約半年の準備期間を経て、本研究の目的であった「市民団体の設立」は達成することができた。団体設立に当たり、@発起人が会員になる立場ではない、A患者・元患者が会員の中心ではあるが、疾患が必ずしも同じではない、という特殊な事情があっても、目的どおりに設立することができた要因を考えてみたい。
1つは代表世話人の医師の熱意とその意図を汲んだ事務局の存在である。代表世話人、多くの発起人は医師であり、会員になる立場ではなかったが、世話人の一人が中高年女性の健康問題を研究課題とする非医療関係者であり、代表世話人の意図を汲んで事務局を担うことが出来た。事務局担当者と設立準備会の賛同者とは10歳以上の年齢差があっても、事務局担当者が研究等を通して中高年女性との関わりが深かったため、賛同者の心身の状況も理解でき、コミュニケーションを十分にとることが出来たと考えられる。また、代表世話人である医師の「会の設立」への熱意と協力も、事務局の活動を支えとなった。
2つめに、設立時期を設定し、それに向けた設立準備会の開催とコアメンバーの獲得である。年内に設立することを目標に据えた結果、賛同者から月1回の会合を持つことが提案され、8ヶ月に渡り設立準備会を開催した。それを通して、当初は漠然としていた「会の理念や目的」が明確になり、「これなら自分も積極的に係わっても良い」という賛同者が、定期的に設立準備会に参加するようになった。設立準備会に2回以上出席した人に運営委員を委嘱したが、委嘱した13名の内、過半数は5回以上の出席者であり、コアメンバーとして今後も会の運営に積極的に係わっていくことが期待できる。コアメンバーを獲得は会を運営上、不可欠であり、年内設立を第一目標とし、8ヶ月間の準備期間を経た意義は大きいと考える。
第3に会報(News)による連絡である。設立準備会に出席できない者においては、何も連絡がなければ興味も失われてしまう。会報には、進捗状況の報告だけではなく、会の中の雑談から拾い上げた話題なども掲載したため、設立準備会の雰囲気等も多少は伝えられたと考える。実際、賛同者から、「会報を読んで励みになった」「楽しみにしている」という手紙が事務局には寄せられた。会報は、設立準備会に出席しなかった者においては、今後の会の活動を推察する一手段であり、会員として継続参加するという判断の材料になったと考えられる。
このような有効な点があった一方、設立過程で以下のようなの課題が明らかになった。
1.設立賛同者の会員への歩留り
多くの市民団体は、同じ目的に賛同した者が中心となり会の設立を発案し、意見交換を重ねて会を設立していく経緯を辿る。したがって、設立準備会に名を連ねた者は、そのまま正式に会が発足した時の会員となるのが通常である。しかし、本会の場合、8回行った設立準備会に1回以上参加した者は20名弱、設立に賛同した者の中で正式発足時の会員になった者は半数以下であった。準備会への出席率が低かったのは、会の趣旨に賛同するが自分は積極的には関われないという者が多かった結果と思われる。本会は女性外来担当医師の発案に基き、患者と元患者を中心に医師を通して賛同者の募集が行われたため、賛同者の大半が女性外来に通院中であり、体調が良い時ばかりとは限らない。また、準備会を開催した場所は千葉市内であるが、賛同者の中には遠方の者も多かった。したがって、「出かけようと思っても、体調や遠距離で容易には出かけられない」ということも、設立準備会への出席が低かった一因と考えられる。
会の正式発足時に会員となった者が半数以下であったことについては、会費を徴収するという段階になった時に、「受診時に、会の設立を医師から聞き、良いことだと思ったから参加したが、実際には自分は会の活動にも参加できないから必要ない」「予想していたような活動を行う会ではなかった」「体調等が不良であり、会への参加について返事をするのも面倒」等の理由が考えられた。いずれにせよ、参加者の多くが「更年期障害等で不定愁訴を持つ患者」という本会の賛同者の特性から、会の運営に積極的に関わる意欲があり、体調も比較的良い者となると少数になってしまったものと考えられる。
2.コアメンバーの活動力
設立準備会を毎月1回開催する中で、出席者は次第に固定化された。会を運営するための運営委員には、準備会に2回以上出席した13人に就任を依頼した。各人が運営委員の就任を快諾してくれたが、「病気もあるので、負担が大きいと困る」という意見が多く聞かれた。月1回の例会に出席するために、1ヶ月間の体調管理を行っているという会員もおり、会の運営に関わることにより体調が悪化することになれば、本末転倒である。したがって、「月1回の例会になるべく出席する」ことだけを条件とし、運営委員に就任を依頼した。
運営委員を承諾した会員にしても、8回のうち2回以上の出席者であり、今後についても例会に毎月出席できる保証はない。その点では、運営委員という会の運営のコアメンバーであっても、会の運営にどれだけ積極的に関われるかという点では、不確実な点が多く、当面は事務局主導で会の運営をせざるを得ない状況である。元利用者や主旨に賛同する患者以外の者の参加が会の運営の安定化には必要と考えられ、会員募集を幅広く行う必要があると考えられる。
3.活動準備資金
事務局では、毎月の設立準備会終了後にNewsを作成し、設立準備会の報告と次回の案内を賛同者に郵送してきた。設立のための準備資金がない状態で準備会を開始しため、10月末のシンポジウム開催の企画・運営の委託事業による収入を得るまでは、事務局がNewsの郵送料(約10万円)を全て立替えた。しかし、本来は設立準備会の立ち上げ前に、準備資金を用意しておくべきであり、その点は会を設立する上で大きな失点であったと考える。女性外来担当医師等に会の主旨を説明し、準備資金のための寄付を依頼するなどの方法もあったと思われ、会設立の発起人は単に名を連ねるだけではなく、資金面での支援もする立場にあったと思われる。会の設立前の準備資金については、今後、支部の立ち上げなどを行っていく場合には、あらかじめ検討する必要がある。
4.会員のIT環境
資金面での課題は、活動費としての会費の活用である。会費は無職の人でも負担感が少ないことを第一に考え、月250円(年会費3000円)と決定した。しかし、実際は、月250円の大部分はNewsの発行に関する諸費用で月会費の大部分が失われてしまう。従って、何か行事を行うことを考えた場合、資金面で会の活動を支えるには不十分な額しか残らない。会員の負担を増やさずに活動資金を充実されるためには、会費に占める通信費の割合を減らすことが今後の課題である。もし、会員全員がインターネットを使える環境にあり、会報の送付をEメールで行えれば、事務経費は大幅に削減できるため、会員のIT環境が現在よりも進むことを期待したい。
5.インターネットによる情報発信
現在は、会員のIT環境が不十分であり、インターネットによる情報発信については設立準備会の中でも、積極的な発言はみられなかった。しかし、更年期女性に対する情報発信や相談を実施しているNPO「メノポーズを考える会」のように、インターネットを活用して幅広い活動をしている先例も参考にしながら、女性外来利用者の横のつながりを広げていくためにも、インターネットの活用は不可欠と考えられる。
独自のドメインの取得などは費用がかかるが、無料サイトの活用によりホームページを作成することも可能である。会の拡大のためにも、ホームページは不可欠であると考えられるため、会のホームページ作成も今後の課題である。