Subject:

Increased risk of ovarian cancer is linked to estrogen replacement therapy

エストロゲン置換療法が、卵巣がんのリスク増加に関与

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National Cancer Institute News Release, July 16, 2002

(翻訳:生賀恵美;文責:松永晶子; 監修:    提供:株式会社ライフモード)

 

アメリカがん研究所(NCI、National Cancer Institute)のリサーチ・グループは、大規模調査へ参加し、メノポーズ後にエストロゲン置換療法を受けた女性のあいだで卵巣がんのリスクが増加したことを確認した。この研究結果は、JAMA(アメリカ医学会ジャーナル)2002年7月17日号に掲載されている。

この研究では、4万4241人の女性が約20年にわたって追跡調査された。ホルモン置換療法を受けていないメノポーズ後の女性と比較して、エストロゲンの単独投与によるホルモン置換療法を受けたメノポーズ後の女性では、卵巣がんに罹るリスクが60%高かった。またこのリスクは、エストロゲンの使用期間が長くなるにつれて増加した。1973年から1980年にかけて、マンモグラフィーによる乳がん検診プログラム「乳がん診断デモンストレーション・プロジェクト(Breast Cancer Detection Demonstration Project)」が実施されたが、このプログラムに参加した女性達が今回の研究対象となり、1979〜1998年にかけて追跡調査された。

「この研究が明らかにした最も重要な事実、それはエストロゲン置換療法を10年以上受けたメノポーズ後の女性は、ホルモン置換療法を受けた経験の無い女性と比較して、卵巣がんに罹るリスクが大幅に高いということです」と、James V. Lacey, Jr.博士は述べる。Lacey博士が主要著者であるこの研究は、NCIのがん疫学および遺伝学部が担当した。メノポーズに伴う短期的な症状(身体のほてり、膣の乾燥・萎縮、尿失禁、尿感染症)の緩和を目的に、女性がエストロゲンの多量投与を受けるようになった時期は、1940年代にさかのぼる。

しかし、エストロゲンだけを服用した女性では、子宮内膜がんに罹る比率が6〜8倍高くなることが1970年代に明らかになったため、医師はエストロゲンの投与量を大幅に減らし、プロゲスチンを併用投与するようになった。プロゲスチンとは、自然ホルモンであるプロゲステロンを人工的に合成したものだ。エストロゲン療法にプロゲスチンを加えることで、エストロゲンの単独使用によって起る子宮内膜がんのリスク増加を抑えることができる。そのため子宮摘出術を受けていない女性には、エストロゲンとプロゲスチンを併用する治療がより広く施されるようになった。

Lacey博士と同僚の研究者は、エストロゲンの単独使用が患者に及ぼす影響だけではなく、エストロゲンとプロゲスチンの併用治療を受けている女性にも卵巣がんのリスク増加が見られるかを調査した。しかしこの二つの併用治療では、リスクの増加は確認されなかった。

「この研究データは、エストロゲンとプロゲスチンの併用投与を受けた女性のあいだでは、卵巣がんリスクの増加が見られないことを示しています。しかしこの研究の中で卵巣がんを発症した女性のうち、エストロゲンとプロゲスチンの併用投与を4年間以上受けていた女性はほんの少数に過ぎません。従ってこの2つのホルモンの併用投与が卵巣がんに影響するか否かを判断するには、現時点では単にデータ不足です」と、Lacey博士は話している。

過去の研究では、メノポーズ後のホルモン治療は、心臓病や骨粗しょう症といった老化に伴う長期的な症状の一部を予防・緩和する効果があることが示唆されて来た。

しかし、複数の医療センターが参加した大規模な臨床試験の結果、エストロゲン+プロゲスチンの併用投与を平均5.2年間受けた女性では、乳がん、冠状動脈性心疾患、卒中、そして肺と脚の血栓の罹患率が増加することが明らかになり、その内容は、2002年7月17日号のJAMA(アメリカ医学会ジャーナル)に掲載された。ウイメンズ・ヘルス・イニシアチブ(WHI)の一環として行われたこの臨床試験では、エストロゲンとプロゲスチンの併用投与を受けていた女性は、大腿骨頚部骨折および結腸直腸がんの症例が少ないことも明らかになった。しかしながら総体的な有害性がその恩恵を上回るとして、先週(2002年7月9日)この臨床試験は予定より3年早く中止された。WHIの無作為臨床試験のうち、子宮摘出術を受けた女性を対象とするエストロゲン単独投与の試験は現在も続行している。

