平成16年度厚生労働科学研究費補助金 子ども家庭総合研究事業

 

U-(7)  医療薬の薬物動態における性差研究

 

分担研究者  上野 光一   (千葉大学大学院薬学研究院)

研究要旨

性差を考慮した薬物療法の個別化を図る目的で以下の研究を行った。

  • 薬局に来局した女性患者に対する性差医療に関した意識調査
  • 全国9病院における医療用医薬品の男女別処方実態調査
  • 遺伝子解析と薬物血中濃度からの動態性差に関する研究
  • 疫学調査研究および遺伝子解析については千葉大学大学院薬学研究院倫理審査委員会の承認を得て実施した。

その結果、以下のことがわかった。

意識調査では、女性専用外来にはニーズがあり、特に更年期の患者での需要が高いことが示唆された。また、性差医療における薬剤師の存在や必要性が感じられた。さらに、現時点では、性差医療や女性専用外来に関する情報提供が望まれていることがわかった。

調査した9医療機関においては、女性に処方されやすい薬剤の方が男性に処方されやすい薬剤よりも多かった。また、女性に処方されやすい薬剤では、中枢神経系用剤が多く、男性に処方されやすい薬剤では循環器官用剤が多いことがわかった。さらに、疾患における性差が処方薬剤に影響していることが示唆された。

NAT2遺伝子には性差がないことが示唆された。メトトレキサートに関連する酵素には性差がない可能性が考えられるが、今後、他の遺伝子についても確認する必要があると考える。

 

研究協力者  

浅井 秀樹   (総合病院国保旭中央病院)
宇多 洋臣   (千葉県立佐原病院)  
小野 信文   (福岡大学病院)
神谷 晃    (山口大学医学部附属病院)
五味田 裕   (岡山大学医学部附属病院)
高木 宣之   (東京慈恵会医科大学附属柏病院)
西田 克次   (京都府立医科大学附属病院)
久光 健一   (千葉県山武郡市薬剤師会)
生城山 勝巳  (井上記念病院) 
吉崎 昇    (千葉県立東金病院)
根岸 悦子   (千葉大学大学院薬学研究院) 

1. 薬局に来局した女性患者に対する性差医療に関した意識調査

 

 A. 研究目的

  近年、本邦の医療機関に女性専用診療科が相次いで開設され、性差を考慮した医療 (Gender-specific Medicine:GSM)の実践が広がりつつある 1,2) 。しかし、薬剤師がGSMに関与している部分はまだ少ない。GSMにおける薬剤師の役割を検討するため、本研究ではGSMに関する患者の認識・薬剤師の関わり方について、保険薬局に来局した女性患者に対してアンケートを実施し、調査・解析を行った。

 B. 研究方法

保険調剤薬局であるアイセイ薬局全 56店舗において、来局した女性の患者あるいはその女性付き添い者を対象として、平成16年2月23日から3月7日にかけての14日間、GSMに関するアンケート調査を行い、その結果の解析を行った。なお、アンケートは選択方式とした。

 

-アンケート項目-

1. 性差医療(性差を考慮した医療、Gender-Specific Medicine)という言葉を知っているか

2. 女性専用診療科(産婦人科を除く)があることを知っているか

  →知っている人は受診を希望するか

3. 性差医療や女性専用診療に担当薬剤師は必要か

  →担当薬剤師の性別はどちらが適当か

4. 性差医療や女性専用診療に関して薬剤師にどのようなことを望むか


C. 研究結果

アンケートの回収は、アイセイ薬局の全 56店舗のうち39店舗(70%)から得られた。また、回収したアンケート件数は976件であった。回答患者の年齢分布は30歳代が約30%と最も多く、次いで50歳代、60歳代の順であった。また、回収された地域は関東圏が約75%を占めていた(Fig. 1)。 項目 1の調査結果では、性差医療(性差を考慮した医療)という言葉を知っている患者は5%、聞いたことがある患者は16%であり、知らない患者が73%と多かった(Fig. 2)

項目 2の結果では、女性専用診療科(産婦人科を除く)があることを知っている患者は22% 、聞いたことがある患者は25% であった。また、項目1で性差医療を知っている患者では、女性専用診療科を知っている患者が66% と多かった(Fig. 3)。女性専用診療科(産婦人科を除く)を知っていると回答した患者217名に対し、受診を希望するかという問いでは、5%が受診した、41%が受診したいと回答した。年齢別に見ると、40歳代の患者で受診した・受診したいという回答が多かった(Fig. 4)

