5年間のタモキシフェン治療を終了した女性患者は、再発リスク低下を維持するためにレトロゾールの使用を考慮するべきであると、国際臨床試験が結論付ける。
カナダが中心となって行われたある国際臨床試験では、メノポーズ後の早期乳がん克服者が、最初の5年間のタモキシフェン治療を終了した後にレトロゾールを服用すると、偽薬を服用した女性患者と比較して、がん再発のリスクが大幅に低減されることが明らかになった。この試験結果は、New England Journal of Medicine(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メデシィン)のオンライン版に掲載されている。
この臨床試験は、肯定的な結果が得られたために予定より早期に中止されており、研究グループは世界中の試験参加者5,187人の女性に通知を出している。今後は、レトロゾール投与群の女性は服用を継続し、偽薬投与群の女性は希望に応じてレトロゾールの服用を開始することができる。
「乳がん治療における今回の重要な成果は、何千もの女性の将来を向上させるでしょう。この方法は、腫瘍細胞内の致命的な代謝経路を封鎖する薬品により、がんの進行を阻止する能力の一例です」と、アメリカでの臨床試験を指揮したNational Cancer Institute(アメリカ国立がん研究所)所長の Andrew von Eschenbach医師は話している。
研究グループは、5年間のタモキシフェン治療の後にレトロゾールを投与すると、がんが再発しない比率が大幅に増加することを確認した。偽薬投与群では、合計132人にがんの再発が見られたのに対し、レトロゾール投与群では75人であった。総合的には、レトロゾールは再発のリスクを43%低下させており、臨床試験への参加開始から4年を経た時点で、偽薬投与群では13%、レトロゾール投与群では7%の女性に再発が起こった。また乳がんを原因とする死亡件数も減少しており、偽薬投与群では17人が死亡したのに対し、レトロゾール投与群では9人であった。
タモキシフェンは、乳がんの再発予防の目的で、メノポーズ後の女性を対象に広く使用されている。しかしその効果は5年後に消滅し、研究グループはその理由を、腫瘍がタモキシフェンに耐性を持つようになるからだと考えている。
「再発性乳がんを形成する女性のうち半数以上は、最初の診断から5年以上を経過してから再発を起こしています。私達はこの理由について、再発のリスク低下を目的とする5年間のタモキシフェン治療の効果がその限界に達したためだと、これまで何年も考えて来ました。しかし今回の試験では、タモキシフェン治療後の乳がんの再発および死亡数がほぼ半数に減少しました。私達の研究が、新たな希望の時代を築こうとしています」と、トロントのPrincess Margaret Hospital(プリンセス・マーガレット病院)の、Paul Goss医師は話す。乳がんの治療および予防を目的とする最新ホルモン治療の第一人者であるGoss医師は、レトロゾールの国際的臨床試験を提案し、その委員長を務めた。
エストロゲンは、多くの乳がんにおける主要な成長刺激物である。乳がん治療用のホルモン療法の一形態であるレトロゾールは、アロマターゼと呼ばれる酵素のエストロゲン生産能力を抑制することで機能する。
Mayo Clinic(メイヨ・クリニック)のがん専門医James Ingle医師は、「約5年間のタモキシフェン治療を完了し、ホルモン受容体が陽性の腫瘍を持つメノポーズ後の女性患者は、乳がん再発のリスクを低下させるためのレトロゾールの使用について担当医と検討するべきだと、私達の研究結果は示唆しています」と話す。ミネソタ州ロチェスターのIngle医師は、アメリカでの臨床試験を指揮した。
カナダがん学会が研究資金を提供したこの臨床試験は、Queen’s University(クィーンズ大学)に所在するカナダ国立がん研究所臨床試験グループと、アメリカ国立がん研究所およびその臨床試験協同グループ(Clinical Trials Cooperative Groups)とのパートナーシップの下に実施された。また使用された薬品は、FemaraRとして知られるレトロゾールを製造するNovartis社から提供された。
臨床試験の参加期間は、平均で2.4年間、最長で5年間であった。レトロゾールを服用した女性では、以前がんに冒された乳房でのがん再発件数が減少し、もう一方の乳房では、新たながんの形成件数が減少した。さらに乳房以外の部位への転移も減少している。
1日1錠を服用するレトロゾールの副作用は、メノポーズ時に女性が経験する症状と非常によく似ている。臨床試験参加者に確認された副作用は、全体的に軽度であった。レトロゾールの長期的使用が、骨の強度や他の器官に及ぼす影響をより総合的に評価するために、参加者の追跡調査は今後も継続される。追跡調査の結果が出るまでは、患者の綿密なモニターが必須である。
「カナダがん学会は、この臨床試験に貢献できたことを喜ばしく思います。カナダでは今年2万人以上の女性が乳がんと診断されることが予測されますが、その半数強がこの薬を使用することが可能です。つまりこれらの女性が抱く『がんの無い未来』という希望が、大きく現実性を増すということです」と、カナダがん学会がん抑制政策のディレクターを務めるBarbara Whylie医師は話す。
「この大規模臨床試験は1998年に開始したばかりですが、私達は、標準的治療法を変える重要な結果を既に得ています。臨床試験に参加した患者や医師の努力が、多くの生命に肯定的な影響を与えるわけですから、彼らにとっても報われた結果だったでしょう」と、アメリカ国立がん研究所の協同グループ乳がん治療試験のコーディネーターJeffrey Abrams医師は話している。
この臨床試験の参加者は、カナダ、アメリカ、イギリス、ベルギー、アイルランド、イタリア、ポーランド、ポルトガル、スイス各国の病院、がんセンター、研究機関から募られた。ヨーロッパでの臨床試験は、European Organization for Research and Treatment of Cancer(ヨーロッパがん研究・治療機構)とInternational Breast Cancer Study Group(国際乳がん研究グループ)がコーディネートした。
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