D. 考察
1.女性専用外来における全血セロトニン値の重要性について
線維筋痛症患者の診断と治療に全血法によるセロトニン値測定が活用できないかとの検討を行った。セロトニンは神経伝達物質としてトリプトファンを原料として合成され、セロトニン神経は縫線核、前頭葉皮質、基底核、大脳辺縁系などに位置し、気分や不安、食欲や睡眠などさまざまな機能に関与しており、うつ病などで低下していると言われる。
一方、近年、本邦でも圧倒的に女性に多く見られ、広い範囲での慢性疼痛を訴える線維筋痛症の存在が認識され始めたが、其の診断は1990年に米国リウマチ学会によって提示された分類基準にのっとり「広範囲な疼痛が3ケ月以上継続し、特異な18ケ所の圧痛点の中11ケ所以上で疼痛を認めるとき」線維筋痛症とすると非常に曖昧である。検査所見は時にCPKが高値を示すことがあるが、ほかに特異的な検査所見は無い。本症の真の病因は不明であるが、痛みのメカニズムとして、セロトニンの関与が示唆されており、脊髄中のセロトニンの低下が見られるとの報告があり、実際に治療の上ではSSRI、SNRIが非常に有効な症例が多い。
しかし、セロトニンについては、従来「5HTは末梢に其の大半が存在し、血液、あるいは尿中の5HT量を測定することにより末梢5HTの動態および病態を知ることができるが、脳血液関門を通過できないので脳機能は末梢5HTの影響をほとんど受けない。それゆえ、中枢5HTの変動を知るためには、血中および尿中5HTの測定だけでなく、脳脊髄中の5HTおよびその代謝物5HIAAの測定が必要である」との記載があり、脊髄液での測定をせずには正確な効果判定を行いがたいと当初は考えた。
ところが、検索を続ける中で、2002年に東北大学のwakayamaらにより脳におけるBlood Brain Barrierにセロトニントランスポーターが存在することが報告され、東邦大学の有田らがセロトニンを産生しうる臓器としての消化管ならびに肝臓と腎臓を摘除した動物の研究から、脳で産生されたセロトニンが血液中に放出されることを確認していることを知ったことから、女性外来受診連続147例でのセロトニン全血測定を行った。その結果全血法によるセロトニン値と疾患との間に関連性があることが示唆された。セロトニン低値を示す代表疾患としては大うつ病性障害、気分変調性障害、線維筋痛症、セロトニン減少によると思われる病態が確認された。
また、他に病因の説明がつかない不定愁訴患者、子どもへの虐待を制止することのできない母親、著明な身体症状を伴う身体表現性障害患者においてもセロトニンが極端に低値であり、SSRI,SNRIによる治療により、良好な結果を得たことから、このような症状の起因としてセロトニンの低下が存在すると考えられ、このような症例群を「セロトニン減少症候群」と呼ぶことを提案したい。
一方、更年期症状の一つとして、時として抑うつ症状を呈する症例があるが、このような症例では大うつ病性障害、気分変調性障害と異なり、セロトニン値の低下を見ないことより、診断の際の鑑別法としてセロトニン値が有用と考えられる。また、他院にてSSRI,SNRIを投与され、セロトニン症候群をきたした症例では、セロトニン値が正常高値であることが確認されたことより、治療の際のSSRI,SNRIの使用に際して、セロトニン値の測定がこれらの薬剤による好ましくない副作用の防止に役立つと考えられる。今回得られた知見については、追試による更なる検討が必要であるが、女性外来で遭遇する疾患における症状の発現にセロトニンの低下が極めて密接に関与している可能性がある。
2.循環器内科系専門医のストレスと健康に関するアンケート調査
2004年度に行った日本循環器学会所属の循環器専門医におけるストレスと健康に関する調査の解析を終えた。これらの結果から、循環器系専門医を一つの職域集団とみなした場合、男女で比較をすると身体機能、全体的健康感は男性が女性よりも有意に高く、心の健康は女性の方が有意に高かった。すなわち、身体的健康面では女性の方が、精神的健康面では男性の方が健康状態は悪かった。その背景には、女性は家事等との両立などによる睡眠不足、勤務時間が長いなどが身体的健康に影響している事が考えられた。