項目 3において、まず、性差医療や女性専用診療科に担当薬剤師は必要かという問いに対し、大いに必要という回答が10%、必要という回答が53%という結果が得られた。年齢別に見ると、40歳代で大いに必要・必要という回答が約8割にのぼった(Fig. 5)。次に、担当薬剤師が大いに必要・必要と回答した患者619名に対し、その性別はどちらがよいかという問いでは、65%の患者が女性がよい、28%がどちらでもよいと回答していた。(Fig. 6)

 項目 4の性差医療や女性専用診療に関して薬剤師にどのようなことを望むかという問いに対しては、男女差がある病気について把握し、情報提供をしてほしいという意見が33%と最も多く、次に性差医療・女性専用診療を行っている病院や診療所の情報を提供してほしいという意見が16%、男女差のある医薬品について説明してほしいという意見が13%と続いていた(Table 1)

 

 D. 考察

アンケート調査を行った 2004年3月の時点で、都道府県立病院では14都府県の19施設、国立病院が5施設、市町村立病院が41施設など全国で約200施設に女性専用診療科が開設されている 3)

そうした状況の中、保険薬局に来局した女性患者の GSMに対する認識について調べた結果、性差医療(性差を考慮した医療;GSM)という言葉を知っている又は聞いたことがあると回答した患者は21% と低い結果であった。一方、性差医療の実践のひとつである女性専用診療科(産婦人科を除く)については、46%の患者が知っている、または聞いたことがあると回答し、性差医療よりも、その実践である女性専用外来に対する認識の方が高いと思われた。また、性差医療を知っている患者は、女性専用診療科についても認識が高いことがわかった。しかし、いずれにせよ、2004年12月22日以前6ヶ月間に読売新聞では性差医療・女性専用診療に関する記事が6件 5) 、朝日新聞では10件掲載される 6) など新聞・雑誌で取り上げられ、さらに女性専用診療を行っている医療機関を紹介するホームページ等もあるものの、性差医療(GSM)・女性専用診療科はまだ多くの患者には知られていないことが示唆された。したがって、薬剤師は患者・住民に対し、GSMに関する正確な情報・知識の習得をサポートし、更なる啓蒙活動を行っていく必要があると思われた。そのためには、薬剤師自身のGSMに関する知識の習得への絶え間ない努力が必要であり、GSMに関する講習会・シンポジウム等が多数開催され、薬剤師が積極的に参加していくことが望まれる。また、患者へGSMに関する情報を提供するために、パンフレット等のツールの作成を行っていく必要があると考えられた。

また、女性専用診療科を知っていると回答した患者に対し、受診を希望するかという問いでは、約半数が受診した・受診したいと回答し、特に 40歳代では、受診した・受診したいとの回答が多かった。したがって、女性専用診療科にはニーズが感じられ、特に更年期の患者での需要が高いことが示唆された。実際、各地の女性専用診療科で診療予約が数ヶ月先まで空きがないという現状が続いており、ニーズは高いと思われる。

GSMにおける薬剤師の関わり方についての問いでは、性差医療・女性専用診療科における担当薬剤師の必要性について、 6割以上が大いに必要・必要と回答し、特に40歳代で必要という回答が多かった。また、担当薬剤師の性別については、女性がよいという回答が65%であった。よって、GSM、女性専用診療科における担当薬剤師、特に女性薬剤師の必要性が感じられ、その傾向は40歳代で強いことが示された。

また、 GSMにおける薬剤師への要望については、現時点では、男女差がある病気について把握し、情報提供することや、性差医療・女性専用診療を行っている病院や診療所の提供をすることなどが望まれていることが示された。患者は身近な性差医療、女性専用診療に関する情報の提供を望んでいると推察された。女性外来や性差医療のネットワーク化が進んでおり、性差医療情報ネットワーク、性差医療・医学研究会、女性医療ネットワークなどが発足されている 7) 。性差医療情報ネットワークでは海外の医療情報、国内の女性外来の紹介、学会情報などが掲載されており、薬剤師はこのようなサイトへアクセスして情報収集に努めることも重要だと思われる。


2. 全国9病院における医療用医薬品の男女別処方実態調査

 

 A. 研究目的

  近年、疾患や薬物動態における性差が報告され、医薬品適正使用の観点からも性差を考慮した医療が求められる。これらの疾患や薬物動態における性差は、処方薬剤にも大きく影響することが予想される。そこで本研究では、男性に処方されやすい薬剤、女性に処方されやすい薬剤など処方薬剤における性差の実態について調査・解析を行った。

