平成16年度厚生労働科学研究費補助金 子ども家庭総合研究事業

          

 

U-(4)  東金病院女性外来における患者満足度調査


研究協力者 近藤正晃ジェームス(東京大学先端科学技術研究センター 特任助教授)

 

このたびの調査は東京大学医学部のクラークシップ (東京大学先端科学技術研究センター近藤正晃ジェームス研究室「医療政策クラークシップ」)の一環として行われ、東京大学医学部の学生合計7名(岡田随象、五ノ井渉、川端亮、木畑宏一、坪倉正治、原聖吾、藤田卓仙)が参画した。運営は、近藤研究室の坪内南特任助手と海津智子が担当した。

 

要旨

女性専用外来が多くの女性に支持され全国的な広がりを見せているが、その内容の評価については十分な研究が行われていない。女性専用外来の質を継続的に担保していくためには、こうした評価の作業が何よりも重要である。これまで、一部の女性専用外来では、全体的な患者満足度についてのアンケートを実施しているところもあるが、患者のニーズや満足度に及ぼす要因に関しての調査は十分になされてこなかった。そこで今回、千葉県立東金病院の女性外来の患者全体に対しアンケート調査を行い、その一部に対し患者満足度に関する定性的・定量的調査を行った。その結果、患者は、性差医療による専門的な治療を求めている群と、必ずしも専門的な性差医療を必要とせず女性医師との信頼関係を中心に求めている群とに分けられることが示唆された。後者の満足度は全体的に非常に高いのに対し、前者の満足度は医師によりバラツキが多い。今後のわが国での性差医療の研究に向けて、この 2群を明確に区別できるような疫学調査が今後期待されるとともに、前者を満足度高く診れるような性差医療の専門医の養成が望まれる。

 

Tはじめに

 

近年、女性の医学的問題とヘルスケアが注目を集めている。男性と女性とで、有病率や死亡率、疾患の発現様式などに差があるにもかかわらず、疾患に関する研究は男性を中心としたものが多い。産婦人科的な疾患の他にも、病態・診断・治療上存在する性差による違いを考慮した医療の必要性から、米国では 1990年頃よりOffice of Research on Women's Health(ORWH)の開設や the Women's Health Initiativeプロジェクトの開設など性差医療(Gender-specific Medicine)の概念が広まっている。

米国から遅れること 10年し、わが国でも性差医療の概念を基本とした女性専用外来が作られ始めている。

2001年9月には自治体立病院としては全国で始めての女性専用外来が、堂本暁子千葉県知事の強い要請のもと、千葉県立東金病院にて開設された。開設直後から、県内のみならず、近県からも予約が殺到した。評判も上々であり、開設当初の医師1名・週一回体制から、医師三名月7回に拡充し、千葉県内だけでも県立病院3ヶ所、公立・私立病院7ヶ所で女性専用外来を開設するに至り、全国でも2004年3月の段階で41都道府県180ヵ所と爆発的な広がりを見せている。

千葉県が平成13年に策定した「健康ちば21」 1) において、千葉県の女性における医療保健上の問題点として明らかにされた課題は次の5点である。@女性では動脈硬化性疾患による死亡が最も多い。A働き盛りの女性は、乳ガンによる死亡が最も多い。B若年女性のカルシウム摂取が著しく低下している。C更年期女性のケアが十分ではない。D20歳未満の女性の人工妊娠中絶が急増している。

これらの問題点を踏まえて、東金病院で女性専用外来を開設するにあたり、乳がんの早期発見のためのマンモグラフィーと骨粗鬆症の診断のための X線骨密度測定装置とを導入し、同時に専門医による乳腺外来と骨粗鬆症外来を導入している。

それ以外にも、女性のニーズなどから、女性医師が担当する、初診時30分の診察時間、診察室でのプライバシーへの配慮、他の専門外来との連携といったことが考えられ、行われている。 2)3)4)5)6)

このように、女性のニーズを考慮することで、女性外来は大きな反響が得られ、患者が殺到したと考えられるが、今後の保健医療戦略のための疫学調査はこれまであまり行われていない。

そこで、千葉県では、性差を踏まえた保健医療推進のための基礎データ収集を目的として、 2002年度に「疫学調査検討会」が設置され、「女性専用外来および保健所女性健康相談における健康ニーズに関する調査」などの疫学調査が行われている。 7)

