平成17年度厚生労働科学研究費補助金 子ども家庭総合研究事業
分担研究報告書

U-(2)

循環器・内科専門医のストレスと健康に関するアンケート調査にみる性差

 

主任研究者 天野 恵子 (千葉県衛生研究所 所長)

研究協力者 柳堀 朗子  ( 千葉県衛生研究所 特別研究員 )

研究要旨

勤務医の労働環境や子育て期にある女性医師の就労など医師を取り巻く課題は多い。本研究では、循環器・内科系専門医を一つの職域集団とみなした場合の健康に影響を与える可能性のある環境や、生活習慣、ストレス予防について実態を把握し、その性差の有無を評価することおよび、女性医師において専門の違いにより環境や生活習慣などに違いがあるかを検討した。その結果、男女とも勤務医と開業医の間では働き方、ストレスなどに大きな違いがあること、男女間では、女性に比べて男性の方が精神的健康状態が悪いこと、女性では身体的自覚症状や、家事や仕事のために一人の時間が少ないと感じている者が多いことなどの特徴がみられた。これらのことから、循環器・内科系医師の健康にかかわる要因は勤務や性により異なり、医師が心身ともに健康で充実した日常生活を送るためには、これらを考慮した取り組みが必要であることが示唆された。

A. 研究目的

平成14年度の厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業)において、「循環器分野における女医の労働環境について」の調査研究を行い、日本循環器学会専門医である女性医師の就業時間や出産休暇・育児休暇の実態や男女間の差別を感じた経験などを調査した1)。その結果、出産休暇は90%が取得していたが、育児休暇の取得は26%と少ないこと、教育課程を離れ臨床現場に進むにつれ男女間の差別を実感していること、妊娠・出産はキャリア形成の障害になると過半数が感じていることなど、女医が働く環境整備には多くの課題があることが示唆された。

しかし、この調査研究においては、男性 医師の働き方について把握していなかったことや、医師の健康状態や日常生活習慣、詳細な労働環境や仕事への満足度・ストレスなどの健康に関する実態が把握できていないという課題が残った。
  そこで、循環器・内科専門医を対象に、1)循環器系専門医を一つの職域集団とみなした場合の健康に影響を与える可能性のある環境や、生活習慣、ストレス予防を評価する 2)女性医師において、専門の違いにより健康に影響を与える可能性のある環境や生活習慣、ストレスなどに違いがあるかを検討する、という2つの目的のために新たに調査を行ない、医師の健康に関る要因についての実態把握と、性差の有無、専門による違いなどを検討した。

B. 研究方法

1.分析対象

日本循環器学会、日本糖尿病学会に本調査の主旨を説明し、会員への調査協力の承諾を得た。2004年の調査時に各学会に所属している男女専門医師について、日本循環器学会では男性医師4,743名、女性医師461名、日本糖尿病学会では女性医師443名を対象に、回答は無記名とし、郵送法による質問調査を行った。

郵送法で回答が得られ、調査の回答の使用を許可した者を有効回答とした。有効回答のうち、性別が記載されていた者を分析対象とした結果、それぞれの分析対象は次のようであった。

a.日本循環器学会所属医師
調査の回答を基礎データとして使用することを許可した1050名中、性別が記載されていた1040名(99.0%)が解析対象であり、男性919名(88.4%)、女性121名(11.6%)であった。

b.糖尿病学会所属女性医師
  調査の回答を基礎データとして使用する事を許可した者は125名(100%)であった。

2.分析方法

a.QOL得点の算出
  問17から問27は包括的健康概念(健康関連QOL)を測定するSF-36(MOS 36-Item Short-From Health Survey)の日本語版である。SF-36では36項目の設問に基づき、身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、心の健康の8尺度のQOL素点と、各尺度の素点を、各尺度の国民平均値を50点、1標準偏差を10点として換算した国民標準に対する偏差得点を算出してQOLを評価する。そこで、あらかじめ作成されているプログラム2)に基づき、QOL素点と国民標準に対する偏差得点を算出した。さらに、8つの下位概念を、身体機能の健康と精神機能の健康の2側面に分けたサマリースコアも同プログラムにより求めた。

b.タイプA性格特性
問65の設問はタイプA性格特性を把握するもので、12項目の回答を加算することを信頼性係数(クロンバックα)により検討した。(11)(12)は回答の方向が他の設問と逆であったために反対にして検討した結果、α=0.722と12項目を加算して1指標とすることは妥当であると判断された。したがって、この設問は12の下位設問の回答の平均値をタイプA傾向とし、値が低い方をタイプA傾向が強いとした。

c.抑うつ度の指標
問84は10項目の設問により抑うつ度を判断する指標と考えられたため、回答を全て得点が高いと抑うつ度が高いことを示すように置換え、クロンバックαを求めたところ、α=0.671であった。若干、α値は低めであるが、10項目の回答を得点とみなした平均値を求め、得点の高い方が抑うつ度は高いという抑うつ度の指標とした。

d.分析方法
(1)分析対象医師について性別に結果を集計し、男女差の有無を検討した。場合によっては、勤務形態(開業・勤務)、年齢階級についての違いも検討を加えた。分析対象は、循環器学会男性医師919名、循環器学会女性医師121名、糖尿病学会女性医師125名の合計1165名とし、性別の分析では女性医師は循環器学会と糖尿病学会を合わせた246名と循環器学会男性医師との比較を行った。
(2)女性医師について、専門の違いによる差の有無を検討した。
(3)両親と兄弟姉妹の疾患の既往との関連、両親、兄弟姉妹の疾患の既往と本人の疾患保有との関連はオッズ比により検討した。
(4)仕事の内容についての設問は選択肢が1.よくある、2.ときどきある、3.まれにある4.ほとんどないと順位があることから、ノンパラメトリック検定により男女や勤務形態による違いを検討した。
(5)問65は算出したタイプA得点について、全体の得点を4分位し、性、勤務形態とタイプA傾向の関連を検討した。
(6)統計計算にはSPSS for Windows Ver12.0Jを用い、有意水準はα=0.05とした。

 

 

C.研究結果


1.対象者の属性

a.年齢表1−1表1−2
  回答者の年齢は、男性は平均年齢(標準偏差)は43.1(4.6)歳、女性は45.6(9.6)歳、年齢の範囲は男性が31〜55歳、女性が31〜75歳であり、女性の方が年齢の分布が広く、平均年齢も有意に高かった。年齢分布では、男性は41〜45歳が35.3%、46〜50歳が35.1%と40歳代が全体の7割を占めたが、女性では30歳代37.8%、40歳代32.2%、50歳以上30.0%となっていた。

b.勤務形態
対象者の勤務形態は、男性は開業医が18.4%、女性は開業医が24.8%であり、開業医は女性の方が有意に多かった。
開業医の標榜科名では、男性では内科または循環器内科が標榜科名に入っている者が98.8%であり、女性では循環器学会所属医(31名)では全員が内科を標榜科名に含んでいた。女性の糖尿病学科所属医(30名)も同様であり、内科を標榜する者が99%であった。専攻科目では、循環器学会所属医は男性の96.4%、女性は全員が循環器内科を専攻していた。糖尿病学会所属の女性医師の専攻科目は、糖尿病や内分泌代謝が大部分であった。

勤務医の勤務先は、男性では大学病院33.3%、公立病院29.8%、私立総合病院20.9%、診療所3.9%、その他(複数に回答したものを含む)が10.8%であり、健康管理室や保健所に勤務するものは少なかった。女性では、大学病院20.5%、公立病院18.4%、私立総合病院24.9%、診療所11.9%、健康管理室4.3%、その他(複数に回答したものを含む)18.8%であり、男性に比べて診療所や健康管理室に勤務する者が多かった。専攻科目は男性の85.6%は循環器内科を専攻し、女性は循環器学会所属医の90%は循環器内科を専攻し、糖尿病学会医の98%が糖尿病や内分泌代謝学を専攻していた(表2−1)。

夜間勤務の状況では、開業医は男性68%、女性77.8%が夜間勤務はないと回答しており、夜間勤務の状況には男女差がなかった。勤務医の夜間勤務の状況は男女差が有意であり(p<0.001)、男性では週1回以下が最も多く、女性では夜勤のない者が最も多くなっていた(表2−2)。
また、夜勤の状況と年齢の関係を性別に比較したところ、男女ともに夜勤頻度の多くなるにしたがい、平均年齢は若くなっていた(表2−3)。

1週間の勤務時間を男女で比較すると、開業医では男性51.5(75.9)時間、女性41.4(19.2)時間、勤務医では男性59.4(20.4)時間、女性46.0(19.7)時間であり、開業形態にかかわらず男性の方が女性よりも勤務時間が長かった。開業医と勤務医で比較をすると、男性では勤務医の方が有意に長かったが、女性では有意な差はなかった。女性では所属学会による勤務時間の違いはなかった。

c.学歴
最終学歴が大学の割合は男性68.6%、女性82.9%であり、男性に大学院修了者が有意に多かった。女性では所属学会間に学歴の差はなかった。男女とも開業医と勤務医の間に最終学歴の差はなかった。

d.婚姻状況と同居者
婚姻状況では、婚姻している者は男性96.1%、女性33.3%であり、男性の方が婚姻者は有意に多かった(p<0.001)。男女とも結婚している者の95%は初婚であり、非婚者の男性68%、女性70%は結婚経験がない者であった。
  現在の同居者を男女別にみると(表3−1)、同居者なしは女性に多く、同居者がいる場合でも、その同居形態には男女で違いがみられた。同居者がいる者について、同居者数の概算値をみると男性は2.97(1.17)、女性は2.36(1.20)であり、男性の方が有意に多かった。
婚姻者(男882名、女164名)についてみると(表3−2)、配偶者との同居は男95%、女90%であり、子どもの年代別の同居状況は、男性に比べて女性の方が5〜14歳の子どもを持っている割合は少なかった。また、実の両親との同居は男女とも差はなかったが、義理の両親との同居では、義父、義母ともに女性の方が有意に高かった。既婚者の平均同居者数は、男性2.88(1.26)人、女性2.43(1.28)人であり、男性の方が有意に多かった。
未婚者では、一人暮らしは男77.8%、女51.9%と男性が有意に多く、両親との同居では女性の方が男性に比べて有意に多かった。未婚者の平均同居者数は、男性0.39(0.87)人、女性0.89(1.10)人であり、女性の方が有意に多かった。
  部屋数は同居者のない者では男女に差はなく3部屋から4部屋であったが、同居者のある者では男性は5.14(1.53)、女性は5.65(1.60)と女性の方が有意に部屋数は多かった。同居者数と部屋数の間には有意な相関(r=0.43)がみられた。

e.両親について
(1)実父
  実父が死亡している者は、男性242名(26.1%)、女性97名(39.4%)であり、女性の方が実父の死亡している割合が有意に高かった。実父死亡時の回答者の年齢は男性32.3(10.1)歳、女性35.9(14.2)歳、実父の死亡時の年齢は男性65.6(10.8)歳、女性69.1(15.5)歳と女性の方が本人の年齢、実父の年齢とも有意に高かった。父親の死亡後の経年数は男性12.7(9.9)年、女性16.7(14.3)年であり、女性の経年数が有意に長かった。実父の死因では男性では最も多いのはがんであり、その他、脳卒中、心筋梗塞の順であった。女性ではその他が最も多く、次いでがん、脳卒中、心筋梗塞であった(表4−1)。実父の死因には男女差はなかった。
  実父の死因別死亡年齢には有意差はなかったが、脳卒中71.5(11.5)歳、心筋梗塞を除くその他の心臓疾患69.1(7.7)歳に比べ、がん66.0(9.8)歳、心筋梗塞64.1(10.9)歳の方が若かった。
実父の学歴では、男女ともに大学・大学院卒が約6割と最も多く、次いで高校・旧制中学であった。