「ホルモン治療は、心血管性疾患、骨粗しょう症、乳がん、子宮がん、胆嚢疾患、血栓、そして今回明らかになった卵巣がんなど、メノポーズ後の女性に影響する多くの症状に関与する可能性があります。したがって、1つの症状に関する潜在的リスクだけに基いて、女性のホルモン使用についての決断を下してはいけません。女性は、ホルモンの使用が自分自身にとって有益であるかという点について、今後も掛りつけの医師とよく相談していかなければなりません」と、Lacey博士は話しており、ホルモン使用に関する多様なリスクと恩恵を推し量ることがいかに複雑であるかを強調している。

メノポーズ後のホルモン使用が、卵巣がんのリスクにどのように関与するのかを調べる過去の研究結果は一貫性に欠けていた。「エストロゲンの使用がリスクを高める」と結論づけるレポートもあれば、「何ら影響無し」とするものや、ホルモン療法を擁護する内容のレポートもあった。しかし初期の研究の大部分は、比較的規模が小さく、卵巣がんの危険因子に関する情報が不完全であったという点で、その信頼性は制限されていた。

最近の大型研究2件では、ホルモン使用と卵巣がんの関連性が確認されている。昨年公表された(JAMA 2001;285:1460-1465)大規模な前向き研究は、メノポーズ後に10年以上エストロゲンを使用することは、卵巣がんの死亡率リスクの増加に関与していると発表している。またスウェーデンで行われた最近の研究(J. Natl. Cancer Inst. 2002;94:497-504)は、エストロゲンの単独使用と、エストロゲンとプロゲスチンの逐次服用(プロゲスチンを月平均10日間使用)が、卵巣がんリスクの増加に関与している可能性を報告している。また逆に、エストロゲンとプロゲスチンを、継続的に服用(プロゲスチンを月平均28日間使用)した場合は、卵巣がんのリスク増加は見られないようだとも報告している。

ホルモンの使用と卵巣がんに関する未知の事象としては、以下が挙げられると、Lacey博士は話す。

★継続期間 vs. エストロゲンの投与量

エストロゲンの使用による卵巣がんリスク増加の原因が、服用量の多さ、服用期間の長さ、またはその両方にあるのかについては、今回の研究からは明白でない。

★エストロゲンとプロゲスチンの併用治療の期間

本研究に参加した女性の大部分は、この併用治療を4年以下しか受けていない。したがって、エストロゲンとプロゲスチンの併用投与が卵巣がんのリスク増加に関与しているか否かを決定するには、より多くのデータ収集が必須である。エストロゲン+プロゲスチンの長期療法がもたらす影響は、未だ解明されていない。

★エストロゲン+プロゲスチンの服用タイプ

継続タイプの服用では、一ヶ月を通して両方のホルモンを同時に服用する。一方逐次タイプの服用では、エストロゲンを毎日服用し、プロゲスチンは一ヶ月10〜14日間だけ服用する。

★複数種類のホルモン置換療法の使用

たとえば、エストロゲンの単独使用が子宮内膜がんのリスクを増加させるという報告を受け、一部の女性は、エストロゲンの単独使用からホルモンの併用投与による治療法に変更した。治療法の変更がもたらす影響については、さらなるデータ分析が必要である。

エストロゲンの剤型

大部分の研究は分析の対象として、錠剤型エストロゲンを使用している。しかし錠剤の他にも、パッチ、注射、軟膏などがある。

アメリカでは年間およそ2万3000人の女性が卵巣がんと診断されており、また卵巣がんによる死亡件数は、年間1万4000人に上る。女性が一生のうちに卵巣がんに罹患する確率は、1.7%である。つまりこれは、女性100人を誕生から85才まで追跡調査した場合、2人弱が卵巣がんに罹ることになる。一方乳がんに罹る女性は13人(一生のうちに乳がんに罹る確率は、13.3%)、子宮がんに罹るのは3人弱(一生のうちに乳がんに罹る確率は、2.7%)、そして骨粗しょう症に罹るのは、16〜32人である。

今後20年間にメノポーズを経験するアメリカ人女性は4000万人と推定され、今日のアメリカ人女性は、人生のおよそ3分の1をメノポーズ後に過ごしていることになる。

現在、50〜75才のアメリカ人女性の20〜45%が、何らかのホルモン置換療法を受けている。アメリカ人女性の約800万人がエストロゲンの単独使用を、そして約600万人がエストロゲンとプロゲスチンの併用をするだろうと予測されている。そしてホルモンを使用する患者の約20%が、服用を5年以上継続している。