今回は、千葉県立東金病院の女性外来に通院する患者にアンケート調査を行い、その一部に対し、より詳しい調査を行うことで、これまでのアンケート調査では分からなかったような、患者満足度に及ぼす要因の解析を行った。その結果を報告する。

 

 

 

U方法・目的

2004年2月に千葉県衛生研究所の天野恵子所長と共に、厚生労働省厚生労働科学研究費補助金子ども家庭総合研究事業『日本における女性医療の課題に関する医療社会学的研究ならびに女性の健康増進教育や女性診療におけるスタンダードの確立に関する研究』として、東金病院の女性外来に通院経験のある患者(現在通院していないものも含む)500名に対し、郵送にてアンケート調査(以下調査1)を行った。調査1については天野所長が調査項目を作成し、東京大学医療政策クラークシップチームが中立的な立場から解析を行った。

調査の質問項目を表 1に示す。その内容は、@現在の健康状態、A現在通院中かどうか、B女性外来の受診内容、C女性外来受診で問題は解決したか、D女性外来の受診理由、E女性外来の満足度F女性外来をまた利用したいか、G女性外来にさらに必要なサービス、についてである。

1.現在のあなたの健康状態について、当てはまる項目に○をつけてください。
@とても良い A良い Bふつう Cあまり良くない D良くない

2.現在医療機関にかかっていらっしゃいますか。
@かかっていない A東金病院 B他院

3.女性外来を受診した際の相談内容について○を付けて下さい。
@身体の不調 A心のこと B月経に関すること C妊娠・出産に関すること D更年期・閉経に関すること
Eいま受けている治療に関すること F診療施設に関すること Gがん健診に関すること Hその他

4.女性外来へ相談に来られた内容は、女性外来受診により解決しましたか?
@解決した
A解決しなかった B一部だけ解決した (ABの場合4−2へ)

4-2.その後女性外来で解決できなかった問題について、他の機関で解決しましたか?
@解決した (@の場合は診断と治療方法を質問) A解決しなかった

5.当院女性外来を受診された理由について、当てはまる番号全てを○で囲んでください。
@女性医師に自分の症状について相談したかった。
A女性医師でも男性医師でも良かったが、自分の症状について相談したかった。
B病気かどうかわからないため、病院に行くべきかどうかを相談したかった。
C自分自身の身体のことについて、総合的に診てもらえると思った。
Dいま、受けている治療について、詳しく説明が聞きたかった。
Eいま、受けている治療について、不安がある。
F月経(閉経)・子宮・卵巣・乳房をはじめとする、さまざまな女性に特有の症状について、診てもらえると思った。
Gその他

6.女性外来における対応に満足しましたか?
@満足した Aほぼ満足した B不満が残る

7.女性外来をまた利用したいと思いますが。
@はい Aいいえ Bどちらでもない

8.女性外来で、さらに必要と考えられるサービスは何ですか?

表1 調査1の質問項目

 

次に調査 1にて同意の得られた60名のうち32名に対し、対面ないしは電話により個別インタビュー及びより詳細なアンケート調査(満足度に関する定量的なアンケート調査(以下調査2)ならびに、聞き取りによる定性的な調査(以下調査3))を2004年3月4日(木)・5日(金)・8日(月)の3日間に渡って行った。調査2および3については東京大学医療政策クラークシップチームが設計および実施を全て担った。

調査 2における質問項目は表2の通りで、全体的な満足度、診察前・中・後の対応についての満足度および重要度(満足度にどの程度寄与したか)を、1-A及び2,3,4の各項目では(非常に不満・やや不満・まあまあ満足した・とても満足した)の4段階で、1-Bでは(絶対に思わなかった・あまり思わなかった・まあ思った・強く思った)の4段階で評価し、また2,3,4の各項目に関しては、「また東金病院に来るか来ないかを決める上でどの程度影響しましたか?」という質問にて重要度を(全く影響しなかった・そこまで影響しなかった・やや影響した・大きく影響した)の4段階で評価している。

1.全体的な満足度について

A.東金病院の女性専用外来には、満足されましたか?(されていますか?)

B.東金病院の女性専用外来にまた受診しようと思いましたか?(思っていますか?)