一方、男性はきまじめな性格傾向があり、職場のストレスなどを多く感じている事や、交友や社会的活動などが女性より少なくストレスの解消が図れていないことが精神的健康面に影響をしている事が考えられた。その結果、女性に比べて男性の方が、将来や現在の状況に対して、ネガティブに捉える傾向がみられた。勤務形態も健康状態に影響しており、勤務医の方が開業医よりもストレスが多い傾向がみられ、特に男性ではその傾向が強かった。勤務医男性では夜間勤務が多く、勤務時間も長い。生活時間についても、開業医の方が勤務医よりも家族との時間や運動時間を取ることができており、勤務医の方が仕事中心の生活になっていることが窺われた。
循環器系専門医全体の自覚的健康状態は国民の標準よりは低く、中でも男性の精神的健康状態の改善や女性の身体的健康度の改善は1つの課題であり、職場環境や各自の働き方を見直すことも必要だろうと考えられた。
3.女性外来利用者を中心とした市民による性差医療の啓発・普及を目指した女性外来・性差医療を育てる会(いちごの会)の設立
設立過程で以下のような課題が明らかになった。
a.設立賛同者の会員への歩留り:多くの市民団体は、同じ目的に賛同した者が中心となり会の設立を発案し、意見交換を重ねて会を設立していく経緯を辿る。したがって、設立準備会に名を連ねた者は、そのまま正式に会が発足した時の会員となるのが通常である。しかし、本会の場合、8回行った設立準備会に1回以上参加した者は20名弱、設立に賛同した者の中で正式発足時の会員になった者は半数以下であった。準備会への出席率が低かったのは、会の趣旨に賛同するが自分は積極的には関われないという者が多かった結果と思われる。本会は女性外来担当医師の発案に基き、患者と元患者を中心に医師を通して賛同者の募集が行われたため、賛同者の大半が女性外来に通院中であり、体調が良い時ばかりとは限らない。また、準備会を開催した場所は千葉市内であるが、賛同者の中には遠方の者も多かった。したがって、「出かけようと思っても、体調や遠距離で容易には出かけられない」ということも、設立準備会への出席が低かった一因と考えられる。いずれにせよ、参加者の多くが「更年期障害等で不定愁訴を持つ患者」という本会の賛同者の特性から、会の運営に積極的に関わる意欲があり、体調も比較的良い者となると少数になってしまったものと考えられる。
b.コアメンバーの活動力:運営委員には、準備会に2回以上出席した13人に就任を依頼した。各人が運営委員の就任を快諾してくれたが、「病気もあるので、負担が大きいと困る」という意見が多く聞かれた。月1回の例会に出席するために、1ヶ月間の体調管理を行っているという会員もおり、会の運営に関わることにより体調が悪化することになれば、本末転倒である。したがって、「月1回の例会になるべく出席する」ことだけを条件とし、運営委員に就任を依頼した。運営委員を承諾した会員にしても、8回のうち2回以上の出席者であり、今後についても例会に毎月出席できる保証はない。その点では、運営委員という会の運営のコアメンバーであっても、会の運営にどれだけ積極的に関われるかという点では、不確実な点が多く、当面は事務局主導で会の運営をせざるを得ない状況である。元利用者や主旨に賛同する患者以外の者の参加が会の運営の安定化には必要と考えられ、会員募集を幅広く行う必要があると考えられる。
c.活動準備資金:事務局では、毎月の設立準備会終了後にNewsを作成し、設立準備会の報告と次回の案内を賛同者に郵送してきた。設立のための準備資金がない状態で準備会を開始しため、10月末のシンポジウム開催の企画・運営の委託事業による収入を得るまでは、事務局がNewsの郵送料(約10万円)を全て立替えた。しかし、本来は設立準備会の立ち上げ前に、準備資金を用意しておくべきであり、その点は会を設立する上で大きな失点であったと考える。女性外来担当医師等に会の主旨を説明し、準備資金のための寄付を依頼するなどの方法もあったと思われ、会設立の発起人は単に名を連ねるだけではなく、資金面での支援もする立場にあったと思われる。会の設立前の準備資金については、今後、支部の立ち上げなどを行っていく場合には、あらかじめ検討する必要がある。