(2)実母
  実母が死亡している者は、男性87名(9.5%)、女性42名(17.1%)であり、女性の方が実母の死亡している割合が有意に高かった。実母死亡時の回答者の年齢は男性32.4(10.7)歳、女性43.4(12.2)歳、実母の死亡時の年齢は男性62.3(11.8)歳、女性72.8(12.9)歳と女性の方が本人の年齢、実母の年齢とも有意に高かった。母親の死亡後の経年数は男性12.6(10.7)年、女性13.0(12.6)年であり男女差はなかった。実母の死因では男性では最も多いのはがんであり、その他、脳卒中、心筋梗塞の順であった。女性も同様であり、がんが最も多く、次いでその他、脳卒中、心筋梗塞であった(表4−2)。実母の死因には男女差はなかった。
  実母の死因別死亡年齢をみると、脳卒中72.6(11.3)歳、心臓発作70.4(13.0)歳、がん64.1(12.2)歳、その他の心臓疾患55.6(19.1)歳であり、死因により死亡年齢には有意な違いがあった。
  実母の最終学歴には男女差はなく、高校・旧制中学卒が男性では48.8%、女性では59.5%と最も多く、次いで大学・大学院が男性22.1%、女性11.9%であった。

(3)両親の既往
  両親の既往症に男女差はなく、提示した5つの疾患の既往がない者は全体の33.3%、高血圧の既往は47.5%、糖尿病22.2%、脳卒中12.4%、狭心症12.2%、心筋梗塞7.7%であった(表4−3)。
f.兄弟姉妹について
  兄弟のいる者は男性572名(64.3%)、女性148名(61.7%)、姉妹のいる者は男性508名(58.5%)、女性143名(61.9%)であり、いずれも男女差はなかった。兄弟の平均人数は男性1.32(0.64)人、女性1.41(0.73)人、姉妹の平均人数は男性1.25(0.52)人、女性1.36(0.63)人であり、いずれも女性の方が有意に多かった。
  兄弟姉妹の既往症では、提示した5つの疾患の既往がない者は全体の82.1%、高血圧の既往は5.4%、糖尿病2.7%、脳卒中0.6%、狭心症0.4%、心筋梗塞0.4%であった。男女で兄弟の既往症の有無を比較すると、高血圧と糖尿病は男性よりも女性において兄弟姉妹の既往が多くなっていた(表4−4)。
  5つの疾患について、両親の既往と兄弟姉妹の既往の関連をオッズ比(95%信頼区間)でみたところ、狭心症、心筋梗塞には有意な関連がみられなかったが、脳卒中は9.41(2.08〜42.46)、高血圧は3.01(1.72〜5.26)、糖尿病5.69(2.79〜11.61)と有意な関連がみられ、両親に既往があると兄弟姉妹でも発症が高いことが明らかになった。また、疾患別のオッズ比を性別で比較すると、男性は狭心症7.91(1.11〜58.0)、高血圧3.44(1.71〜6.93)、糖尿病5.20(2.19〜12.34)で有意な関連があり、女性では糖尿病6.37(1.72〜23.51)のみに有意な関連がみられた。

2.主観的な健康状態(健康関連QOL)について

a.男女別の比較
  健康関連QOLの8つの下位概念の平均点(標準偏差)を男女別にみると、身体機能は男性が女性よりも有意に得点が高く、全体的健康感、心の健康は男性よりも女性の方が有意に得点が高かった(表5−1)。
  男女の得点より日本国民の標準値で調整した偏差得点を算出した(表5−2)。それぞれの偏差得点で男女間に有意差のあったのは、身体機能、全体的健康感、日常役割機能(精神)、心の健康であり、いずれも女性の方が高かった。日本国民の標準値(50点)と比較したところ、男性では身体機能以外の全ての下位概念の偏差スコアが標準値より有意に低く、女性では身体機能スコアは標準値よりも有意に高かったが、活力、社会生活機能、心の健康スコアは標準値よりも有意に低かった。
  8つの下位概念を、身体機能の健康と精神機能の健康の2側面に分けたサマリースコアの値は、男性は身体機能が49.6(8.6)点、精神機能が44.8(11.4)点、女性は身体機能が50.6(8.7)点、精神機能が46.1(10.5)点であった。身体機能、精神機能ともサマリースコアに男女差はなかったが、男女ともに精神的健康スコアが日本国民標準値よりも有意に低かった。
  女性医師について所属学会で比較したが、8つの下位概念、サマリースコアに有意差はなかった。

b.性・勤務形態別の比較
  男性についてSF-36の下位概念得点、サマリースコアを開業医・勤務医で比較すると、活力、社会生活機能、心の健康得点は開業医よりも勤務医の方が有意に低かった。また、サマリースコアでは、身体的健康スコアは開業医と勤務医に差はなかったが、精神的健康スコアは勤務医の方が有意に低かった。
  女性について開業医・勤務医で比較すると、開業医と勤務医の得点差は日常役割機能(身体)で有意であり、社会生活機能では差のある傾向がみられた(表5−3)。サマリースコアでは、身体的健康スコア、精神的健康スコアとも差はなかった。
  開業医について男女でSF-36下位概念得点とサマリースコアを比較したところ、下位概念、サマリースコアともに有意差はなかった。一方、勤務医では日常役割機能(身体)、全体的健康感、心の健康について男女差がみられ、日常役割機能(身体)は男性、全体的健康感と心の健康は女性で得点が有意に高かった。
  偏差得点について男女別に勤務形態で比較すると(表5−4)、男性では活力と社会生活機能に有意差があり(p<0.01とp<0.001)、いずれも開業医の方が有意に高かった。女性では日常役割機能(身体)と社会生活機能の差が有意であり(それぞれp<0.05)、いずれも開業医の方が高かった。勤務形態別に男女の偏差値を比較すると、開業医では身体の痛みが男性で有意に高く、勤務医では全体的健康感、心の健康の値がいずれも女性の方が有意に高かった。

3.既往症や健康状態について

a.健康状態
  この1年間の健康状態では、男女とも良好または普通が約8割であり、良好・極めて良好が約半数と、比率に男女差はみられなかった(表6−1)。 性別と勤務形態による違いを検討したが、開業医、勤務医ともに1年間の健康状態には男女では有意な違いはなかった。また、男女別にみても、勤務医と開業医の間には健康状態に違いはなかった。

現在の慢性的な疾患、病気の有無については、病気のある者は男性41.4%、女性37.6%であり、男女や勤務形態による差はなかった。この1年間に入院をした者は男性3.7%、女性5.3%であり、性別や勤務形態による違いはなかった。

1年間に健康上の理由で仕事を1日も休まなかった者の割合は、男性83.1%、女性79.6%、休んだ者でも3日以内が3分の2であり、男女に違いはなかった。性別に勤務形態による違いをみたところ、男女とも休まなかった者の割合は開業医の方が高かったが、有意差はなかった。また、勤務形態別に仕事を休んだ日数の性差をみたが、男女で有意な違いはなかった。性別に、年齢階級と欠勤日数の関連をみたが、男女とも年齢階級と欠勤日数の間には有意な関連はなかった。

25歳からの体重変化をみたところ、男性は平均5.0(5.8)kg、女性は2.0(4.9)kg増加し、それぞれ25歳の体重からは男性8.0%、女性4.0%の増加であり、男性の方が女性よりも増加率は有意に高かった。また、変化率をカテゴリに分けて男女で比較したところ、5%以上減った者は男性5%、女性12%、±5%以内の者は男性36.0%、女性49.2%、5〜10%増加の者は男性24.3%、女性16.9%、10〜15%増加の者は男性14.8%、女性9.1%、15%以上増加した者は男性20.0%、女性12.8%であり、男性では女性よりも体重の増加した者が多く、また、増加率も有意に高かった。
勤務形態との関連では、男性では開業医の方が体重の増加率が大きい者が多い傾向がみられたが、女性では勤務形態とは関連がみられなかった。

b.1年間に罹った疾患
  1年以内にかかった疾患を男女で比較すると、罹患率に有意な男女差があったのは、関節炎・リューマチ、常時の便秘、慢性の足の疾患、神経疾患または持続性のうつ病、歯肉または口腔の慢性疾患であり、いずれも女性の罹患率が高かった(表6−2)。有意差のあった疾患について男性に対するオッズ比(95%信頼区間)をみると、関節炎・リューマチは10.0(3.85〜26.32)、常時の便秘は6.41(4.27〜9.62)、慢性の足の疾患は4.26(2.78〜6.54)、神経疾患または持続性のうつ病は2.28(1.16〜4.46)、歯肉または口腔の慢性疾患は1.52(1.07〜2.17)であった。
  疾患の該当数は、男性は平均1.73(1.61)、女性は2.09(1.87)であり、女性の方が有意に多かったが、疾患の該当数を0個、1個、2個、3個以上の4カテゴリにして性別との関連をみたところ、0個は男性24.5%、女性19.6%、3個以上は男性25.5%、女性32.2%と男女に違いがみられたが、有意ではなかった。