2.診察前の対応について (満足度と影響度)

A . 予約時の対応

B.受付・ロビーの雰囲気

C.受付の人の対応

D.受付から待合室までの流れ

E.待合室の雰囲気

F.待合室での対応

3.診察中の対応

A . 診察室の雰囲気


B.医師が女性であること

C.医師の知識

D.初回カウンセリングの質

E.医師による説明

F.他の病院や専門家との連携

4.診察後の対応

A . 診察後の看護婦の対応

B.会計の対応

C.処方せん受け取り

D.設備の充実

5.その他、重要と思われる項目がありましたら具体的に御記入の上、満足度と影響の度合いを御記入ください

 

表2 調査2の質問項目

 

調査 3においては、東金病院受診の経緯・動機について詳細に個別面接・電話形式で約1時間をかけて聞くとともに、調査2の質問項目以外で満足度に寄与していると思われる事象について患者に自由に話してもらった。

このように、定性的・定量的方法をともに行って患者満足度を調査することにより、アンケート調査のみでは読み取れない微妙な言葉のニュアンスを掴み、もれ・重なりなく把握し、年齢差といった従来のセグメント以外に、異なったニーズを有する患者セグメントを分離し、そのニーズを理解することが期待された。

なお今回の調査 1〜3から得られた教訓を踏まえ、2005年4月以降に、千葉県全体における女性専用外来の患者に対するClinical/患者満足度双方の視点からの調査が行われる (図1)。今回の小サンプルではあるが詳細な調査2・3の実施は今後の大規模な調査のための予備的な調査として位置づけられるものである。

 

1 今回調査の位置付け 

 

 

 V結果

A_調査1

500名のうち123名(24.6%)の回答が得られた。

その年齢の分布を図 2に示す。この結果はこれまでの東金病院の女性外来受診者全体の年齢分布とほぼ一致しており、40歳代・50歳代の閉経前後の受診者が3分の2を占めている。 3)

 図2 調査1での年齢分布

 

現在の健康状態は、図 3のように、ふつう(41%)、あまり良くない(33%)、良い(15%)の順であった。

現在の通院状況は、かかっていないものが 30%、東金病院に継続してかかっているものが20%、他院が40%となっている(図4)。なお、その他のうち10%が東金病院と他院の両方と答えていた。

図3  現在の健康状態
図4 現在の通院状況

 

女性外来の受診内容 (複数回答)は「身体の不調」(79%)、「更年期・閉経に関すること」(49%)、「心のこと」(32%)、「その他」(26%)、「いま受けている治療に関すること」(18%)、「月経に関すること」(11%)、「がん検診に関すること」(5%)、「診療施設に関すること」(3%)、「妊娠・出産に関すること」(2%)となっている(図5)

図5 女性外来の受診内容

 

 

女性外来受診で問題が解決したかという問いに関しては、「解決した」が 28%、「解決しなかった」・「一部だけ解決した」が合計69%であり、そのうち他院にて解決したものは14%となっている(図6)

図6 東金病院の女性外来で問題が解決したか

 

 

女性外来の受診理由 (複数回答)は多い順に、「女性医師へ症状について相談したかった」(79%)、「総合的に診てもらえると思った」(54%)、「女性に特有の症状について診てもらえると思った」(28%)、「病院に行くべきかの相談」(18%)、「その他」(17%)、「今受けている治療への不安」(14%)、「男性医師でもよいので症状について相談したかった」(11%)、「今受けている治療の詳しい説明」(9%)となっている(図7)

図7 女性外来の受診理由

 

女性外来の満足度は図 8に示すように、「満足した」・「ほぼ満足した」の合計が74%と、4分の3ほどは満足している。

再度利用したいかという問いに対しては 68%が「はい」と答えている(図9)

さらに必要なサービスに関してはここでは省略する。

     図8 女性外来の満足度(調査1)           

図9 再度利用したいか(調査1)

 

B調査2・3

まず、調査 2・3の対象となった 32名について、調査1の満足度・受診内容・受診理由に関し、調査1の回答者全体と比較した。調査2・3に参加した患者の方がやや満足度が高いようであったが、χ 2 検定では有意差がなく、サンプルバイアスはないことが確認された(表3)

 

調査 2の各質問項目に関して、全体的な満足度に関しては、「非常に不満」3%、「やや不満」26%、「まあまあ満足した」29%、「とても満足した」42%であった(図10)

図 10 女性外来の満足度(調査2)

 

また、「また受診したいか」という問いに対しては、「絶対に思わなかった」 3%、「あまり思わなかった」16%、「まあ思った」35%、「強く思った」45%の順であった(図11)。調査1とは選択項目が異なるために単純な比較はできないが、80%がまた受診したいと考えて いるとするならば、調査 1での回答以上の結果となる。より詳細な調査に参加する患者は満足度の高い患者であること、そして患者ニーズを詳細に聞き取る調査の実施自身が満足度を高めていることが推測される。