d.会員のIT環境:資金面での課題は、活動費としての会費の活用である。会費は無職の人でも負担感が少ないことを第一に考え、月250円(年会費3000円)と決定した。しかし、実際は、月250円の大部分はNewsの発行に関する諸費用で月会費の大部分が失われてしまう。従って、何か行事を行うことを考えた場合、資金面で会の活動を支えるには不十分な額しか残らない。会員の負担を増やさずに活動資金を充実されるためには、会費に占める通信費の割合を減らすことが今後の課題である。もし、会員全員がインターネットを使える環境にあり、会報の送付をEメールで行えれば、事務経費は大幅に削減できるため、会員のIT環境が現在よりも進むことを期待したい。
e.インターネットによる情報発信:現在は、会員のIT環境が不十分であり、インターネットによる情報発信については設立準備会の中でも、積極的な発言はみられなかった。しかし、更年期女性に対する情報発信や相談を実施しているNPO「メノポーズを考える会」のように、インターネットを活用して幅広い活動をしている先例も参考にしながら、女性外来利用者の横のつながりを広げていくためにも、インターネットの活用は不可欠と考えられる。独自のドメインの取得などは費用がかかるが、無料サイトの活用によりホームページを作成することも可能である。会の拡大のためにも、ホームページは不可欠であると考えられるため、会のホームページ作成も今後の課題である。
4.薬物動態の性差に応じた薬物療法の最適化に関する研究(千葉県立東金病院女性総合診療科の処方実態に関する調査研究ならびに更年期障害に対する処方薬剤とエストロゲンβ受容体CAリピート多型との相関に関する研究)
千葉県立東金病院女性総合診療科の薬剤処方に関する研究から次のことが明らかとなった。
・ 東金病院の女性専用外来では、漢方製剤の使用頻度が高い
・ 漢方製剤は、更年期障害の適応がある薬剤の処方頻度が高い
・ 漢方製剤は、年代ごとの処方頻度によって分類できる
・ 中枢神経系用剤は、年齢に関係なく処方される
・ 中枢神経系用剤では、SSRIやBZPなどの製剤が多く処方されている
・ 消化器官用剤および循環器官用剤は年齢が高くなるほど処方割合が増加する
・ ホルモン製剤はホルモン補充療法に使用する薬剤が多い
東金病院女性専用外来においては、薬剤処方数および薬剤品目数が過去3年半の期間中、急激に増加していたことから、女性専用外来にはニーズがあると推察された。
処方薬剤の薬効分類では、漢方製剤が最も多く処方されており、使用頻度の高かった漢方薬は、加味逍遥散、半夏厚朴湯、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸であった。最も処方の多かった加味逍遥散は、特に精神症状を伴う更年期症状に有効であるとの報告があり、次に処方の多かった半夏厚朴湯は、うつ病、パニック障害などの精神症状に使用されることが多い薬剤であることから、精神科領域の患者が多いことが示唆された。
さらに、処方の多かった10種類の漢方処方について年齢別に解析を行った結果、漢方製剤は大きく4群に分類できると示唆された。即ち、当帰芍薬散、温経湯などの比較的若い年齢層における処方が多い群、加味逍遥散、桂枝茯苓丸の閉経前後での処方が多い群、八味地黄丸のように年齢が高くなるに伴い処方が多くなる群、呉茱萸湯、防風通聖散など各年齢平均して処方されている群に分類できると考えられた。したがって、個々の薬剤を年齢ごとに解析することで、女性専用外来における漢方製剤の適正使用が可能となると思われた。
中枢神経系用剤では、ベンゾジアゼピン系製剤(BZP)やセロトニン選択的取り込み阻害剤(SSRI)の処方が多いことから、女性外来では不安、不眠、うつ病などの精神症状に用いられる薬剤の処方が多いことが示された。したがって、精神神経症状に用いる漢方製剤も多いことなどからも、精神科疾患の患者の多いことが示唆された。消化器官用剤、循環器官用剤は、高齢になるほど処方される割合が増加していた。消化器官用剤はプロトンポンプインヒビターやH2ブロッカーなどの消化性潰瘍用剤や制酸剤が多く処方されたが、これは年齢が増加するほど、胃が荒れやすくなると共に服用する薬剤が増加していることに起因していると思われる。