勤務形態別に男女の罹患状況を比較したところ、神経疾患または持続性のうつ病の罹患の男女差は開業医では有意ではなく、歯肉または口腔の慢性疾患の罹患は開業医、勤務医ともに罹患の男女差は有意ではなかった。

男女別に、勤務形態と疾患の罹患を比較したところ、男性では気管支炎、常時繰り返す胃の不調や消化不良、痔について開業医と勤務医で罹患率に有意差がみられた。それぞれの罹患率は、気管支炎は開業医22.4%、勤務医15.2%、常時繰り返す胃の不調や消化不良は開業医29.5%、勤務医22.0%、痔は開業医30.9%、勤務医20.4%であった。しかし、女性では疾患の罹患率と勤務形態や所属学会との間に関連はなかった。

c.2週間内に経験した症状
2週間以内に経験した症状で多かったものは、喉の痛みが約40%、風邪・インフルエンザと腰痛・背部痛は約3分の1であり、調査が12月であったことが風邪やそれに伴う症状を経験した者が多かった事に影響を与えていることが考えられた。
  2週間以内に経験した症状を男女で比較すると(表6−3)、症状の経験率に男女で有意差のあったものは、下痢、めまいまたはふらつき、くるぶしのむくみ、吐き気または嘔吐、その他であり、下痢以外は女性に多かった。
  症状の経験数は、男性は平均3.42(2.88)、女性は3.69(3.31)であり、男女差はなかった。経験した症状数をカテゴリでみると、0個は男性14.5%、女性17.6%、1〜2個は男性30.9%、女性27.0%、3〜5個は男性33.8%、女性29.4%、6個以上は男性20.9%、女性26.0%であり、6個以上の保有は女性に多かったが、性別と症状数には有意な関連はなかった。性別に勤務形態と症状の経験数の関連をみたところ関連はみられなかった。また、勤務形態別に性別と経験数の関連をみたが、男女では違いがなかった。また、女性では所属学会による違いはなかった。

d.2週間内の服薬の状況
  2週間内で医師から処方された薬の服用を男女で比較したところ(表6−4)、鎮痛剤、精神安定剤、睡眠剤、緩下剤の服用は男性よりも女性の方が有意に多かった。
  薬の種類の平均は男性0.84(1.08)、女性1.15(1.28)であり、女性は有意に多かった。また、薬の種類をカテゴリにして性別との関連をみると、服薬なしは男性49.3%、女性42.2%、1種類は男性28.3%、女性24.2%、2種類が男性15.6%、女性18.6%、3種類以上は男性6.8%、女性15.6%であり、女性の方が有意に薬の種類が多かった。
  勤務形態別に服薬状況を男女で比較すると、開業医では男女の服薬状況に差がなかったが、勤務医では女性の方が有意に服薬は多かった。男女別に開業医と勤務医の服薬状況をみたところ、男性では開業医は1.12(1.32)、勤務医は0.78(1.01)と開業医の服薬種類が有意に多かったが、女性では勤務形態による違いはなかった。また、女性では所属学会による違いもなかった。
  市販薬を服薬した者は男女とも11.0%であったが、男女別にみると男性では開業医6.5%に比べ勤務医では12.1%と有意に多かったが、女性では勤務形態との関連はなかった。勤務形態別に市販薬の服薬と性別の関連をみたが、開業医、勤務医とも関連はみられなかった。

e.胸部の痛みに関して
  これまでに胸部の痛みや不快感を感じたことがあると回答した者は男性25.5%、女性22.0%であり、男女差はなかった。痛みを感じた経験のある者に、その部位を複数回答で尋ねたところ、右は男性7.0%、女性3.8%、左は男性62.2%、女性56.6%、胸部全体は男性38.3%、女性45.3%であり、左胸から胸部全体に痛みを感じた者が多かった。痛みを感じた状況(複数回答)では、坂道を登ったり急いで歩いているときは男性7.0%、女性13.0%、平地を普通のスピードで歩いているときは男性5.7%、女性7.4%であり、大部分の者はその他の状況で痛みを感じていた。痛みを感じたときの対応では、男女とも何もしない(同じペースで歩く)が最も多く、男性67.7%、女性58%、止まった者は男性19.5%、女性22.0%、歩くペースを落とした者は男性12.7%、女性20.0%であり、対応に男女差はなかった。また、痛みがなくなるまでの継続時間は10分未満が男性75.3%、女性64.8%であった。

胸部の痛みや不快感を感じたことの有無と、両親または兄弟姉妹の狭心症の既往との関連をみたところ、胸痛を感じた者で両親に狭心症の既往があった者は、男性は14.1%(33名/233名中)、女性は25.9%(14名/54名中)、胸痛を感じていない者で両親に狭心症の既往があった者は、男性は10.1%(69名/682名中)、女性は12.5%(24名/192名中)であり、女性の場合は両親の既往と胸痛の経験の関連は有意であった。兄弟姉妹の狭心症の既往と本人の胸痛との関連では、女性は兄弟姉妹に狭心症の既往のある者がいなかったため関連はわからなかったが、男性では胸痛を感じた者で兄弟姉妹に狭心症の既往があった者は1.3%(3名/233名)、胸痛を感じていない者で兄弟姉妹に狭心症の既往があった者は0.15%(1名/682名)であり、兄弟の狭心症既往と本人の胸痛の経験には有意な関連がみられた。

30分以上持続する強い胸痛を感じたことがある者は男性24名(2.6%)、女性6名(2.4%)であり、そのような症状の経験回数は5回以下が6割であった。症状について医師に話をした者は8名(26.6%)であった。
  狭心症の既往がある者は男性6名、女性2名であり、このうち男性4名、女性2名は現在も狭心症があると回答していた。心臓発作の診断を受けたことがあるのは、男性2名のみであり、両名とも発作を3回以上経験していた。

f.高血圧について
  高血圧の診断を受けた者は男性18.7%、女性10.6%であり男性が有意に多かった。初めて診断が下りたのは男性は平均8.7(8.3)年前、女性8.5(10.2)年前であり違いはなかったが、1年未満から50年前までに広く分布していた。薬物療法の経験があるものは男性60.8%、女性50.0%であり、現在も継続している者は男性は経験者の85.6%、女性は100%であった。

高血圧の診断と両親、兄弟姉妹の高血圧の既往との関連をみると、本人が高血圧と診断を受けている者で両親が高血圧の者は男性は57.3%、女性は73.1、本人は高血圧ではないが、両親は高血圧の者は男性44.1%、女性48.9%であり、男女とも両親の高血圧の既往と本人の高血圧には有意な関連がみられた(表6−5)。オッズ比(95%信頼区間)は男性1.70(1.22〜2.39)、女性2.84(1.15〜7.04)であり、女性の方が高かった。
兄弟姉妹の高血圧の既往との関連では、本人が高血圧で兄弟姉妹に既往がある割合は、男性10.5%、女性23.1%、本人が高血圧ではなく、兄弟姉妹に既往がある割合は男性4.6%、女性6.8%であり、男女とも兄弟姉妹の高血圧既往と本人の高血圧とは有意な関連があった。オッズ比(95%信頼区間)は男性3.52(1.87〜11.63)、女性4.08(1.42〜11.63)であり、女性の方が高かったが、両親の場合よりも男女ともオッズ比は大きい値であった。

g.脳卒中・心疾患について
  脳卒中の診断を受けたことがある者は男性2名(0.2%)、女性2名(0.8%)であった。狭心症や心筋梗塞以外の心疾患の診断を受けたことがある者は男性107名(12.2%)、女性19名(8.1%)であり、その疾患名は期外収縮が男性35.5%、女性63.2%、不整脈は男性47.7%、女性42.1%、心筋症は男性のみ2.8%、心筋炎も男性のみ0.9%、弁膜症は男性4.7%、女性5.3%、その他は男性のみ16.8%であった。

h.糖尿病について
糖尿病の治療を受けている者は男性12名(1.3%)、女性5名(2.1%)であり、男女差はなかった。糖尿病の者のうち、両親に糖尿病の既往があった者は男性58.3%、女性20.0%、糖尿病ではないもので両親に糖尿病の既往があった者は男性22.3%、女性20.2%であり、男性では両親の糖尿病の既往と本人の罹患は有意な関連があった。また、兄弟姉妹の糖尿病の既往と本人の罹患の関連では、男性では糖尿病罹患者の中で兄弟姉妹に糖尿病の既往がある者は男性8.3%、女性40.0%、糖尿病に罹患していない者で兄弟姉妹に糖尿病の既往がある者は男性では2.3%、女性では3.4%であり、女性においては本人の罹患と兄弟の既往に有意な関連がみられた。

i.女性の月経状態
  女性で現在月経のある者は164名(68.0%)、閉経した者は77名(32.0%)であった。閉経者のうち80.5%は自然閉経であり、自然閉経者の平均閉経年齢は51.1(2.9)歳、人工閉経者の平均閉経年齢は44.6(7.7)歳であり、人工閉経者の方が閉経年齢は有意に若かった。

j.現在の健康状態
  現在の健康状態への満足度を性別にみると、回答の分布には有意な男女差がみられ、男性の方が不満に感じている者が多かった(表6−6)。非常に満足を1点とし、非常に不満を7点として得点化して平均値を男女で比較すると、男性は3.40(1.54)点、女性は3.07(1.53)点であり、男性の方が有意に高かった。性別に年齢との関連をみたが、男女とも年齢と健康状態への満足度との関連はみられなかった。
  現在の健康状態への満足度と勤務形態との関連を男女別にみたところ、いずれの性においても勤務形態との関連はみられなかった。また、勤務形態別に健康状態への満足度を男女で比較したが、開業医、勤務医とも男女差はなかった(表6−7)。

k.心臓発作の可能性を減少させることについて
  心臓発作の可能性を減少させることについての考えでは、自分にできることはほとんどない、運命または不運だと考える者は、男性4.3%、女性2.8%、発作を起こす可能性を減少させるのに役立つかもしれないことで、自分にできることは何かあると考える者は男性33.8%、女性36.4%、自分で発作を起こす可能性を確実に減らすためにできることは何かあると考える者は、男性61.9%、女性60.8%であり、回答に男女差はみられなかった。女性について、循環器専門医と糖尿病専門医について回答を比較したが、専門による回答の違いはみられなかった。また、本人の胸痛の既往や両親、兄弟の狭心症や心筋梗塞の既往は、心臓発作の可能性を減少させることへの考え方とは関連がみられなかった。