図 11 また受診したいか(調査2)

 

次に受診の各ステージごとの評価について述べる。診察前の対応については、満足度は全体的に高かったが、東金病院に来るか来ないかを決める上でどの程度影響したかを尋ねた「重要度」については概して低く、全体的な病院選択や満足度への影響は少ないことが分かった。より具体的には、満足度に関しては、「とても満足した」、「まあまあ満足した」の合計について、上位から「受付の人の対応」( 97%)、「受付から待合室までの流れ」(84%)、「受付・ロビーの雰囲気」(78%)、「予約時の対応」(72%)、「待合室での対応」(63%)、「待合室の雰囲気」(53%)であった。全ての項目で「満足した」の割合が50%を越えていた。また、重要度に関しては、全ての項目で「全く影響しなかった」が最も高い値となりほぼ過半数を占めた。また全ての項目で「やや影響した」の頻度が低く、10%以下となった(図12)

 

 

表3 サンプルバイアスについて

 

調査 1 全体

調査 2 ・ 3 対象

総数 ( 人 )

123

32

平均年齢 ( 歳 )

52.7

56.0

標準偏差

10.6

9.0

満足度

 

 

満足した

34(28%)

12(38%)

まあまあ

56(46%)

15(47%)

不満

30(24%)

3(9%)

再度利用したいか

 

 

はい

84(68%)

22(69%)

いいえ

11(9%)

2(6%)

どちらでもない

27(22%)

1(3%)

受診内容

 

 

@身体の不調

97(79%)

24(75%)

A心のこと

39(32%)

12(38%)

B月経に関すること

14(11%)

2(6%)

C妊娠・出産に関すること

3(2%)

1(3%)

D更年期・閉経に関すること

60(49%)

19(59%)

Eいま受けている治療に関すること

22(18%)

5(16%)

F診療施設に関すること

4(3%)

0(0%)

Gがん検診に関すること

6(5%)

3(9%)

Hその他

32(26%)

11(34%)

受診理由

 

 

@女性医師に自分の症状について相談したかった。

97(79%)

29(91%)

A女性医師でも男性医師でもよかったが、自分の症状について相談したかった。

13(11%)

2(9%)

B病気かどうかわからないため、病院に行くべきかどうかを相談したかった。

22(18%)

4(13%)

C自分自身の身体のことについて、総合的に診てもらえると思った。

66(54%)

20(63%)

Dいま、受けている治療について、詳しく説明が聞きたかった。

11(9%)

1(3%)

Eいま、受けている治療について、不安がある。

17(14%)

3(9%)

F月経(閉経)・子宮・卵巣・乳房をはじめとする、さまざまな女性に特有の症状について、診てもらえると思った。

35(28%)

9(28%)

Gその他

21(17%)

5(16%)

図 12 診察前の対応

 

次に診察中の対応については、受診ステージの中で最も患者にとって重要度が高い方で、満足度については概してとても高いものの、その中の「とても満足した」比率は受診前や受診後と比べて高くはなかった。 (図13)。より具体的には、満足度に関して「とても満足した」、「まあまあ満足した」の合計は上位から「医師が女性であること」(97%)、「初回カウンセリングの質」(87%)、「診察室の雰囲気」(81%)、「医師の知識」(81%)、「医師による説明」(79%)、「他の病院や専門科との連携」(69%)であった。全ての項目で「満足した」の割合がほぼ70%を越えていた。「他の病院や専門科との連携」の満足度が少々低かったことは注目すべきことである。また、重要度に関しては、「診察室の雰囲気」、「他の病院や専門科との連携」の2項目は「全く影響しなかった」が最頻値であった(それぞれ48%、41%)が、その他の4つの項目は「やや影響した」が最頻値であり、「大きく影響した」を加えると過半数を占めた。

図 13 診察中の対応

 

最後に診察後の対応については、診察前の対応と似た結果となり、満足度は概して高いが、重要度は概して低かった (図14)。より具体的には、「満足した」の割合は「診察後の看護婦の対応」(79%)、「会計の対応」(91%)、「処方箋の受け取り」(96%)は他と同じように高かったが、「設備の充実について」は少し低かった。(45%、「やや不満」が48%)。重要度に関しては全ての項目で、「全く影響しなかった」が最頻値となった。

