平成17年度厚生労働科学研究費補助金 子ども家庭総合研究事業
分担研究報告書

U-(10)

女性外来実態調査

 

主任研究者 天野 恵子(千葉県衛生研究所 所長)


研究要旨

2006年1月現在の全国における女性専用外来の実態調査を、性差医療情報ネットワークの会員からの情報、インターネット上での検索、女性外来へ医薬品の卸を行っている医薬品メーカー営業担当者の協力などにより行った。2006年1月現在で把握しえた女性専用外来の設立数は356施設。医科大学付属病院が43、国公立病院が119、社会保険・労災病院関連施設が23、私立病院が171となっている。

A. 研究目的

 2001年5月に鹿児島大学医学部第一内科に「性差医療に基づく女性外来」が立ち上げられた。「初診は30分」「完全予約制」「症状・主訴は問わない」「女性医師が担当」を掲げた女性外来は、女性の強い支持を得て全国に続々と誕生している。しかし、現場で提供されている医療サービスを見たとき、開業医が自分の専門性を生かし、その中に性差の視点を取り込んで開設している機関、積極的に性差の視点を取り込んで新しい医療を展開しようとしている大学、男女共同参画社会を念頭に置いた活動を模索する社会保険、労災保険病院での取り組みにおいては、担当女性医師の性差医療に関する理解も深まり、また当該医療機関における他のスタッフの理解も進み、徐々にではあるが良い方向へとかたちを整えつつあるのに対し、議会からの要請に基づき病院長からのトップダウンで設立された県立、市町村立病院における女性外来は、多くが相談業務のみの振り分け外来であり、担当する医師・受診する患者ともその中途半端なあり方に失望しているのが現状である。我々は、日本におけるよりよい女性医療の確立のために、日本女性におけるエビデンスの構築と、性差を考慮した女性医療の普及のための医学教育・研究への性差の視点導入の促進、女性医療を支える医師・コメデイカルの育成、医療・保健の現場と市民への啓発活動を目的として多面的な活動を展開しているが、女性外来実態調査は活動における基礎データとなるべきものである。

B. 研究方法

性差医療情報ネットワークの会員からの情報、インターネット上での検索、女性外来へ医薬品の卸を行っている医薬品メーカー営業担当者の協力などにより、各県に新規開設された女性外来の情報を収集した。

C.研究結果

表1表2ならびに図1に示す。

D. 考察

現在、女性外来は患者側のニーズを受け、急速にその施設数が増加しているが、現場の実態は天野が理想としている「性差医療に基づく女性外来」とは、いまだ大きくかけ離れている。ことに県ならびに市町村の議会の決定により、県立、市町村立病院に設置された女性外来では、担当する女性医師より多くの問題提示がなされている。

@トップダウンで女性外来を担当するように言われたが、何をしていいのか分からない

A振り分け外来だけで終わっていて、自分の介入がどのような効果をもたらしたのがまったく見えない

B周囲のスタッフの協力がまったく得られないという声が主たるものである。

このような事態に対して解決策としては、担当する女性医師に「性差に基づく女性医療」の重要性と未来への展望を語り、彼女たちのやろうとしていることが、これからの「少子・高齢化社会」を支える女性たちのために最も必要な医療サービスであることを認識してもらうことが必要である。

同時に、現在の医学教育の中に、性差の視点が取り込まれていない現状では、現場の女性外来担当医師に必要な教育機会を提供するところから始めなくてはならない。女性の特有な疾患でありながら、医学教育で取り上げられていない疾病を認識してもらうことをはじめとして、女性外来では、精神症状を呈する患者が圧倒的に多く、メンタルヘルスに関する敷居を明らかに低くし、患者を助けていることより、心身医療に関する知識と経験を重ねてもらうことが必須である。

女性外来では漢方が非常に奏効することが多く、漢方と西洋医学の併用が患者からも求められる。漢方薬、中枢神経系用剤に関する知識が不可欠である。現在、我々は全国で漢方ならびにメンタルヘルスのセミナーを女性外来担当医師に向けて展開している。参加者の熱意は非常に高い。

未だ、少数の女性外来担当医師の熱意と情熱に成功・不成功が委ねられている現状を打破するための活動を継続しなくてはいけない。生涯にわたる女性の医療の中で、女性ホルモンと環境がもたらす女性特有の健康障害・疾病に関する理解が教育の中で、医療政策の中で、更に進むことを望む。

表1:全国に展開する女性外来リスト一覧

表2:女性外来設立母体と設立数

図1:女性外来設立母体と設立年度

 

 

 

U-(9)女性外来実態調査

表 2  女性外来設立母体と設立数

 

 

図 1  女性外来設立母体と設立年度