4.生活習慣について

a.喫煙
  喫煙者は男性145名(15.8%)、女性5名(2.0%)であり男性が有意に多かった。女性については循環器専門医と糖尿病専門医の間に喫煙率の違いはなかった。

勤務形態との関連では(表7−1)、男性では開業医の22.5%、勤務医の14.3%が喫煙者であり、開業医の喫煙率は有意に高かった。女性でも勤務医よりも開業医の方が喫煙率は高かったが、違いは有意ではなかった。

喫煙者の一日の喫煙本数は男性16.5(8.7)本、女性14.1(14.8)本であり平均値には男女差はなかった。しかし、喫煙本数の分布をみると、男性は20本が最も多く40%、次いで10本16.9%、15本12.0%であり、1本から40本までに分布した。女性では3本1名、5本1名、10本2名、40本1名であった。男性について勤務形態で喫煙本数を比較したが、開業医と勤務医の間に差はなかった。

喫煙開始年齢は男性19.7(2.8)歳、女性20.4(1.8)歳であり、男女ともに差はなく、現在までの平均喫煙年数は男性22.8(6.5)年、女性28.8(12.8)年であった。分布をみると、男性は17年から30年の者が大部分であり、女性では喫煙歴50年という者を除くと喫煙年数は20年、21年、24年、28年が各1名となっていた。

喫煙をしない者について、周囲のタバコの煙を吸う状況について聞いたところ、表7−2に示すように、女性の方が職場での受動喫煙がない割合が高かった。家庭の受動喫煙は、全くないは男性97.1%、女性81.7%、少し吸うは男性2.7%、女性13.1%であり、女性では非常によく吸うと回答した者も1.7%いたが、男性では非常によく吸う者はなく、家庭では女性の方が受動喫煙に暴露していることが明らかになった(表7−3)。

勤務形態と受動喫煙の関連では、男女ともに開業医の方が受動喫煙はないと回答した割合は有意に高く、全くない者は男性では開業医78.3%、勤務医32.0%、女性では開業医85.5%、勤務医41.5%であり、非常によく吸うと回答した者は男女とも開業医では0名であった。家庭での受動喫煙の状況は男女とも、開業医と勤務医では違いはなかった。

現在はタバコを吸わない者のうち、過去にタバコを吸ったことがある者は男性47.4%、女性13.7%であり、男性が有意に多かった。過去にタバコを吸っていた者の1日の喫煙本数は男性16.4(11.6)本、女性9.7(6.0)本であり、男性の方が有意に多かった。喫煙開始年齢は男性19.5(2.5)歳、女性22.2(6.7)歳と男性の方が開始年齢は有意に若かった。しかし、喫煙中止年齢は男性30.9(7.8)歳、女性32.3(10.0)歳であり、喫煙期間は男性11(8.1)年、女性10(9.9)年と男女差はなかった。また、喫煙を中止してから現在までの経過年数は男女とも約13年であった。

b.飲酒
飲酒の状況は、ほぼ毎日飲む者は男性52.9%、女性23.3%、週に1〜2回は男性20.6%、女性26.9%、特別なときのみは男性11.4%、女性21.6%、飲まないは男性7.1%、女性15.5%と、男性の方が女性よりも飲酒頻度が有意に多かった。勤務形態との関連では、男性においてほぼ毎日飲酒する者は開業医65.7%、勤務医50.1%と開業医に多かったが、女性では開業医と勤務医の間に飲酒頻度の違いはなかった(表8−1)。

非飲酒者(男性64名、女性38名)のうち、この5年間に酒を止めた者は男性10.9%、女性18.4%であり、多くの者は5年以上前から酒を飲んでいなかった。
  飲酒者について、この5年間に飲酒の習慣が変わっていない者は男性47.8%、女性41.3%であり、以前の方がかなり多かった者が男性11.7%、女性13.6%、少し多かった者は男性20.9%、女性21.2%、以前の方が少し少ない者は男性15.5%、女性15.8%、以前の方がかなり少ない者は男性4.1%、女性8.2%と、酒量の変化に男女差はみられなかった。性別に勤務形態との関連をみたが、男女とも開業医と勤務医の間には酒量の変化に違いはなかった(表8−2)。

この5年間に酒を止めた者、酒量が以前よりも減った者(男性246名、女性53名)について、その理由を尋ねたところ、健康のためが男性58.9%、女性45.3%、病気や医師の指示は男女とも約3%、経済的理由は男性のみ3%、その他が男性33%、女性50.9%であった。その他の理由には、「年とともに飲めなくなった」「飲みたくなくなった」「機会が減った」「時間がない」「仕事が忙しい」が多くみられた。

この1週間に飲酒をした者は男性84.7%、女性70.6%であり、男性が有意に多かった。飲酒の種類では、ビールが最も多く男性92.9%、女性68.6%であり、その他の種類を見ると、日本酒、焼酎、ウイスキーは男性、ワインは女性に多かった(表8−3)。
  1回の飲酒量は男女で異なるものが多く、平均値で比較すると、ビール、日本酒、ワインの飲酒量は男性が有意に多かった。

c.運動
   軽い運動の実施状況では、実施していない者が男性31.9%、女性14.3%、週3回以上は男性20.0%、女性58.6%であり、女性の方が男性よりも軽い運動をよく行っていた。軽い運動の種類では、歩行・散歩・ウォーキングや家事、草取り、掃除が多く、女性の過半数が週3日以上実施していると回答したのは、運動の例に家事が挙がっていたためと考えられた。勤務形態で比較したところ、男性は開業医の方が勤務医よりも軽い運動をよく行っていが、女性では軽い運動の実施状況と勤務形態に関連はなかった(表9−1

中程度の運動の実施状況では、実施していない者が男性50.8%、女性48.8%、週3回以上は男性8.6%、女性13.9%であり、女性の方が男性よりも中程度の運動をよく行っていた(表9−2)。中程度の運動種類では、歩行・ウォーキングが最も多く132名、ゴルフ101名、水泳38名、車や床磨き26名などがあり、他にもエアロビクス、筋トレ、自転車などを実施していた。勤務形態別の比較では、男性は実施していない者が開業医32.1%、勤務医54.8%、週3回以上は開業医12.7%、勤務医7.6%であり、開業医の方が勤務医よりも中程度の運動をよく行っていた。女性は実施していない者が開業医36.7%、勤務医52.7%、週3回以上は開業医21.7%、勤務医11.4%であり、開業医の方が勤務医よりも中程度の運動をよく行っていた。

激しい運動の実施状況では、実施していない者が男性76.9%、女性88.6%、月1~3回が男性10.5%、女性5.9%、週1~2回が男性8.8%、女性4.2%、週3回以上は男性3.9%、女性1.3%であり、男性の方が女性よりも激しい運動をよく行っていた。激しい運動の内容は、テニス60名、ジョギング54名、水泳18名などであり、自転車、サイクリング、スポーツジム、スキーなども行われていた。激しい運動については、男女とも勤務形態と実施状況には関連がみられなかった。

5.仕事について

a.通勤
  往復の通勤に使う時間は、男性47.7(51.9)分、女性54.2(47.4)分であり差はなかった。勤務形態別にみると、開業医では男性25.7(35.7)分、女性24.0(28.9)分と男女差はなかったが、勤務医では男性51.3(40.9)分、女性64.2(48.2)分と女性の方が有意に長かった。男女別に開業医と勤務医の時間を比較すると、両性とも開業医よりも勤務医の方が有意に通勤時間は長かった。

通勤時のストレスの感じ方に男女間での違いはなかった(表10−1)。勤務形態別にみると、開業医では全く感じない者が男性70.3%、女性63.8%、少し感じるが男性19.4%、女性27.6%であり、男女とも通勤時のストレスをあまり感じていなかった。勤務医では、全く感じないは男性49.4%、女性45.1%、少し感じるが男性36.9%、女性39.1%であり、開業医よりもストレスを感じている者が多かったが、男女差はなかった。男女別に開業医と勤務医を比較すると、男性では開業医と勤務医の違いは有意であったが、女性では有意ではなかった。

b.仕事の内容について
    男女で違いがみられた項目と平均値(標準偏差)は、「早急に処理する事が必要とされる」、「高いレベルの技術または経験が要求される」、「自分が主導権を取る事を要求される」、「仕事のやり方に選択肢がある」、「仕事で何をするかについて選択肢がある」の5項目であり、いずれも男性よりも女性の方がこれらのことが少ないと感じていた。

勤務形態別に男女差をみると(表10−2)、開業医で男女差が有意であったものは、「全ての事をするのに時間が十分ある」であり、女性の方が時間がないと感じていた。勤務医で有意な男女差がみられた項目は、「早急に処理する事が必要とされる」、「高いレベルの技術または経験が要求される」、「自分が主導権を取る事を要求される」、「仕事のやり方に選択肢がある」、「仕事で何をするかについて選択肢がある」の5項目であり、いずれも男性よりも女性の方がこれらのことが少ないと感じていた。