図 14 診察後の対応

以上の結果を、「とても満足」・「大きく影響」を 4点、「まあまあ満足」・「やや影響」を3点、「やや不満」・「そこまで影響しなかった」を2点、「非常に不満」・「まったく影響しなかった」を1点としたときの各項目の平均・標準偏差は図12〜14の右側に示した通りである。

また、各項目の満足度と重要度の平均の分布を図 15に示す。患者にとって最も重要度が高い診察中の諸項目が概して満足度が高く、それが全体的な満足度に貢献していることが見てとれる。

図 15 満足度と重要度の分布

 

調査 3は各人について約一時間の詳細なヒアリングを行ったため、その内容は多岐に渡り、その個別性の中に重要な教訓が内包されているが、プライバシーの問題もあり詳細な内容は割愛する。ここでは発言の主項目から抜粋したものを表4に示す。

「もともと色々な病院にかかっていたが、自分の体のメンテナンスをしてくれるかかりつけの医師が欲しかった」、「病院をいくつも巡ったが解決できず、東金病院のことを人づてに聞き、予約」というように、 女性外来にかかる患者は、すでに他の病院で治療を受けているものの、満たされずに来院している患者が多かった。

また、女性外来に望むものとして、「ただ女医と話をすることが出来ればよい」という声がある一方で、「医師が女性であることは関係ない。自分の症状をしっかり把握して治療を行ってくれるならそれでよい」という意見も見られた。


 

W 考察・今後の計画

Aアンケート項目の改善方法について

1患者の健康状態の変化について

今回の調査1における質問項目のみでは、患者の健康状態の変化ないし治療効果を明確に把握することは困難である(後述)。また、現在の通院状況に関しては、「東金病院」と「他院」の双方を選んだものも多く混乱があったと予想されるので、次回からは「東金病院および他院」という項目を加えてどれか一つを選ばせるべきと思われる。

2受診目的・受診内容について

調査3にて聞き取った内容と調査 1の結果を照らし合わせると、調査1にては「その他」という回答が多かったことから示唆されるように、網羅性が不十分であった。今後の調査では調査2の受診の各ステージを明確に示し、その中で調査3で示された重要な項目を洩れなく加えていくことが求められている。

3患者満足度について

調査 1における3段階評価(真ん中の「ほぼ満足」が約半数)より、調査2における4段階評価の方がどちらかというと満足か不満足か明確なスタンスを取ることを求めており、評価を行う上ではより適切であると思われる。

再利用したいかどうかについては、調査 1の「どちらでもない」という選択肢により、調査3の結果との差が生じたと思われ、これも今後は2段階ないし4段階での回答が望ましいと考えられる。

重要度と「また来たいか」という質問の結果を重回帰分析したところ、重相関係数 0.76であり、また来たいかどうかを推し量る要素としては有用であることが示された。満足度調査を実施しても個別要素の重要度が分からなければ対策の優先順位がつけられず、重要度調査の重要性が改めて示された。しかし、重要度の概念は調査時口頭にて質問の意味を説明する必要があったため、書面のみでの調査時には注意を要すると思われる。

また、調査 3にて看護婦に関する意見が散見され、看護婦に関する項目を診察後の一項目以外にも増やすことが望まれる。

 

B調査結果について

1患者の健康状態の変化について

本来、調査 1はclinicalもしくはmedicalな面での結果がどうであったのかを調べるものである。それには、まず「女性外来を受診した際の症状について」、「女性外来にかかったことによる症状の変化について」、そして「女性外来で治して欲しいと考えた症状についてどのような改善が見られたのか」を調べる必要がある。調査1でも、女性外来を受診した際の症状を問3で聞いているが、設問の内容に重複が多い。竹尾らの「千葉県立東金病院における女性専用外来の歩みと今後の課題について」 3) によると東金病院の女性専用外来受診者の疾患頻度は、更年期障害43.6%、精神疾患13.6%、 婦人科疾患 12.3%、器質的疾患11.3%、不定愁訴5.9%、その他13.7%となっている。本アンケートの問3で、婦人科疾患や他の器質的疾患に関する症状を主訴として受診する患者を選別することは必要であろうが、それ以外の患者に関しては、決まった症状を呈しづらく、うまく疾患と対応させるために項目の工夫が必要であることが示された。例えば精神疾患の頻度は13.6%なのに対して、「心のこと」選択者は32%、「身体の不調」は79%であるがこれがどの様に主訴と対応しているのか分かりづらい。

