平成17年度厚生労働科学研究費補助金 子ども家庭総合研究事業
分担研究報告書

U-(5)

高齢者の自立度低下要因に関する性差

 

分担研究者 太田 壽城 (国立長寿医療センター)
研究協力者

渡辺 訓子 (静岡県総合健康センター)
武田 良次 (静岡県総合健康センター)
高田 和子  ((独)健康栄養研究所)
西川 美名子 (国立長寿医療センター)

研究要旨

前回は高齢者の生活実態調査を、性別、年齢別に比較検討し、高齢者の生活への満足度、社会への貢献度、自立などに性差がみられることを報告した。そこでは男性の高齢者は生活に満足しており自分が健康で体調がよくて将来に希望をもち、一人で外出できる割合(82.1%)が女性の高齢者の割合(77.3%)より有意に高かった。このことは、女性の平均寿命が長いといっても、平均寿命前から既に一人で外出できる割合が低くなり、決して元気で活動的な生活を送っているわけではないこと、また平均寿命を超えた男性は、なお一人で歩くことができて、元気な人が多いことを示唆していた。今回は、高齢になっても元気で活動的に生活する上で、どのような疾病要因がそれを妨げるのか,そしてその疾病には性差があるのかを検討してみた。

A. 研究目的

高齢者の活動度や自立度と、それを低下させるさまざまな疾病、性との関連性に着目して、前回の対象者を追跡調査し比較検討した。

B. 研究方法

対象者は、平成11年に静岡県内74市町村に在住する高齢者をランダムに抽出し、有効回答をした14,012人に平成14年(2002年)に再度、調査を実施した。このうち12,188人( 87.0% )から回答を得、無効回答を除くと11、506人であった。内訳は、男性5751人(前期高齢者3336人、後期高齢者2415人)、女性5755人(前期高齢者3362人、後期高齢者2393人)であった。また自立低下のリスクをロジステイック回帰で計算しオッズ比を求めた。

C.研究結果

結果は下記の表のようであった。

1.一人で外出できる人で今回新規発症した疾病において、女性高齢者に比べ男性高齢者は高血圧がトップで次いで関節や筋肉の病気が多く、肺や気管支の病気、癌、糖尿病では女性より高率であった。一方女性高齢者の特徴は、関節や筋肉の病気がトップで骨折も男性より高率であった。

高齢者の自立度低下要因の性差 (観察期間中の新規発症疾病)

対象者は静岡県内の平成14年12月10日1から平成15年1月20日までに現在65-84歳の高齢者14012人で、回収率は87.0%(12188人)であった。

さらに無効回答を除いた11506人の内訳は、男性5751人(前期高齢者3336人、後期高齢者2415人)、女性5755人(前期高齢者3362人、後期高齢者2393人)であった。

対象者 男性高齢者(65-84歳) 女性高齢者(65−84歳)
(新規発症疾病) 人数
(%)
リスク
(オッズ比)
人数
(%)
リスク
(オッズ比)
高血圧 366 
(7.3%)
1.194 333
(7.6%)
0.771
関節や筋肉の病気 352
(7.0%)
1.526 445
(10.2%)
2.218
心臓病 219
(4.4%)
2.011 150
(3.4%)
1.396
胃腸病 177
(3.5%)
1.3 129
(3.0%)
1.173
肺や気管支の病気 160
(3.2%)
2.287 54
(1.2%)
1.737
117
(2.3%)
2.892 57
(1.3%)
2.35
糖尿病 114
(2.3%)
1.787 71
(1.6%)
1.665
脳卒中 91
(1.8%)
5.804 49
(1.1%)
4.312
骨折 35
(0.7%)
3.728 70
(1.6%)
2.479

 

2.活動度、自立度を著明に低下させる疾病のリスクは、オッズ比でわかるように男女とも脳卒中が高かった。ついで骨折、癌、と同じように続くが、男性高齢者は肺や気管支の病気、心臓病が高く、関節や筋肉の病気が上位にみられる女性高齢者とでは異なった特徴である。

高齢期の自立低下予防要因( S 県  12,000 人 3年観察研究)



前期 後期 前期 後期

初年度自立(1人で外出)

 

91% 78%

 

87% 59%

 

3年後自立低下

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳卒中発症

 

 

5.8(オッズ比)

 

4.3(オッズ比)

 

 

骨折発症

 

 

3.7

 

2.5

 

3年後自立低下予防

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事・地域活動・世話

 

0.56〜0.67

 

0.65〜0.87

 

 

運動・作業(5回以上/週) 0.49〜0.65

 

0.56〜0.57

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初年度 虚弱 (家庭内,近隣のみ) 5% 14%

 

10% 32%

 

3年後自立低下予防

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事・地域活動

 

0.36〜0.62(オッズ比)

 

0.55〜0.66(オッズ比)

 

 

他人の世話

 

 

0.28

0.67

 

 

家事

 

 

0.42

0.73

 

 

運動・作業(3回以上/週) 0.18〜0.29

0.42〜0.55

 

 

D. 考察


自立度が低下する要因の一位が男女とも脳卒中であることは当然であるが、女性高齢者の活動や自立を低下させる要因として、生物学的性差である女性の筋骨格系の虚弱化、閉経後に急速に進む骨粗鬆症が挙げられるのは特徴的である。また男性高齢者に多い肺や気管支の病気は、男性に喫煙者が多いことから伺える。


E.結論

1.高齢者が発症する疾病には性差がみられる。
2.高齢者の活動や自立を低下させる要因にも性差がみられる。

F.健康危惧情報

なし

G.研究発表


(学会発表)
 なし

H.知的財産権の出願・登録状況


1.特許取得
  なし
2. 用新案登録
  なし
3.その他
  なし