アジア系アメリカ人女性は、他の人種と比較して乳がんのリスクが低いとこれまで言われて来た。しかし、Keck School of Medicine of USC(南カリフォルニア大学ケック医学部)およびUSC/Norris Comprehensive Cancer Center(南カリフォルニア大学/ノリス総合がんセンター)の疫学者グループは、アジア系アメリカ人女性の乳がん罹患率が増加傾向にあることを確認した。International Journal of Cancer(国際がんジャーナル)6月10日号に掲載されたこの研究結果は、特に日系アメリカ人女性の乳がん罹患率が急増していると報告している。
この研究は、1990年代半ばから後半にかけて、Los Angeles Cancer Surveillance Program(CSP、ロサンジェルスがん調査プログラム)に報告されたがんの症例に基いている。このプログラムは、全米でも最も人口が多く、そしておそらく最も多様な人種で構成されているロサンジェルス郡におけるがんの報告記録であり、ロサンジェルスの乳がん罹患率は、全米の罹患率とほぼ同じである。
研究グループは、日系およびフィリピン系アメリカ人女性の乳がん罹患率が、中国系または韓国系アメリカ人女性のそれと比較して約2倍であることを確認した。また中国人女性を除いた日系、フィリピン系、韓国系女性全ての間で、1993〜1997年に乳がんの罹患率が上昇していることも明らかになった。
「これまではアジア系アメリカ人女性が乳がんに罹患する比率は低かったのですが、もはやそうではないようです。伝統的に乳がんの罹患率が最も高いのは、ヒスパニック(ラテンアメリカ)系以外の白人アメリカ人女性です。しかし1990年代からの増加傾向が継続していたら、ロサンジェルス郡の日系アメリカ人女性の乳がん罹患率はそれ以上になっていたかもしれません」と、CSPロサンジェルス郡のディレクターであり、予防医学教授のDennis Deapen氏は話す。
この研究からは、乳がんに関する以下のような研究結果が得られている。
★5年の研究期間中、50歳以上のアジア系女性の間で、乳がんと診断された症例数は年間約6.3%増加した。一方ヒスパニック系以外の50歳以上の白人アメリカ人女性では、その数は同じ研究期間中に年間約1.5%増加した。
★1997年、アジア系アメリカ人女性の乳がん症例数は10万人中78件であった。ヒスパニック系以外の白人アメリカ人女性の乳がん症例数は、10万人中約129件、アフリカ系アメリカ人女性では約98件、ヒスパニック系女性では約64件であった。
★アジア系アメリカ人をさらに国別の血統に分類すると、それぞれの乳がん罹患率には格差が見られる。1997年に報告された10万人あたりの乳がん症例数は、日系女性が114件、フィィピン系女性が約98件、中国系女性が約51件、そして韓国系女性が約45件であった。
「ロサンジェルス郡における日系アメリカ人女性の乳がん罹患率は、世界でも最も高い数値です」とDeapen氏は話す。日本国内だけを見ても、1960年から1980年代の終わりにかけて、乳がん罹患率は2倍以上に急増していることが調査で報告されている。日本ではライフスタイルの西洋化が進み、子どもの数の減少、身体活動の減少、肥満の増加など、乳がんリスクを高める要因に影響を及ぼしていると、調査レポートの著者は述べている。また日本人の間では、脂肪分の摂取量が増加する一方、大豆食品の摂取量が減少している。
アジア人女性がアメリカへ移住すると、後の世代で乳がんリスクが高くなることが研究により明らかになった。この研究で分析された4つのアジア人グループの中でも、最初に大規模な人口数がロサンジェルス郡へ移住したのは、日本人であり、フィリピン人がそれに次ぐ。それに比べ中国人と韓国人は、比較的最近の移民であり、また移住による文化変容をさほどしなかった民族である。
この調査結果が明らかにした乳がんの増加傾向は、「アジア系アメリカ人女性、特に日系女性にとって、乳がんが深刻な健康上のリスクである」という意識を高める必要性を示唆していると、Deapen氏の研究グループは記述している。
アジア系アメリカ人女性の乳がんリスクは、伝統的に平均以下の数値であった。しかし、それがもはや事実では無いこと、そして他民族の女性と同様に、アジア系アメリカ人女性が乳がん検診を受けることが重要であることを、医師は認識する必要がある。
「がんの罹患率の急速な増加は、食事や運動などの外的要因がリスクに大きく影響していることを示唆しています。そしてこのような要因は改善することが可能です」とDeapen氏は加えている。
|