 

 B. 研究方法

千葉県の主要病院と女性総合診療科を開設している全国の病院に郵送にて協力をお願いし、 データ提供 をしていただいた 9病院(*)を対象とした。千葉大学薬学研究院倫理審査委員会の疫学研究承認を得て、2003年3月1日から31日のの1ヶ月間に処方された薬剤をオーダリングシステムより抽出し、薬価基準収載医薬品コード別に解析し、男女に処方された薬剤を調査した。

*井上記念病院、岡山大学医学部附属病院、京都府立医科大学附属病院、総合病院国保旭中央病院、千葉県立佐原病院、千葉県立東金病院、東京慈恵会医科大学附属柏病院、福岡大学病院、山口大学医学部附属病院(五十音順)

 

C. 研究結果

1) 処方薬剤数

期間中の 9病院の処方薬剤数は691,159であり、男女比はほぼ等しかった。年齢別に見ると、65歳以上が43%を占めており、55〜64歳が18%、45〜54歳が12%と続き、44歳以下は27%であった。(Table 1)

 

2) 処方薬剤の薬効分類

 薬剤種類数は 2,607種類であり、そのうち70%以上が女性に処方された薬剤、つまり女性占有率が7割以上の薬剤は531種類(20.4%)、男性占有率が7割以上の薬剤は429種類(16.5%)であった(Table 2)。処方薬剤の薬効分類を行ったところ、中枢神経系用剤が15% と最も多く、次いで循環器官用剤(12%)、外皮用剤(9%)の順であった(Fig. 1)

 

 

3) 女性に処方されやすい薬剤

 女性占有率が 7割以上であった薬剤は531種類で、そのうち漢方製剤、中枢神経系用剤が12%と最も多く、次いでホルモン剤が9%であった(Fig. 2)。また、女性占有率70%以上で、処方数の多かった上位30の薬剤はTable 3に示したとおりであった。

 

4) 男性に処方されやすい薬剤

 一方、男性占有率が 7割以上であった薬剤では、循環器官用剤が11%と最も多く、女性とは異なる結果であった(Fig. 3)。また、男性占有率70%以上で、処方数の多かった上位30の薬剤はTable 4に示した通りであった。

 

5 ) 性、年齢別の処方頻度上位薬剤グループ

 性、年齢別の処方頻度の高い薬剤グループは Table 5-1,2に示した通りであった。0〜12歳では、去たん剤、気管支拡張剤が男女ともよく処方されていた。13〜17歳では、女性は催眠鎮静剤・抗不安薬の処方が増え、男性では抗てんかん剤・解熱鎮痛消炎剤が多く処方されていた。18〜24歳では、精神神経用剤、催眠鎮静剤・抗不安剤が男女とも多く処方されているが、女性の方がやや多く処方されていた。一方、25〜44歳においても男女とも精神神経用剤、催眠鎮静剤・抗不安剤の処方が多いが、男性のほうがやや割合が高かった。45〜54歳では、男性は血圧降下剤、血管拡張剤の処方が増えていた。55歳以上では、男女とも消化性潰瘍剤が最も多く処方されていた。

 

 D. 考察

 9病院全体の2003年3月の処方薬剤数は、691,159であり、男女比はほぼ等しく、偏りはないと考えた。また、45歳以上で全体の7割以上を占めており、中高年・高齢者で処方が多いことが示された。

 処方薬剤のうち、 70%以上が女性に処方された薬剤、つまり女性占有率が7割以上の薬剤は20.4%、男性占有率が7割以上の薬剤が16.5%であり、女性に処方されやすい薬剤の方が男性に処方されやすい薬剤に比べて多いことが示唆された。女性占有率が7割以上であった薬剤では、中枢神経系用剤、漢方製剤が12%と最も多く、女性に処方されやすいことが示された。女性占有率が7割以上で処方数の多い薬剤を見ると、ワンアルファ錠、アルファロールカプセル、ボナロン錠、アスパラCA錠などの骨粗鬆症の治療薬や、リウマトレックスカプセル、アザルフィジンEN錠といった抗リウマチ薬など偏って多く処方されていることが明らかになった。平成14年の患者調査によると、骨粗鬆症、関節リウマチの患者数は女性の方が多く 8) 、こうした疾患における性差が処方薬剤に大きく影響していることが示唆された。一方、男性占有率が7割以上であった薬剤では、循環器官用剤が10%と最も多く処方されやすいことが示された。女性に多く処方された漢方製剤は4%と少なく、女性とは処方傾向が異なることが示唆された。また、男性占有率が7割以上で処方数の多い薬剤を見ると、ザイロリック錠、ユリノーム錠、ウラリット錠などの痛風の治療薬が偏って多く処方されていることが明らかになった。前述の患者調査において、痛風の患者数は男性で多いことが報告されている。また、ACE阻害剤のコバシル錠が男性に多く処方されていることが示されたが、各国で行われた降圧剤の処方における性差を調査した研究において、男性は女性に比べACE阻害剤を多く処方されやすいという結果が示されている 9)〜14) 。その理由として、ACE阻害剤の副作用である空咳は女性に多い 15) こと、妊婦には禁忌であることなどがあげられている。