また、投薬歴や服薬の有無に関しても触れられていないが、医療機関にかかっていることと服薬の有無とは全く別に考えられるべきものであり、今後は取り組むことが求められる。

次に女性専用外来に受診したことによる症状の改善についてだが、調査 1の問4では「解決した」を選んでいない群が70%なのに対して、健康状態で「ふつう」以上を選択していることから、一見整合性に問題が生じており、治療効果のアウトカム評価については手法の改善の必要性が示唆された。

2受診目的・受診内容について

調査 3において、「女性外来は医師が女性であることが最重要」、「女性外来では(相手が女性医師なので)十分にコミュニケーションが取れるだろうと思い、狭心症・更年期障害について意見を求めて受診した」、「医師の経験が重要。女性であるかどうかは重要視しない。他院の女性外来では若い女性医師に担当されたが、十分な安心感は得られなかった」、「出産後の体調不良に対して、自分の症状にあった治療をしてくれるのではないかと思い女性外来を受診した」といった意見があった。こうした意見を踏まえるなら、患者のニーズが大きく二つに大別されると思われる。即ち「医師との信頼関係を求める」と「性差医療のスペシャリストに見てもらいたい」というものである。実際には勿論その双方を求めているものも多いのであろうし、信頼関係と性差医療を求めている群を明確に分けることは困難であるが、このように患者のニーズを大別することで、後に行うべき患者の層別化に非常に有用であると考えられる。

また、年齢により(比較的低年齢と高年齢層にて)、受診理由・内容の差が認められた (図16・17)。東金病院の患者は40代・50代にその70%が集中しているが、40代・50代における主な受診内容は「身体の不調や更年期障害について説明を求めること」で、受診理由は「女医が診察してくれるから」、「女性疾患に特化した病院だから」というものが多かった。それに対して、20,30,60,70代の患者は残りの30%を占めるが、受診内容は20代・30代では「月経」・「妊娠出産」について、60代・70代では「今受けている治療の説明を聞きたい」というものが多く、受診理由も20代・30代では「女性特有の症状について」、60代・70代では「男性の医者でもいいから今の治療について説明して欲しかった」というものが多かった。これは、40代・50代の更年期障害を中心とした患者群以外の患者群におけるニーズの違いを示唆している。それらの患者群においては満足度にも差が存在した(後述)。

図 16 年齢層による受診内容の違い

 

図 17 年齢層による受診理由の違い

 

 

3患者満足度について

女性専用外来の歴史の浅さを考えても、患者満足度は概ね高いと言える。しかし、改善すべき問題点もいくつか見られる。

具体的には調査 2の結果から、診察中に関しては「医師の知識量が少ない」、「話を理解してもらえない」、「医師による説明が不十分」などの問題点が、診察外に関しては「待ち時間が長すぎる」、「設備が充実していない」、「他科との連携が良くない」などの問題点があった。これは以下の調査3の結果からも同様の意見が多く寄せられている(「待ち時間、アクセス、最終結果を考えると、近くの病院に行った方がましと思う。」や「全体的に設備が汚い、アクセスが悪い、待ち時間が長いのが不満」など)。

診察外の項目に対する改善策としては、様々な経営手法による工夫(例、待ち時間の分析による新たな予約方法の開発など)が可能であるが、そもそも診察外(前・後)の諸要素に対する患者の重要度は低いことを考慮すると、まず着手すべきは診察中の諸要素である。

診察中の項目に関する改善策に関連して、患者は、性差医療の専門的な知識を求めている群(満足度のバラツキが大きい)と、女性医師にじっくり相談したいという医師との信頼関係を求めている群(概して満足度が高い)に分かれることが示唆されることは先に述べた。診察中の満足度は、医師との信頼関係を求めている層は概して満たされているが、専門的な知識を求めている層の満足はそれに比して低い結果となっている (図18)。その背景となる要素として、医師の技量のバラツキが考えられる。そこで、調査1の結果とそれぞれの患者の主訴のデータから、調査1の120人の患者について、「性差医療の専門的な知識を求めている群」 と「医師との信頼関係を求めている群」に分け、主治医ごとにそれぞれの患者群の平均満足度を、調査 1の問8にて「満足した」を2点、「ほぼ満足した」を1点、「不満が残る」を0点として求めた(図19)。「医師との信頼関係を求めている群」では満足度はどの医師でも概ね高かった(1名以外は1点を上回る)が、「性差医療の専門的な知識を求めている群」については主治医により大きなバラツキが存在し、1点を上回るものは2名のみと、医師の専門的技量が多分に問われていることが示された。このように、専門的な知識を求めている層の満足は医師の技量に依存しており、その技量の全体的な底上げこそが今後の課題であることが明らかになった。

