仏教とともに中国から日本に伝来、その後日本独自の発達をとげた漢方医学は、1800年前の文献『金匱要略』からも明らかであるように 、早くから性差の概念をとりいれてきた。また漢方医学は個人単位の医療であることから、性差にもとづいて全人的医療を目指す女性専用外来における医療として必要不可欠なものとなりつつある。現に漢方薬を基本の治療薬として使い、個々の病状に西洋医薬を使うという併用療法が女性専用外来では一般的になり、閉経後の更年期障害の治療には「桂(けい)枝茯苓丸(しぶくりょうがん)」と「加味(かみ)逍遥散(しょうようさん)」が効果をあげている。
欧米では近年、補完・代替医療 (Complementary and Alternative Medicine : CAM) への関心が高まってきており、それに呼応するようにアジア各国(中国、韓国、インド、マレーシアなど)では自国の伝統医療の海外進出への後押しが始まっている。また、2002年に米国国立衛生研究所 (National Institute of Health : NIH) がホルモン補充療法 (Hormone Replacement Therapy : HRT) のリスクに関する研究報告を発表して以来、HRTに代わる更年期障害に対する治療法を模索している米国は、ホットフラッシュ(急に起こるほてりと発汗)に効果のある漢方の複合生薬である「桂(けいし)枝茯苓丸(ぶくりょうがん)」に注目している。
そこでこの研究は、2005年8月23−25日にマレーシアの首都クアラルンプールのクアラルンプール・コンベンションセンターにて「女性のための包括的な健康支援の推進(Promoting Complete Healthcare for Women)」を目指して開催された 『女性の健康とアジアの伝統医療 (Women’s Health and Traditional Medicine: WHAT Medicine) 』 第一回国際会議へ参加、
1/女性の更年期障害の伝統医療による治療の海外における現状の把握、および
2/西洋医学と伝統医療が相互に排他的であるのか、あるいは両立、併用が有効であるのか、という命題に関する情報収集を実施し、それらの結果を女性専用外来の担当医師に向けて発信することを目的としている。