 年齢、男女別によく処方される薬剤グループについて詳細に検討したところ、小児ではよく処方される薬剤グループに男女で大きな差はなく、呼吸器官用薬や風邪・感染に対する薬剤が多く処方されていることが示された。 13〜17歳では、女性は男性に比べ催眠鎮静剤・抗不安剤や精神神経剤の処方が増加していた。これは、思春期前はうつ病の有病率は男女で差はないが、思春期になると特に女性でうつ病が増加する 16) ことなどが影響していると考えられた。18〜24歳においても、精神神経用剤、催眠鎮静剤・抗不安剤は女性の方が若干多く処方されているが、25〜44歳ではこれらの薬剤は男性の方がやや多く処方されていることが明らかになった。平成15年の人口動態統計によると、25〜44歳の男性の死因のトップは自殺である 17) ことからも、この年代の男性は社会の中で大きな責任とストレスを背負っており、精神的負担を抱えていることが考えられた。また、高脂血症用剤は45〜54歳では男性に多く処方されているが、55歳以上では女性に多く処方されていることが示された。第5次循環器疾患基礎調査(平成12年)によると、日本人の高コレステロール血症の頻度は、50歳以下では男性の方が高く、50歳以上になると女性の方が高くなっており 18) 、その傾向が処方に現れていると考えられた。また、中高年になると血圧降下剤、血管拡張剤の処方が男女とも増えているが、男性の方がより早くからこれらの薬剤を多く処方される傾向が見られた。アメリカにおける処方調査においても、ACE阻害剤、Ca拮抗薬、βブロッカーといった循環器官用剤は男性の方が早くから処方されると報告されている 19) 。Roeらは、CHD(Coronary heart disease)の発症が女性では男性に比べ約10年遅いこと、心筋梗塞や急死等のより深刻な心血管疾患の出現が約20年遅いことが影響しているのではないかと推察している。

 以上の結果から、女性に処方されやすい薬剤、男性に処方されやすい薬剤が存在し、女性と男性では処方傾向が異なることが示唆された。今回の調査は、 9病院と対象病院数が少なく、結果には偏りがある可能性が考えられる。今後、特定の病院単位に絞った調査や大規模な調査が行われ、さらに詳細な検討を加え、エビデンスを蓄積し、性差を考慮した薬物療法に活かしていくことが望まれる。

 

3. 遺伝子解析と薬物血中濃度からの動態性差に関する研究

 

A. 研究目的

 薬物に対する反応性は、性差の基礎的・臨床的研究が未だ不十分であり、薬物受容体や薬物代謝に関する研究を推進し、薬物療法における性差を明らかにし、その結果を医療の現場に反映させることが重要である。そこで、今回は結核治療薬イソニアジドおよび関節リウマチ治療薬であるサラゾピリンとメトトレキセートの血中濃度とその代謝関連遺伝子との性差について検討を行うこととした。

  3-1. イソニアジドの血中濃度と NAT2遺伝子多型との関係

 

 血中濃度は、イソニアジド服用患者より、服用後約 3.5時間後に抹消血を採取し、HPLC法を用いてイソニアジド濃度を測定した。

 遺伝子解析は、薬物代謝酵素 N-acetyltransfesase 2 (NAT2)遺伝子をターゲットとし、野生型遺伝子型であるNAT2*4のほかに3種類の遺伝子型NAT2*5B、6A、7BについてPCR-RFLP法により行った。また、その遺伝子の組み合わせごとに3つ表現型(即時型;RA、中間型;IA、遅延型;SA)に分類した。