男女別に開業医と勤務医を比較すると(表10−2)、有意差がみられた項目は、男性では「早急に処理する事が必要とされる」、「集中的に仕事をしなければいけない」、「すべての事をするのに時間が十分ある」、「時間がないとき他の人に手伝ってもらえる仕事である」、「高いレベルの技術または経験が要求される」、「自分が主導権を取る事を要求される」、「何度も同じ事を繰り返さなければならない」の7項目であった。勤務医の方が開業医の方よりも、処理を急ぐ仕事や集中的に行う仕事が多く、高いレベルの技術や経験が要求されていると感じる一方、開業医の方が人に代わってもらえない、主導権を取る事が要求されると感じていた。女性で開業医と勤務医に違いがみられた項目は「自分が主導権を取る事を要求される」のみであり、開業医の方が主導権をとることを要求される事が多いと感じていた。

c.職場の立場について
  職場での立場について感じていることを男女で比較したところ(表10−3)、「私の仕事に関しては他人に決定権がある」は男性2.60(0.96)、女性2.75(0.94)であり、男性の方が他人に決定権があると感じている者が有意に多かった。「休憩時間を自分で決めることができる」は男性2.44(1.04)、女性2.60(1.10)であり男性の方が休憩時間を自分で決めることができると感じていたが、休暇については「多少なりとも自分の好きなときに休暇を取ることができる」は男性2.99(0.94)、女性2.82(0.99)と男性の方が休暇を自由に取りにくいと感じていた。「一緒に仕事をする人を選択する権限がある」は男性3.06(1.03)、女性3.25(1.06)と両性とも「まれにある」と「ほとんどない」の間であったが、女性の方がより選択の権限がないと感じていた。「職場で監督されている程度」については男性3.46(0.97)、女性3.65(1.00)であり、全体としてはちょうどよい(3)とあまりされていない(4)の間であったが、女性の方がより監督されていないと感じていた。
  開業医と勤務医の別に男女で比較をすると(表10−3)、開業医では全ての項目に男女差なかった。勤務医では、「休憩時間を自分で決めることができる」は男性2.38(1.01)、女性2.56(1.08)であり男性の方が休憩時間を自分で決めることができると感じていたが、休暇については「多少なりとも自分の好きなときに休暇を取ることができる」は男性2.93(0.94)、女性2.72(1.00)と男性の方が休暇を自由に取りにくいと感じていた。「一緒に仕事をする人を選択する権限がある」は男性3.20(0.93)、女性3.58(0.76)と両性とも「まれにある」と「ほとんどない」の間であったが、女性の方がより選択の権限がないと感じていた。「職場の環境を計画するとき、かなり発言権がある」は男性2.36(0.98)、女性2.71(1.02)と女性の方が発言権はないと感じていた。「職場で監督されている程度」は男性3.31(0.91)、女性3.46(0.91)であり、女性の方が監督されていないと感じていたが有意差はなかった。
  男女それぞれについて開業医と勤務医で比較をすると、男性では全ての項目について開業医と勤務医では有意差がみられた。女性では、「休憩時間を自分で決めることができる」以外の項目では開業医と勤務医の回答には有意差がみられた。男性と同様に開業医は勤務医よりも仕事に関する決定権や権限は持っていたが、就業時間の柔軟性や休暇の取り方には自由度が低いと感じていた。

d.職場での仕事のやり方に関する問題解決方法について(表10−4
  解決方法を男女で比較したところ、いずれの方法についても男女差はなかった。勤務形態別に男女を比較すると、開業医では提示した方法を実施している割合は低かったが、「仕事時間中に同僚と話し合う」「他人が仕事について決定し、その方針が連絡される」に男女差があり、同僚と話し合うは男性3.06(1.01)、女性2.78(1.03)、他人が決定するは男性3.78(0.48)、女性3.59(0.70)と男性の方がこのような解決方法の選択が少なかった。勤務医では、男女間に違いはなかった。
  男女別に開業医と勤務医を比較すると、男性では「労働組合と話し合う」以外の項目に、女性では「仕事時間外に同僚と話し合う」「労働組合と話し合う」以外の項目に有意差があり、両性とも開業医の方が話し合いによる解決を図ることや他者からの決定に従うことは少なかった。

e.仕事の一貫性や確実性について(表10−5
  男女で違いがみられたのは、「仕事中に協力することが困難であると思われることを別のグループから頼まれることがある」男性2.94(0.87)、女性3.27(0.81)、「仕事でほめられたことがある」男性2.59(0.85)、女性2.47(0.94)、「不当に批評されたことがある」男性2.99(0.86)、女性3.20(0.81)であり、男性に比べて女性の方がほめられることが少ないが、不当に批評される経験は男性の方が多く持つことが明らかになった。

勤務形態別に男女を比較すると、開業医では「同じ職場の管理者から十分な情報を得ることができる」「同じ職場の管理者から一貫した情報を得ることができる」「不当に批評されたことがある」の男女差が有意であった。同じ職場の管理者からの情報を得ることについては男性の方が得ていないと回答し、不当に批評された経験では女性の方が経験はないと回答していた。これは、同じ開業医であっても、男性では管理者の立場にある者が多く、自分自身が他から指示を受けることが少ないための結果とも考えられた。勤務医では、「仕事中に協力することが困難であると思われることを別のグループから頼まれることがある」男性2.83(0.85)、女性3.20(0.80)、「建設的に批評されたことがある」男性2.83(0.81)、女性2.96(0.87)、「不当に批評されたことがある」男性2.93(0.87)、女性3.17(0.85)であり、女性に比べて男性の方がほめられることが少なく、建設的であれ、不当であれ批評される経験を多く持つことが明らかになった。

性別に開業医と勤務医を比較すると、男性では全ての項目に有意差がみられ、開業医のほうが勤務医よりもこれらの経験が少ないことが明らかになった。女性では、開業医と勤務医に有意差のみられた項目は、「仕事中に協力することが困難であると思われることを別のグループから頼まれることがある」、「同じ職場の管理者から十分な情報を得ることができる」「同じ職場の管理者から一貫した情報を得ることができる」であり、いずれの項目も開業医に経験が少なかった。仕事でほめられたり、批評された経験では、開業医と勤務医では違いがなかった。

f.仕事への評価について(表10−6

男女で比較すると、「仕事を通して興味深いことが得られる」男性1.87(0.70)、女性1.78(0.71)「仕事が多様でバラバラである」男性2.45(0.91)、女性2.73(0.94)、「仕事は退屈」男性3.08(0.82)、女性3.26(0.83)、「違う仕事がしたいと思うことがある」男性2.68(1.03)、女性2.96(1.00)、「お金のためだけに仕事をしていると思うことがある」男性3.25(0.90)、女性3.52(0.77)で有意な男女差がみられた。仕事が多様でバラバラと感じる者が男性に多かったことは、仕事の一貫性の設問「仕事中に協力が困難であると思われることを別のグループから頼まれることがある」を肯定する回答が男性に多かったことを反映しているのかもしれない。仕事への興味や退屈感への回答から、男性の方が女性よりも仕事に興味を失ったり、退屈さを感じており、その結果として違う仕事をしたい、お金のために仕事をしていると感じる者が多くなっていることが考えられた。

勤務形態別に男女の回答を比較すると、開業医では、「仕事を通して興味深いことが得られる」、「仕事は退屈」、「直属の上司はあなたの仕事を非常に重要と考えていると思う」、「同僚はあなたの仕事を重要なものであると思っている」、「違う仕事がしたいと思うことがある」、「お金のためだけに仕事をしていると思うことがある」で有意な男女差がみられた。
勤務医では、「仕事が多様でバラバラである」、「非常に重要な仕事であると思う」、「直属の上司はあなたの仕事を非常に重要と考えていると思う」、「同僚はあなたの仕事を重要なものであると思っている」、「違う仕事がしたいと思うことがある」に男女間で有意差がみられた。開業医の男性では上司や同僚のいない者が多かったためか、上司や同僚からの評価は女性の方が受けていると感じる者が多かったが、勤務医では男性のほうが上司や同僚からの評価を受けていると感じていた。

性別に開業医と勤務医の回答を比較すると、男性では「非常に重要な仕事だと思う」「同僚はあなたの仕事を重要なものであると思っている」「他の仕事に比べてあなたの仕事は社会に貢献している」の項目には差がみられなかったが、その他の項目では回答の違いは有意であった。開業医の方が、仕事を通して興味深いことが得られない、仕事に多様さがない、退屈、金のためだけに仕事をしていると感じる者が多かったが、違う仕事をしたいと思う者は勤務医の方が多かった。女性では、「仕事を通して興味深いことが得られる」「仕事が多様でバラバラ」「直属の上司はあなたの仕事を非常に重要と考えている」「他の仕事に比べてあなたの仕事は社会に貢献している」では勤務形態による違いはなかったが、その他の項目では回答に有意差がみられた。開業医は仕事が退屈とは感じておらず、仕事は非常に重要と考え、同僚からの評価も高く、違う仕事をしたいと感じたり、お金のためだけに働いていると感じることが少ないことが明らかになった。すなわち、女性の場合は開業医の方が仕事に対して前向きな姿勢であることが窺われた。

g.仕事中に困難なことがおきた場合(表10−7
  男女で回答を比較すると、「直属の上司にサポートしてもらう」男性2.81(0.99)、女性2.52(1.05)、「部下にうまく仕事を任せられる」男性2.22(0.89)、女性2.36(0.94)に男女差がみられ、男性の方が上司にサポートしてもらうことは少なく、部下に仕事を任せることが多かった。
勤務形態別に男女の回答を比較すると、開業医では「同僚はあなたの仕事に関係ある問題を快く聞いてくれる」「直属の上司にサポートしてもらう」「直属の上司はあなたの問題を快く聞いてくれる」に男女差がみられ、男性は上司や同僚のサポートを受けていなかった。勤務医では、「上司にサポートしてもらう」「部下にうまく仕事を任せられる」で男女差があり、男性の方が上司のサポートは少なく、部下に任せることが多かった。
  性別に開業医と勤務医を比較すると、男性では「労働組合はサポートしてくれる」の項目以外全てに、女性では、「同僚にサポートしてもらう」「上司にサポートしてもらう」「上司は問題を快く聞いてくれる」に有意差があり、男女とも勤務医の方が同僚や上司のサポートを受けていること、女性では開業医も勤務医も同僚に話しを聞いてもらい精神的サポートを受けているが、男性では同僚からの精神的サポートを勤務医よりも開業医の方が受けていないことが明らかになった。

h.上司から不当な扱いを受けたとき(表10−8
  対処行動としてよく行われているのは、男女とも「忘れる」「同僚に愚痴を言う」「何も言わずにやり過ごす」であり、いずれも「ときどきある(2)」と「まれにある(3)」の間の得点であった。

男女に回答の違いがみられたのは、「体の不調を感じる」、「惨めな気分になる」、「家で腹を立て、あたる」、「仕返しを考える」であり、仕返しを考える以外は女性の方が男性よりも頻度が高かった。

勤務形態別に男女の回答を比較すると、開業医では「同僚に愚痴を言う」のみ男女で差があり、女性の方がそのように行う者が多かった。勤務医では「惨めな気分になる」、「家で腹を立て、あたる」、「仕返しを考える」に男女差があり、男性は仕返しを考える者が女性に比べ多かったが、選択肢ではまれにある(3)とほとんどない(4)の間であり、全体としてはそのように考えるものは少なかった。