図 18 「信頼関係を求める群」と「性差医療を求める群」の満足度の差

 

なお、先に述べたように、年齢によっても満足度に差が見られた (図20)。図19においてと同様に調査1の結果から平均満足度を求めると、比較的低年齢(20代・30代)と高年齢層(60代・70代)の満足度が低いという結果となった。40代50代は調査1での「また来たいか」という問いに対しても95%が「はい」と答えている。それに対して20,30,60,70代は「また来たいか」という問いに対して40%しか「はい」と答えていない。このような年齢層による満足度の相違の背景として、20代・30代と60代・70代では40代・50代と比して、「性差医療の専門的な知識を求めている群」の割合がやや多いこともその一因と考えられるが、それだけでは説明がつかず、「性差医療の専門的な知識を求めている群」と「医師との信頼関係を求めている群」以外の患者のニーズの存在が示唆される。

図 19 患者を2群に分けた時の医師ごとの平均満足度

図 20 年齢層別満足度

 

 

 

4今後望まれること

以上を要約すると、東金病院で満足度の高い群は、「女性医師にじっくり話を聞いてもらいたい」という者が主であり、「性差医療により専門的に診てもらいたい」という群の満足度は医師によりバラツキが大きい。

まずは、この二群を明確に区別しうるような調査項目の開発が肝要である。

なお、前者に対して、女性医師が丁寧に相談に応じるというサービスに対するニーズの高さから、千葉県では 2002年5月から県内15ヶ所の県保健所において、女性医師による「女性のための健康相談窓口」が開設されている。 7)

今後とも、こうしたサービスとの連携を図るとともに、「女性専用外来および保健所女性健康相談における健康ニーズに関する調査」のような、女性外来の患者に加えて健康相談窓口の利用者に対しても調査・分析を行っていくことの重要性が示唆される。

後者に関しては、今後の性差医療の研究ならびに専門家の教育・育成の必要性を強く考えさせる結果であると考える。専門家を育成し研究を進めることはこうした患者のニーズに応える結果となるだろう。

また、こうした 2群に共通して、コ・メディカルスタッフとの協力は不可欠であると同時に、診療所や調剤薬局などとの地域連携も重要である。 4)8) 性差医療の発展とともに、患者をサポートする体制作りは今後の重要な課題であろう。


 

 

X結語

女性外来の歴史は浅いにもかかわらず、受診者の満足度は概して高い。これは裏返せば性差医療に対する期待をも示しているのではないだろうか。

今回の調査では、話をじっくり聞いてもらいたいという患者に加えて、性差医療の実践こそを求 めている患者群の存在が示唆された。今回の調査結果の解析を踏まえ、今後の女性外来の患者満足度調査の方法を改良し施行する予定である。今後とも、性差医療に関する調査・研究が進み、広く社会のニーズに応えられるよう、更なる発展が期待される。

文献

1)http://www.pref.chiba.jp/syozoku/c_kenzou/1kikaku/21/21top.html

2)竹尾愛理、平賀幸枝、大西眞澄、平井愛山:千葉県立東金病院における女性専用外来のあゆみ フロンティア 全国自治体病院協議会雑誌41(7)803-811,2002

3)竹尾愛理:千葉県東金病院における女性専用外来の歩みと今後の課題について、ジェンダーメディカルリサーチ 2003

4)竹尾愛理、平賀幸枝、大西眞澄、平井愛山:千葉県立東金病院における女性専用外来の成果と課題について 看護

5)竹尾愛理、平井愛山:千葉県立東金病院における女性専用外来の歩みと今後の課題について、カレントテラピー 21(1):25-29 2003

6)竹尾愛理:千葉県立東金病院における女性専用外来の現状と課題、MEDICO34(11):11-17 2003

7)堂本暁子:地方自治体の取り組み ホルモンと臨床vol.52 43-51(533-541)

8)平井愛山:電子カルテを中核とした新たな病・診・薬連携ネットワークの構築と展開-わかしお医療ネットワークの現状と展開-、INNERVISION 17(7)