また、女性専用診療科を知っていると回答した患者に対し、受診を希望するかという問いでは、約半数が受診した・受診したいと回答し、特に 40歳代では、受診した・受診したいとの回答が多かった。したがって、女性専用診療科にはニーズが感じられ、特に更年期の患者での需要が高いことが示唆された。実際、各地の女性専用診療科で診療予約が数ヶ月先まで空きがないという現状が続いており、ニーズは高いと思われる。

GSMにおける薬剤師の関わり方についての問いでは、性差医療・女性専用診療科における担当薬剤師の必要性について、 6割以上が大いに必要・必要と回答し、特に40歳代で必要という回答が多かった。また、担当薬剤師の性別については、女性がよいという回答が65%であった。よって、GSM、女性専用診療科における担当薬剤師、特に女性薬剤師の必要性が感じられ、その傾向は40歳代で強いことが示された。

また、 GSMにおける薬剤師への要望については、現時点では、男女差がある病気について把握し、情報提供することや、性差医療・女性専用診療を行っている病院や診療所の提供をすることなどが望まれていることが示された。患者は身近な性差医療、女性専用診療に関する情報の提供を望んでいると推察された。女性外来や性差医療のネットワーク化が進んでおり、性差医療情報ネットワーク、性差医療・医学研究会、女性医療ネットワークなどが発足されている 7) 。性差医療情報ネットワークでは海外の医療情報、国内の女性外来の紹介、学会情報などが掲載されており、薬剤師はこのようなサイトへアクセスして情報収集に努めることも重要だと思われる。

 

B. 研究方法

 血中濃度は、イソニアジド服用患者より、服用後約 3.5時間後に抹消血を採取し、HPLC法を用いてイソニアジド濃度を測定した。

 遺伝子解析は、薬物代謝酵素 N-acetyltransfesase 2 (NAT2)遺伝子をターゲットとし、野生型遺伝子型であるNAT2*4のほかに3種類の遺伝子型NAT2*5B、6A、7BについてPCR-RFLP法により行った。また、その遺伝子の組み合わせごとに3つ表現型(即時型;RA、中間型;IA、遅延型;SA)に分類した。

C. 研究結果

イソニアジド濃度は、男女間に差はみられなかった( Fig.1)

 3-2. サラゾピリンの血中濃度と NAT2遺伝子多型との関係

B. 研究方法

 血中濃度は、サラゾピリン服用患者より、服用後約 3.5時間後に抹消血を採取し、HPLC法を用いて未変化体SASP濃度および代謝物SP濃度を測定した。

 遺伝子解析は、薬物代謝酵素 N-acetyltransfesase 2 (NAT2)遺伝子をターゲットとし、野生型遺伝子型であるNAT2*4のほかに3種類の遺伝子型NAT2*5B、6A、7BについてPCR-RFLP法により行った。また、その遺伝子の組み合わせごとに3つ表現型(即時型;RA、中間型;IA、遅延型;SA)に分類した。

 

C. 研究結果

  未変化体 SASP濃度は、男女間に差はみられなかった(Fig.2)。また、NAT2で代謝された代謝物SPの濃度はNAT2表現型と一致していたが、男女差はなかった(Fig.3)

 

 3-3. メトトレキセートの血中濃度と MTHFR遺伝子多型との関係

B. 研究方法

 血中濃度は、メトトレキセート( MTX)服用患者より、服用後約1-2時間後に抹消血を採取し、TDXFLX測定器を用いて測定した。

 遺伝子解析は、 methylenetetrahydrfolata reductase(MTHFR)遺伝子をターゲットとし、MTHFR677および1298多型についてPCR-RFLP法により行った。

 

C. 研究結果

MTX濃度とMTHFR多型ごとの性差は認められなかった(Fig.4,5)。

D. 考察

NAT2表現型別でイソニアジドおよびサラゾピリンの代謝物であるSPの血中濃度に男女の差が認められなかったことから、NAT2遺伝子には性差がないことが示唆された。しかし、イソニアジドにおいては、血中濃度に男女の差が認められたという報告 20) もあることから、今回の解析症例数が37例(男性31例、女性6例)と少なく、男女比に差が認められたことから、さらに例数を増やすことによって男女差が生じる可能性も残されていると考える。また、メトトレキサートに関連するMTHFRと血中濃度の解析からも性差がないと考えられるが、メトトレキサートについては他の代謝酵素も関連していると言われていることから、今後、他の薬物代謝酵素遺伝子についても確認する必要があると考えられる。

 

 

参考文献

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