男女別に勤務形態で回答を比較すると、男性では「何も言わずやり過ごす」、「すぐ何かを言う」、「相手を説得する」、「怒る」、「忘れる」、「落ち着いたときに相手と話す」、「同僚に愚痴を言う」、「もっと立場の上の人の所へ行く」、「惨めな気分になる」に違いがみられた。勤務医の方が開業医よりも項目に該当する頻度が多かった。女性では、「何も言わずやり過ごす」、「すぐ何かを言う」、「同僚に愚痴を言う」、「労働組合の所に行く」であり、労働組合の所に行くを除くと、開業医の方が勤務医よりも該当する頻度が高かった。
i.仕事に関連する項目の満足度(表10−9

8つの項目の満足度を尋ねた結果を男女で比較すると、男女に差がなかった項目は「仕事上での興味や技術」だけであり、他の7項目には男女差がみられ、全ての項目において女性の方が満足度が高かった。勤務形態別に男女で比較をすると、開業医では「通常時の給料」「仕事の将来性」「仕事上での興味や技術」「仕事全体」に男女差がみられ、いずれも女性の満足度が高かった。勤務医では「通常時の給料」「一緒に働いている人」「物理的な就業環境」「職場の運営方法」「能力の使われ方」「仕事全体」の項目で男女差があり、いずれも女性の満足度が高かった。

男女別に、開業医と勤務医の回答を比較すると、男性では「仕事上での興味や技術」以外の7項目には開業医と勤務医に有意差がみられ、全て開業医の方が勤務医よりも満足度は高かった。女性では「一緒に働いている人」以外の7項目で開業医と勤務医の回答には有意差があり、全てにおいて開業医の満足度が高かった。

6.性格について

a.タイプA性格特性関連
  男女別にみると、男性の方が女性よりもタイプA傾向が強かった。勤務形態別に男女を比較すると、開業医では男女に差はなかったが、勤務医では男性はタイプA傾向が強い特徴を持っていた。性別に勤務形態による違いを検討したが、男女とも開業医と勤務医の間には違いはみられなかった(表11−1)。

b.性格について(表11−2
  性格について尋ねた6項目の回答を男女で比較すると、「完璧主義すぎる」、「まじめすぎる」、「自分の人生の大部分について他人に責任を転嫁している」は男女に差がなかったが、「非常に心配性で常に緊張している」「内向的である」「確実なものおよび安全を求めている」はとてもよくあてはまる、よくあてはまるとする者が男性に多かった。
勤務形態別に男女で回答を比較すると、開業医ではいずれの項目も男女差がなかったが、勤務医では「完璧主義すぎる」「まじめすぎる」「非常に心配性で常に緊張している」「内向的である」「確実なものおよび安全を求めている」に男女差がみられ、いずれも男性の方が該当する者が多かった。
性別に、勤務形態で回答を比較すると、男性ではいずれの項目も開業医と勤務医では違いがなかったが、女性では「完璧主義すぎる」「まじめすぎる」に該当する者が開業医の方が多かった。

c.人生にとって重要な項目表11−3
    健康、結婚・恋愛関係、仕事、性生活、家庭生活、余暇の過ごし方についての重要度を、極めて重要(1)から重要ではない(5)のカテゴリで尋ねた結果を男女で比較すると、健康と仕事以外の項目では男女差が有意であった。
勤務形態別に男女を比較すると、開業医では結婚・恋愛関係と性生活の重要度に男女差があり、男性の方がこれらを重要と考えていた。勤務医では結婚・恋愛関係、性生活、家庭生活、余暇の過ごし方で男女差が有意であり、いずれも男性の方が重要と考えていた。
  性別に勤務形態との関連をみると、男性では健康と仕事の重要度に違いがみられ、いずれも開業医の方が勤務医よりも重要であると答えていた。女性では仕事の重要度と性生活の重要度に違いがみられ、仕事は開業医の方が、性生活は勤務医の方が重要と考えていた。
  既婚者と未婚者で比較をすると、結婚・恋愛関係、性生活、家庭生活、余暇の過ごし方の重要度で有意差がみられ、いずれの項目も既婚者の方が未婚者よりも重要と考えていた。また、性別に既婚者と未婚者の考えを比較すると、男女とも結婚・恋愛関係、家庭生活について既婚者の方が有意に重要と考えており、女性では性生活においても既婚者の方が有意に重要と考えていた。

d.人生における満足度
   結婚・恋愛関係、余暇の過ごし方、生活水準、住居、仕事、健康、家庭生活、性生活、性格についての満足度を尋ねた。男性の方が有意に満足度が高かった項目は、結婚・恋愛関係であり、生活水準、住居、健康、性格の満足度は女性の方が有意に高かった(表11−4)。

勤務形態別に満足度を比較すると、開業医で男女差がみられた項目は生活水準と生活への満足度であり、いずれも女性の方が満足度が高かった。勤務医では結婚・恋愛関係、生活水準、住居、健康に男女差があり、結婚・恋愛関係は男性の方が満足度が高かったが、生活水準、住居、健康の満足度は女性の方が高かった(表11−5)。

性別に、勤務形態で満足度を比較すると、男性では結婚・恋愛関係、生活水準、住居、仕事、健康の満足度に違いがあり、結婚・恋愛関係の満足度は勤務医の方が高かったが、生活水準、住居、仕事、健康の満足度は開業医の方が高かった。女性では、生活水準と仕事の満足度に違いがあり、いずれも開業医の方が満足度が高かった。

満足度の9項目のクロンバックα係数は0.828であったため、9項目を加算して平均値を求め満足度の総合得点として男女別に比較をしたところ、男性4.48(1.04)、女性4.65(1.02)と女性の方が有意に得点が高く、全体としての満足度が高いことが明らかになった。しかし、勤務形態別に男女の得点を比較したところ、開業医と勤務医ともに男女の満足度得点に差はなかった。男女別に勤務形態との関連を検討したが、両性とも開業医の方が得点は高かったが、差は有意ではなかった。

7.社会生活について

a.生活時間
  平日の生活時間を男女別に比較すると、仕事時間は男性の方が有意に長く、家族との時間には男女差はなかったが、睡眠時間は女性の方が有意に短かった(表12−1)。
勤務形態別に男女を比較すると、開業医では仕事時間、家族との時間に男女差はなかったが、睡眠時間は女性が有意に短かった。勤務医では、仕事時間、睡眠時間に男女差があり、いずれも男性が有意に長かった(表12−2)。

男女別に勤務形態で比較をすると、男性では開業医よりも勤務医の仕事時間が有意に長かったが、女性ではいずれの時間についても開業医と勤務医の差はなかった。
  同居者の有無で比較すると、家族と過ごす時間は同居者なしが0.7(1.5)時間、同居者ありが3.4(4.9)時間と有意差があったが、仕事時間や睡眠時間は差がなかった。

b.いろいろな事への考え方について
  14項目の設問について、全くそう思わない(1)から全くそう思う(6)の6段階の選択肢で回答を求めた。男女に回答の違いがみられたものは、「家庭では、たいていの場合自分が物事に対して決定権をもっていると思う」「この先、良いことの方が多く起こると思う」「困難には常に解決方法が見つかる」「将来、予想もつかない変化が多く起こると思う」「将来、自分が頼れる人が常にいると確信する」の5項目であり、「将来、予想もつかない変化が多く起こると思う」は男性の方が強く肯定するものが多かったが、残りの項目は女性の方が強く肯定していた(表12−3)。
勤務形態別に比較すると(表12−4)、開業医で有意差がみられた項目は、「人生の方向性および目的を持っている」「将来、予想もつかない変化がたくさん起こると思う」であり、「人生の方向性および目的を持っている」は女性の方が強く肯定し、「将来、予想もつかない変化がたくさん起こると思う」は男性が強く肯定していた。勤務医では、「職場では自分が決定権を持つ」「将来、予想もつかない変化がたくさん起こると思う」「将来、自分が頼れる人が常にいると確信する」に男女差があり、職場の決定権と予想もつかない変化については男性が強く肯定し、頼れる人については女性の方が強く肯定していた。

c.仕事と家庭との関係について
  仕事と家庭との関係では(表12−5)、男女間で差がみられたのは「家庭の問題により仕事に専念できる時間が減る」「家事によって仕事をよく行うに必要な睡眠時間が取れなくなる」「家庭内での責任により、リラックスしたり一人になるための時間が減る」「仕事のために家族と過ごす時間が減る」「出張で家を空けることが多い」であり、「睡眠時間が取れない」、「一人の時間が減る」は女性に多く、「家族との時間が減る」、「出張で家を空けることが多い」は男性で有意に多くみられた。

勤務形態別に男女を比較すると、開業医では「家事によって仕事をよく行うに必要な睡眠時間が取れなくなる」「家庭内での責任により、リラックスしたり一人になるための時間が減る」であり、いずれも女性の方が「ある」者が多かった。勤務医では、「仕事で非常にエネルギーを使うため、家庭では注意力が必要な事ができないと思う」以外の全ての項目で男女差があり、「仕事に専念できる時間が減る」「睡眠時間が減る」「一人の時間が減る」「家でイライラする」は女性に多く、「家族と過ごす時間が減る」「出張で家を空ける」は男性に多かった。「家庭内の心配により仕事から気持ちがそがれる」は該当しない者が女性に多かった。

男女で勤務形態との関連を比較すると、男性では「仕事のために家族と過ごす時間が減る」「出張のため家を空ける」は勤務医に多く、「職場での問題のため家でイライラする」は開業医に多くみられた。また、「仕事で非常にエネルギーを使うため、家庭では注意力が必要な事ができないと思う」は開業医の方が該当しない者が多かった。女性では「出張のため家を空ける」のみ、勤務医に多くみられた。

d.人との付き合い等について
  「気軽に話せる人の数」、「誰かの腕に抱かれて慰められたいと思う」は男性よりも女性の方が有意に多かった(表12−6表12−7)。

月1回以上の親戚との訪問では、女性の方が訪問しあう者が有意に多く(表12−8)、1ヶ月に会う親戚の人数は男性は0人、女性は1〜2人が最も多くなっていた(表12−9)。