また、循環器官用剤の中で処方が多かった薬剤は、硝酸剤やCa拮抗薬などの血管拡張剤、スタチン系薬剤などの高脂血症用剤であったが、これは更年期以降の女性ホルモンの低下により引き起こされる高血圧や高脂血症に処方されているためと思われる。ホルモン剤では、卵胞ホルモン剤、黄体ホルモン剤が多く、処方は更年期に集中しているため、ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy: HRT)で処方されていることが示された。このような処方実態ならびに遺伝子多型と有効処方の関連性を示唆する研究結果は、診断、治療に性差の視点、遺伝子解析を組み合わせた新たな切り口を導入することにより、女性のQOLの向上を支援できることが示唆され、薬物療法の個別化における理解の第一歩となると考える。
5.高齢者の自立度低下要因に関する性差研究
高齢者が発症する疾病には性差がみられ、また、高齢者の活動や自立を低下させる要因にも性差がみられる。自立度が低下する要因の一位が男女とも脳卒中であることは当然であるが、女性高齢者の活動や自立を低下させる要因として、生物学的性差である女性の筋骨格系の虚弱化、閉経後に急速に進む骨粗鬆症が挙げられるのは特徴的である。また男性高齢者に多い肺や気管支の病気は、男性に喫煙者が多いことから伺える。
6.不妊を主訴とする女性患者と男性患者の心理特性の性差研究
不妊を主訴とする患者において、抑うつ状態においては、女性不妊患者は男性不妊患者に比較して高い抑うつ状態であることが示された。不妊症にたいする感情、言い換えればこどもが欲しいという気持ちは一般的には女性のほうが強い。またこどもができない責任を感じる感情も女性に強いと推測される。
さらには成育医療センター女性外来へ不妊を主訴として来院した患者は、すでに他の医療施設で診療を受けた結果満足を得ていないケースが多く、この面にも男性不妊患者との差を生んだ理由があると想定される。
SF-36については、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感、社会生活機能の4項目で女性不妊患者は男性不妊患者より低い数値を示したが、上記4項目は、体の痛みやこころの状態の影響で、仕事や人との付き合いなどの普段の活動が思い通りにできたかを問うもので、総合的にみて自分が健康であるかの認識も確認している。結果は、不妊という病状を有する女性では男性よりも健康感が小さいことを示している。 国民標準値との比較でも、男性患者においては、心の健康項目が低値を示した以外は、標準値と差はなかったが、女性患者においては、特に日常役割機能において身体面でも精神面でも低い値を示していた。これは社会や家庭生活において日常的な仕事が充分にできていないとの認識を持っているとの特徴を示している。
女性不妊患者がこのような心理状態にある可能性を認識して医療を行うことは多くの利点がある。一つには不妊患者の診療には夫婦双方の協力が不可欠であり、不妊の原因が男性、女性またはその両方のいずれであったとしても、女性患者との間の信頼関係を構築する上で重要な情報となる。
7.循環器病危険因子の性差に関する研究
男性においてメタボリックシンドロームを合併すると糖尿病の病態にインスリン抵抗性、炎症がより強く関与してくる可能性があり、またアディポネクチンが男性においてインスリン抵抗性により強く関与している可能性を示唆していると考えられた。メタボリックシンドローム合併糖尿病の病態には男女差が存在する可能性が示唆される。
8.性差を加味した女性健康支援のためのIT環境の構築
