から平均満足度を求めると、比較的低年齢(20代・30代)と高年齢層(60代・70代)の満足度が低いという結果となった。40代50代は調査1での「また来たいか」という問いに対しても95%が「はい」と答えている。それに対して20,30,60,70代は「また来たいか」という問いに対して40%しか「はい」と答えていない。このような年齢層による満足度の相違の背景として、20代・30代と60代・70代では40代・50代と比して、「性差医療の専門的な知識を求めている群」の割合がやや多いこともその一因と考えられるが、それだけでは説明がつかず、「性差医療の専門的な知識を求めている群」と「医師との信頼関係を求めている群」以外の患者のニーズの存在が示唆される。
|
 |
図 19 患者を2群に分けた時の医師ごとの平均満足度 |
図 20 年齢層別満足度 |
4今後望まれること
以上を要約すると、東金病院で満足度の高い群は、「女性医師にじっくり話を聞いてもらいたい」という者が主であり、「性差医療により専門的に診てもらいたい」という群の満足度は医師によりバラツキが大きい。
まずは、この二群を明確に区別しうるような調査項目の開発が肝要である。
なお、前者に対して、女性医師が丁寧に相談に応じるというサービスに対するニーズの高さから、千葉県では 2002年5月から県内15ヶ所の県保健所において、女性医師による「女性のための健康相談窓口」が開設されている。 7)
今後とも、こうしたサービスとの連携を図るとともに、「女性専用外来および保健所女性健康相談における健康ニーズに関する調査」のような、女性外来の患者に加えて健康相談窓口の利用者に対しても調査・分析を行っていくことの重要性が示唆される。
後者に関しては、今後の性差医療の研究ならびに専門家の教育・育成の必要性を強く考えさせる結果であると考える。専門家を育成し研究を進めることはこうした患者のニーズに応える結果となるだろう。
また、こうした 2群に共通して、コ・メディカルスタッフとの協力は不可欠であると同時に、診療所や調剤薬局などとの地域連携も重要である。 4)8) 性差医療の発展とともに、患者をサポートする体制作りは今後の重要な課題であろう。