職場の人との仕事以外の付き合いでは、男性方が女性よりも付き合いが有意に多かった(表12−10)。友人や知り合いとの付き合いでは、男性よりも女性の方が付き合う頻度が有意に高かったが(表12−11)、1ヶ月に訪問しあう人数は両性とも1〜2名が最も多く差はなかった(表12−12)。電話や手紙だけで連絡を取る友人との連絡頻度は、男性よりも女性の方が頻度が有意に高く(表12−13)、男性では数ヶ月に1回未満が約7割であった。
  宗教行事への頻度には男女差はなく、約9割が宗教行事には参加していなかった(表12−14)。ボランティア活動は実施していない者が男性93%、女性85%と実施に有意な男女差があった(表12−15)。
クラブや組織への入会は男性29%、女性36%と女性に有意に多かった(p<0.05)が、女性でも参加状況では数ヶ月に1回程度が最も多く、頻繁には行われていなかった(表12−16)。自宅でのパーティーの開催は男女とも少なく(表12−17)、男性の8割、女性の7割は実施していなかったが、数ヶ月に1回程度の実施では女性が有意に多かった。
趣味のある者は男性75%、女性74%と男女差はなかった。趣味のために1週間に使う時間は男性4.85(0.65)時間、女性3.58(2.95)時間であり、男性が有意に長かった。

e.抑うつ的な状態に関して
  「自分が普段行っている事にほとんど意味がないと感じる」「人生の重大な場面でそれを個降伏してうまくやれるという気になる」「生きていくためのはっきりした展望がないと感じる」の3設問についての回答には、男女間で差はみられなかった(表12−18)。
勤務形態別に回答を男女で比較すると、「生きていくためのはっきりした展望がないと感じる」の設問で、開業医の男性の方が女性よりもそのように感じるものが有意に多かった。
  男女別に、勤務形態で回答を比較すると、「自分の行っている事は意味がないと感じる」はそのように感じるものが勤務医に多く、女性では開業医との差が有意だった。「生きていくためのはっきりした展望がないと感じる」では、男性では開業医よりも勤務医の方がそのように感じる者が多かったが、女性では開業医の方がそのように感じる者が有意に多かった。
  得点を男女で比較すると(表12−19)、男性2.41(0.32)、女性2.34(0.31)であり男性の方が有意に高かった。
勤務形態別に男女の得点を比較すると、開業医では男性が有意に高かったが、勤務医では男女差はなかった。
  男女別に開業医と勤務医の得点を比較すると、男性では差はなかったが、女性では勤務医の方が有意に得点が高かった。

8.最近の健康診断結果について

最近の健康診断結果を性別に年齢階級で比較をすると(表13)、男性では収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール、GOT、尿素窒素、クレアチニンに有意差があり、いずれも年齢が高い方の値が高くなっていた。女性では、身長、体重、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール値に年齢間で有意差があった。女性のBMIは46〜55歳代が他の年代よりも値が高かった。収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール、LDLコレステロールは加齢に伴い値が高くなっていた。
  血圧値をWHO区分で分けて男女別にみたところ、男性では境界域が34名(4.9%)、高血圧が8名(1.1%)であり、女性では境界域が5名(2.8%)であり高血圧はいなかった。
  尿定性検査では、尿蛋白、尿潜血、尿糖は男女とも大部分がマイナスであった。尿蛋白陽性(+)は男性で1名、尿潜血では1+が男性9名、女性8名、2+は男性3名であった。尿糖は1+が男性4名、女性1名、2+は男性4名、3+は男性1名であった。尿糖1+のうち1名、尿糖2+のうち2名は糖尿病の治療を受けていなかった。

9.性差を考慮した医療について表14

性差を考慮した医療についての設問の回答を男女で比較すると、「性差を考慮した医療という概念を見聞きしたことがある」、「医学現場では女性に関するエビデンスが少ない」で回答に男女差があり、女性の方が性差医療に関する関心が高かった。また、「専攻分野での疾患における発症、進展の性差について十分な知識を持っている」のは男女とも30%台であった。

勤務形態別に男女で回答を比較したところ、勤務形態により男女の回答に有意な違いがみられたのは、「性差を考慮した医療という概念を見聞きしたことがある」であり、開業医では男女差がなかったが、勤務医では女性の方が聞いた事のある者が有意に多かった。「専攻分野での疾患における診断、治療に性差を考慮している」は開業医では男女とも約8割が考慮していたが、勤務医では男性75%、女性82%と有意ではないが差がみられた(表14)。

男女とも開業医と勤務医でこれらの設問への回答を比較したところ、有意な違いはみられなかった。
  女性について、循環器医と糖尿病医でこれらの回答を比較したところ、「性差を考慮した医療という概念を見聞きしたことがある」は循環器医80.9%、糖尿病医65.0%と循環器医の方が聞いたことがある者が多かったが、性差を考慮した医療への興味や実践に関しては専攻分野による違いはみられなかった。

 

D. まとめ


循環器専門医(男919名、女121名)・糖尿病専門医(女125名)を対象とした「ストレスと健康に関するアンケート」の分析を行った結果、女性において循環器専門医と糖尿病専門医の間には大きな違いはみられなかった。男女で勤務形態も考慮して比較したところ、以下の結果が得られた。

1.回答者の背景

a.回答者のうち開業医は男性18.4%、女性24.8%と女性に開業医が多かった。
b.夜間勤務は開業医ではほとんどなかった。勤務医男性の80%、女性の40%に夜間勤務があり、男性の方が夜間勤務の回数は多く、男女差は有意であった。また、男女とも年齢が若い方が夜間勤務回数は多かった。
c.勤務時間は開業医、勤務医とも男性の方が女性よりも勤務時間は長かった。開業医と勤務医の勤務時間差は、男性では有意であったが、女性では有意差はなかった。
d.既婚者は男性96%、女性33%と有意差があった。既婚女性では義父母との同居率は既婚男性よりも有意に高かった。未婚者では女性の方が実父母との同居率が高く、一人暮らしをしているのは男性80%に対して女性は半数であった。
e.両親の死因は、がんが最も多く父親の約4割、母親の半数であった。脳卒中は父親、母親とも約10%であったが、心臓発作は父親が10%に対して母親は5%と、父親の方が多かった。
f.両親の既往では、高血圧が約半数、糖尿病20%、脳卒中、狭心症がそれぞれ約10%であった。
g.兄弟姉妹の既往は全体に低く、高血圧5%、糖尿病2%であったが、両親の高血圧や糖尿病の保有と兄弟姉妹にもこれらの疾患を保有の間には、有意な関連があった。

2.回答者の健康状態

a.主観的な包括的健康状態
   身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、心の健康の8側面で主観的健康状態を測定し、8つの下位概念を身体的健康と精神的健康に分けてサマリースコアを算出した。
  循環器・糖尿病専門医の集団として、日本国民の偏差値と比較したところ、男性では日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、心の健康の7側面で有意に得点が低かった。女性では身体機能は有意に高かったが、活力、社会生活機能、心の健康は有意に低かった。また、サマリースコアでは、精神的健康の得点が国民平均よりも有意に低かった。
男女別にみると、身体機能、全体的健康感は男性が女性よりも有意に高く、心の健康は女性の方が有意に高かった。
  勤務形態別比較では、男性は活力、社会生活機能、心の健康が勤務医の方が有意に低く、女性では日常役割機能(身体)が勤務医の方が有意に低かった。サマリースコアでは、男性では精神的健康の得点が勤務医で有意に低かったが、女性では差はなかった。
  勤務形態別に男女で比較をすると、開業医ではいずれの項目も有意差はなかったが、勤務医では日常役割機能(身体)は男性が高く、全体的健康感、心の健康は女性が高かった。
b.健康状態と病気による欠勤
  この1年間の健康状態は、極めて良好、良好と回答したものは男女とも約半数、普通が40%と90%は普通以上の健康状態と回答していた。
  慢性疾患のある者は男女とも約40%であったが、健康上の理由で欠勤をした者は男女とも約2割と少なかった。健康上の理由による欠勤も3分の2は3日以内であった。健康上の理由で欠勤をしなかった者の割合は開業医の方が高かったが、勤務医との間に有意差はなかった。
c.1年間に罹った疾患
  全体に多かった疾患は、花粉症(32%)、胃の不調や消化不良(23%)、痔(22%)、慢性皮膚疾患、歯肉・口腔疾患、坐骨神経痛・背部痛、気管支炎(各17%)であった。男女別にみると、関節炎・リューマチ、常時の便秘、慢性の足の疾患、神経疾患または持続性のうつ病、歯肉または口腔疾患は男性より女性の方が有意に罹患率が高かった。
  性別に勤務形態と疾患の関連をみると、男性は気管支炎、胃の不調や消化不良、痔の罹患に開業医と勤務医に有意差があり、いずれも開業医が多かった。女性では疾患の罹患と勤務形態に関連はなかった。
d.2週間以内に経験した症状
  全体に多かった症状は喉の痛み(37%)、風邪・インフルエンザ(34%)、胸やけ・消化不良(30%)、腰痛・背部痛(29%)、下痢(27.6%)、原因不明の疲労感(24%)、睡眠障害(23%)であった。男女差があった症状は、下痢、めまいまたはふらつき、くるぶしのお痛み、吐気または嘔吐、その他の症状であり、下痢以外は女性の方が有意に多かった。これらの症状の経験と勤務形態とは関連がなかった。
e.2週間以内の服薬状況
  提示した処方薬では、鎮痛剤が25%、消化剤19%と多く、提示した項目以外の物を服用している者が30%であった。男女で比較すると、鎮痛剤、精神安定剤、睡眠剤、緩下剤の服用は男性より女性の方が有意に高かった。勤務形態別に男女を比較すると、開業医では服薬種類に男女差はなかったが、勤務医では女性の方が有意に多かった。性別に勤務形態で比較すると、男性では開業医の方が勤務医よりも服薬種類は多かったが、女性では差はなかった。
f.その他の症状等
  胸部の痛みや不快感を経験した事がある者は、男性26%、女性22%で差はなかった。高血圧の診断を受けた者は男性19%、女性11%であり、男性が有意に多かった。糖尿病の治療中の者は男性1.3%、女性2.1%と少なかった。高血圧については、本人の既往と両親や兄弟の既往の関連は男女とも有意であったが、糖尿病においては本人が治療中であることと両親の既往との関連は男性で有意であり、兄弟の既往と本人が治療中であることとの関連は女性で有意であった。
g.健康状態への満足度
  健康状態への満足度は男性よりも女性の方が低く、男性では不満のある者が約30%であった。勤務形態による満足度の違いはなかった。
h.抑うつ的な傾向
  抑うつ的な状態に関しては、男性の方がその傾向が強く、男性では開業医と勤務医では違いがなかったが、女性では勤務医の方が開業医よりも抑うつ的な傾向が強かった。
i.健康診断結果より
  男女とも年齢が高くなると、血圧、総コレステロール値が高くなっていた。男性ではGOT、尿素窒素、クレアチニン、女性ではBMI、中性脂肪、LDLコレステロールも加齢とともに上昇していた。境界域高血圧・高血圧と分類された者は男性に多かった。