性差医療情報ネットワークNAHWに登録されている全国の女性外来開業施設に向け、データファイリングシステムの活用と趣旨の啓蒙を図り、展開して来た結果、2006年に6施設で運用が開始された。NAHWの組織は、およそ300施設が参加しており、2/3が、大学・県立・センター病院・市立等の中核病院で、1/3が、診療所クラスである。先生方の取り組みは前向きであり、趣旨に賛同する方が多々いても、参加施設の規模や環境が一様ではないことから、データファイリングシステムを普及するためには単純ではないことが掴めた。その代表的な意見として次のようなことが挙げられる。
◆施設内にシステム技術者がいなく、専門知識を持ち合わせてないと、サーバを構築することができない。また、障害発生時の対処ができない。サーバのセットアップ支援や障害対応のルートを考慮する必要がある。
◆女性外来データファイリングに必要なインフラを用意できない。利用できるパソコンの機種が限定されしまう。
◆大病院には医事、オーダリング、電子カルテなどの基幹システムが稼働しており、女性外来データファイリングとしてのサーバおよび端末を共有できない。女性外来医師ではシステム管理者に折衝できない。
◆女性外来の医師は、週に1度の非常勤であるケースも多く診察中に診療データの登録処理がこなせない。入力行為は、看護師が支援できる体制が必要である。
従って、これらの技術面や運用面の課題を解消して、データファイリングシステムの普及を図ることが、今後の優先な取り組みとして考える。
9.千葉県における女性の健康支援の取り組み事業報告
全国知事会における調査結果から、
@女性専用外来は都道府県立病院のみならず、民間の医療機関も含め、全国に拡大してきているが、受診者の主訴と担当する医師の専門性に乖離が認められることから、メンタルヘルスへの対応等医療の質的な検討が必要である。
A女性の健康課題に応じた取組み状況をみると、青壮年期の月経不順・子宮内膜症、中・高齢期の高脂血症等に対する取組みが少なく、課題に応じた取組みが必要である。と考えられた。なお、この調査以降、女性専用外来の開設は、更に進み、現在では全国の都道府県で開設されるに至っている。
10.女性外来実態調査
現在、女性外来は患者側のニーズを受け、急速にその施設数が増加しているが、現場の実態は天野が理想としている「性差医療に基づく女性外来」とは、大きくかけ離れている。現在の医学教育の中で、性差の視点が取り込まれていない現状では、現場の女性外来担当医師に必要な教育機会を提供するところから始めなくてはならない。上野の報告にも見られるように女性外来では、精神症状を呈する患者が多く、漢方、中枢神経系用剤の使用頻度が高い。千葉県から始まり、全国で漢方ならびにメンタルヘルスのセミナーを女性外来担当医師に向けて展開している。参加者の熱意は非常に高い。しかし、そこで聞かれる声は、女性外来開設医療機関における周囲のスタッフの関心の低さであり、「一生懸命やろうとしても、院長にそこまでやらなくていいと言われた」「産休で休まれる先生の代理が見つからない」など、未だ、少数の女性外来担当医師の熱意と情熱に成功・不成功が委ねられている。生涯にわたる女性の医療の中で、女性ホルモンと環境がもたらす女性特有の健康障害・疾病に関する理解が教育の中で、医療政策の中で、更に進むことが必須である。
11.女性の健康とアジアの伝統医療
今回の国際会議での各国の報告から、現在日本で天野を中心に女性専用外来で行われている治療方法 − 漢方治療を基礎に性差医療のエビデンスに基づいた西洋医学治療を組み合わせる方法 − の効果と適切性が、諸外国における研究によっても同時発生的に証明されつつある、ということが判明した。今後は、国内各地の女性専用外来から集められる症例をデータベース化することにより日本国内レベルでもエビデンスを集積し、女性専用外来における漢方治療の効果と安全性を科学的に検証していく作業が不可欠である。また、西洋医学治療と漢方を組み合わせることにより、従来の医療では対処しきれなかった症状に治療効果をあげることが立証された暁には、西洋医学教育を受けた女性専用外来担当医師に日本の伝統医療(具体的には漢方)を積極的に勉強する機会を提供するため、医師の卒後教育プログラムの中に漢方を組み込むことが肝要である。
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