平成16年度厚生労働科学研究費補助金 子ども家庭総合研究事業

 

U-(9)  女性外来受診患者のこころの特性

 

分担研究者  名取道也  国立成育医療センター

研究要旨

国立成育医療センター女性総合外来の受診を希望する患者を対象に、そのこころの状況にたいする認識、自分の身体状況にたいする認識、それらの総合としての活動状態についての検討を行った。女性外来受診患者は、その主訴により心理特性に大きな違いがあることが明らかとなった。不安感、抑うつ感はこころの問題を主訴とする群では有意に強く、内科的主訴を有する患者でも強い結果となった。自分の身体の機能に自信があるか、日常活動にたいし身体面から不安がないかとの、項目においてもこころの問題を主訴とする群、内科的主訴を有する患者の2つの群では有意に低い値となった。総合的に自分の健康度を評価する項目として、健康感、バイタリティー、社会生活についての自信という3つの項目で評価した結果でも不妊を主訴とする患者でほぼ問題がなく、こころの問題、内科的問題を主訴とする群では低い数値となった。 結論として、こころの問題、内科的問題を主訴とする群においては、不安、抑うつ症状を持つ可能性が高く、社会生活にたいする自信を失っている可能性が高いことが示された。この結果は女性外来受診患者の診療を適切に行う上で有意義な検討結果と考える。

A. 研究目的

女性外来、女性専門外来の設置が盛んになってから約2年が経過するが、どのような女性患者を対象としてどのような医療を提供するべきかが模索されている。本研究では当センター女性総合外来の受診を希望する患者を対象に、そのこころの状況にたいする認識、自分の身体状況にたいする認識、それらの総合としての活動状態についての検討を行った。

B. 研究方法

対象は当センター女性総合外来受診者のうち、問診表から有効な回答が得られた230症例(一部回答は211例)で、初診時に HADSテスト(Hospital Anxiety and Depression Scale)、QOL測定用紙(SF-36v1) 2)、3) にてこころの状態(不安度、抑うつ度)、総合的QOLを測定した。今回はこの結果について解析を行い、初診時の主訴により婦人科(G)、不妊(I)、内科(M)、精神科(P)受診希望の4群にわけて一元配置分散分析を行った。

C. 研究結果

(1) 不安(A)と抑うつ(D)の検討

初診時のHADSを解析し(n=230)、主訴別に4群にわけて当外来受診者の不安と抑うつを比較、検討した。G,I,M、P各群における不安スコアはそれぞれ6.31, 5.07, 7.25, 9.13であった。P群は他の3群にたいし不安スコア(HADS-A)は有意に高く(p<0.001)、I群はM群、P群にたいして有意に低かった(図1)。 抑うつ( HADS-D ) スコアはそれぞれ7.15, 5.99, 8.35, 10.28であった。HADS-Aと同様にP群は他の3群にたいしHADS-Dスコアは有意に高く(p<0.001)、I群はM群、P群にたいして有意に低かった(図2)。

(2)身体状況にたいする認識

初診時に受診者が、自分の身体状況をどのように認識しているにつき、自分の身体機能をどのように評価するか、日常の身体機能にたいする認識、の 2点から比較検討した。

 自分の身体機能にたいする認識については、I群がM群、P群にたいし有意に高値( p<0.01)を示した(図3)。次に上記2項目の総合としての日常の身体活動についての自信という設問にたいしては、M群、P群はG群、I群に比較して有意に低値であった(図4)

(3)心身の状況にたいする総合認識

 上に検討したこころと体の健康状態の総合認識として、健康感、バイタリティー、社会生活への自信の3項目についての検討をおこなった。

 健康感ではI群が他の3群に比較して高値を示した(図5)。バイタリティーはM群、P群ではG群、I群に比べて有意に低い状態であった(図6)。同じ結果は社会生活についての自信という項目でも同様の結果であった(図7)

図1 HADS(A)の4群間比較

 

図2 HADS(D)の4群間比較

図3 身体機能にたいする認識の4群間比較

図4 日常の身体活動についての自信の4群間比較

図5 健康感の4群間比較

図6 バイタリティーの4群間比較

図7 社会生活についての自信についての4群間比較

 

D. 考察

今回の調査では、性別による違い、年齢による違いに着目した。これまでの研究では、このような性差を考慮した研究は皆無であった。平均寿命は、今や女性が 85.33歳、男性は78.36歳で、女性における伸びが大きい。(厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態;H15年)しかし男性に比べて、女性は健康寿命という点では、不健康な期間が長く、これは女性の筋骨格系の虚弱化が男性に比べて著しく進行するためで生物学的性差と思われる。(鈴木、老年医学と性差;2003、Vol.41-6)今回、男性と女性の後期高齢者を比較する場合、それはまさに平均寿命というハードルを考えれば、ハードルを超えた男性とまだハードルを超えていない女性を比較していることになり、いかに女性が不健康な生活を長く送っているかが予想される。また、老年期は、生きる目的を奪われ、死に直面しつつ生きることの目的を考えさせられる、いわば衰退、喪失の時期である。この不安感は男性に比べて女性が高く、寂しさを感じ、無力感、気分の落ち込みも多かった。さらに男性が趣味をもって老後の生活を元気に生きているのに比し、女性は、自ら身体的な支障がみられてもなお家事全般を背負うことが多く、不定愁訴、睡眠障害に悩まされている人も多かった。これらは男性が社会に出て、女性は家庭を守るという社会的性差を反映していた生活習慣の結果と思われた。

E. 結論

高齢者の生活への満足度は女性より男性が高く、男性が平均寿命を超えてもなお元気な生活を送っている一方、女性は平均寿命を超える前から不健康な生活が始まる人が多い。今後縦断研究によってさらなる検討を加えたい。

F. 健康危惧情報

なし

G. 研究発

(論文発表)

•  Jian-Guo Z., Ishikawa T., Yamazaki

H.,Ohta T. Is a Type A behavior

pattern associated with falling among the community-dwelling elderly?. Archives of Gerontology and Geriatrics. 38 (2004)145-152

•  Tajima O., Nagura E., Ishikawa-Takata

K., Ohta T., Two new potent and

convenient predictors of mortality in older nursing home residents in Japan ,Geriatirics and Gerontology International 2004; 4: 77-83

•  Tajima O., Nagura E., Ishikawa-Takata

K., Furumoto S., Ohta T.,

Nutritional assessment of elderly Japanese nursing home residents of

differing mobility using anthropometric measurements, Biochemical indicators and food intake. Geriatrics and Gerontology International 2004; 93-99

4 . Harada A, Matsui Y, Mizuno M, Tokuda H, Niino N,Ohta T, Japanese orthopedists' interests in prevention of fractures in the elderly from falls, Osteoporos Int (2004) 15: 560-566

•  鷲見、太田、「痴呆疾患に関する医療経済的検討」 日本老年医学会雑誌、41巻5号( 2004 ; 9 )

(学会発表)

なし

H. 知的財産権の出願・登録状況

•  特許取得:なし

•  実用新案登録:なし

•  その他:なし