3.生活習慣

a.喫煙
  喫煙者は男性16%、女性2%と男性が有意に多かった。勤務形態では、男性は開業医が有意に多かったが、女性では有意差はなかった。
  非喫煙者の受動喫煙の状況では、職場での受動喫煙の暴露は男性よりも女性の方が少なかったが、家庭での暴露は女性の方が多かった。勤務形態では、職場での受動喫煙の暴露は、男女とも開業医の方が暴露しないと回答した者が多かったが、家庭での暴露では男女とも勤務形態による違いはなかった。
  非喫煙者のうち、男性の半数は過去に喫煙をしており中止までの喫煙期間は10年、中止後の経年数は13年であった。

b.飲酒
  飲酒状況では、男性の約半数は毎日飲酒をし、男性の方が女性よりも飲酒頻度、1回の飲酒量ともに高かった。男性の毎日飲酒者は開業医の方が勤務医よりも多かった。
  飲酒量が以前よりも減った者は男女とも約30%であり、その理由は男性の60%、女性の45%は健康上の理由であった。

c.運動
  軽い運動の実施は男性70%、女性85%、中程度の運動の実施は男女とも約半数であり、軽い運動は男性より女性の方が実施していた。勤務形態別にみると、男性では運動強度に関わらず、開業医の方が運動をよく実施していたが、女性では中程度の運動は開業医の方がよく行っていたが、軽い運動では差はなかった。

4.仕事について

a.通勤
  通勤時間は開業医よりも勤務医の方が有意に長く、勤務医では男性よりも女性の方が有意に長かった。通勤時のストレスでは、全体には約半数は全く感じないと回答していたが、感じている程度は、開業医よりも勤務医の方が強かった。

b.仕事・職場環境等への評価

仕事の内容についての評価では、男性より女性の方が仕事における主導権や選択肢が少ないと感じていた。勤務形態別に男女で比較すると、開業医では女性の方が時間がないと感じており、勤務医では男性の方が早急に処理する事が必要とされる、高い技術や経験が要求されることが多いと感じ、仕事上の主導権や選択肢は女性の方が少ないと感じていた。性別に開業医と勤務医を比較すると、男性では、開業医よりも勤務医の方が処理を急ぐ仕事や集中的に行う仕事が多く、高いレベルの技術や経験が要求されていると感じていた一方、開業医の方が人に代わってもらえない、主導権をとることが要求されると感じていた。女性では、男性ほどの違いはなく、開業医の方が勤務医よりも、主導権をとることが要求されることが多いと感じていた。

c.職場での立場

男女で比較すると、男性は女性よりも仕事に関しての決定権が他人にある、職場で監督されていると感じていた。休憩時間については、男性の方が選択に自由度があると感じていたが、休暇取得では女性の方が自由度はあると感じていた。人事に関する選択権は女性の方が男性よりもないと感じていた。
  開業医と勤務医を比較すると、男女とも開業医は勤務医よりも仕事に関する決定権や権限を持っていたが、就業時間の柔軟性や休暇の取り方には自由度が低いと感じていた。
d.職場での問題解決方法・サポート・不当な扱いについて

問題解決方法には男女差はなかった。開業医では提示したいずれの解決方法もあまり行われておらず、勤務医では「仕事中に同僚と話し合い問題を解決する」「上司と話し合い解決する」が多くみられた。

仕事中に困難な事が起きた場合には、「上司にサポートしてもらう」は女性に多く、「部下に仕事を任せられる」は男性に多くみられた。開業医と勤務医で比較をすると、勤務医の方が同僚や上司のサポートを受けており、女性では開業医も勤務医も同僚からの精神的サポートを受けていたが、男性では開業医は勤務医よりも同僚からの精神的サポートを受けていなかった。

上司から不当な扱いを受けたときは、男女とも忘れる、同僚に愚痴を言うなどの対処行動が取られていた。男女で比べると、女性の方が体の不調を感じたり、惨めな気分になる者が多かった。

e.仕事の一貫性や確実性について

男女で比較すると、男性の方が女性よりも困難な事を別のグループから依頼される事が多く、男性に比べて女性の方が誉められることが少ないが、不当に批評される経験は男性の方が多く持っていた。勤務医は開業医よりも他者(上司)との関わりが強いため、上司からの情報を得たり、上司に誉められたり批評を受ける経験を多く持っていた。勤務医の男性は女性よりも、上司からの批評を受ける事が多いと感じていた。

f.仕事への評価・満足度

男女で比較すると、男性の方が女性よりも仕事に興味を失ったり退屈さを感じており、違う仕事をしたい、お金のために仕事をしていると感じる者が多かった。男性では、開業医の方が勤務医よりも仕事を通して興味深い事が得られない、仕事に多様さがない、退屈、金のためだけに仕事をしていると感じる者が多かったが、違う仕事をしたいと思う者は勤務医の方が多かった。女性では、開業医の方が仕事を重要と考え、同僚からの評価も高いと感じているなど、仕事に対して前向きな姿勢であった。

仕事に関連する事柄の満足度では、給料、将来性、一緒に働く人、就業環境、職場の運営方法、能力の使われ方、仕事全体の満足度は、男性よりも女性の方が高かった。開業医と勤務医を比べると、開業医の方が満足度は高く、勤務形態別で男女を比較しても、女性の方が満足度が高かった。

5.性格と人生の重要事項・人生への満足について

性格では、男性はタイプA性格特性傾向が強く、自分の性格を、心配性、内向的、確実・安全を求めるタイプと評価する者が多かった。男性では開業医と勤務医に差はなかったが、女性では開業医の方が完璧主義、まじめと評価する者が多かった。

人生で重要な項目では、男女とも健康、家庭生活、仕事の重要度が高かった。男女で違いがみられたのは、家庭生活、性生活、結婚恋愛、余暇であり、性生活以外は男性の方が重要と考えていた。男性では開業医の方が勤務医よりも健康や仕事をより重要と考えていた。女性では仕事の重要度は開業医の方が勤務医よりも高く、性生活については、重要度は全体には高くないが、勤務医の方が開業医よりも重要と考えていた。

人生における様々な項目への満足度では、結婚・恋愛関係は男性の方が満足度が高かったが、生活水準、住居、健康、性格への満足度は女性の方が高かった。男性では開業医の方が生活水準、住居、仕事、健康面の満足度が勤務医よりも高く、女性では生活水準と仕事の満足度において開業医の方が勤務医よりも高かった。

6.社会生活について

生活時間をみると、仕事時間は男性が長く、睡眠時間は女性の方が短かった。男性では勤務医の方が開業医よりも仕事時間は長かった。

将来の予測や自分でできること等の考え方では、男性よりも女性の方が将来を前向きに考えていた。勤務形態で男女を比較すると、開業医では女性の方が人生の方向性・目的を持つ者が多く、将来予測もつかない変化が多く起こると思う者は男性に多かった。勤務医では、職場の決定権を持つ、将来予測もつかない変化が起こると思うは男性に多く、将来自分が頼れる人が常にいると思うのは女性に多かった。

仕事と家庭の関係では、家事により睡眠時間が減る、家庭内の責任のために一人の時間が減るは女性に多く、仕事のために家族との時間が減る、出張で家を空けることが多いは男性に多かった。男性では出張のために家を空ける、仕事のため家族との時間が減ると回答した者は勤務医の方が開業医より多く、女性では出張のため家を空けることは、開業医よりも勤務医の方が多かった。
  人との付き合いでは、女性の方が男性よりも職場以外の人との付き合いは多く、ボランティアやクラブ・組織活動等への参加も女性の方がよく出席していた。

7.性差を考慮した医療について

性差を考慮した医療の概念を知っていた者、医療現場で女性に関するエビデンスが少ないと思う者、性差に基づく臨床研究への関心がある者は男性よりも女性の方が多かった。男女とも90%が「同じような疾患に男女差がある」と感じていたが、「専攻分野での疾患に関する性差について十分な知識を持つ」者は約3分の1であった。開業医と勤務医の間では男女とも回答に違いはなかった。

これらの結果から、循環器系専門医を一つの職域集団とみなした場合、男女で比較をすると身体機能、全体的健康感は男性が女性よりも有意に高く、心の健康は女性の方が有意に高かった。すなわち、身体的健康面では女性の方が、精神的健康面では男性の方が健康状態は悪かった。その背景には、女性は家事等との両立などによる睡眠不足、勤務時間が長いなどが身体的健康に影響している事が考えられた。一方、男性はきまじめな性格傾向があり、職場のストレスなどを多く感じている事や、交友や社会的活動などが女性より少なくストレスの解消が図れていないことが精神的健康面に影響をしている事が考えられた。その結果、女性に比べて男性の方が、将来や現在の状況に対して、ネガティブに捉える傾向がみられた。

勤務形態も健康状態に影響をしており、勤務医の方が開業医よりもストレスが多い傾向がみられ、特に男性ではその傾向が強かった。
生活習慣では、喫煙、飲酒は男性の方が女性よりも多く、運動実施は中程度以上の強度になると男女では変わらなかった。生活時間については、開業医の方が勤務医よりも家族との時間や運動時間を取ることができており、勤務医の方が仕事中心の生活になっていることが窺われた。

循環器系専門医全体の自覚的健康状態は国民の標準よりは低く、中でも男性の精神的健康状態の改善や女性の身体的健康度の改善は1つの課題であり、職場環境や各自の働き方を見直すことも必要だろうと考えられた。


文献

1)天野惠子,循環器分野における女医の労働環境について.平成14年度厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業)報告書(日本に置ける女性医療の課題に関する医療社会学的研究ならびに性差を加味した健康度及び生活習慣の測定手法の評価に関する研究)、694-707、平成15年3月.

2)福原俊一、鈴鴨よしみ、SF-36v2TM日本語版マニュアル、NPO健康医療評価研究機構、2004年

 

 

図表

循環器・内科専門医のストレスと健康に関するアンケート調査 −1(表1〜表6)

循環器・内科専門医のストレスと健康に関するアンケート調査 −2(表7〜表11)

循環器・内科専門医のストレスと健康に関するアンケート調査 −3(表12〜表14)