ミシガン州デトロイトのHenry Ford Hospital(ヘンリー・フォード病院)の研究によると、生後6ヶ月以内に抗生物質を摂取した子どもでは、ペット、ブタクサ、草、チリダニに対するアレルギーやぜん息を7歳までに発症するリスクが高まる。しかし子どもが生後1年間に少なくとも2匹以上の犬または猫のペットと生活した場合、このようなアレルギー発症の影響を受けにくくなるという結果も得られている。さらにこの研究グループは、母乳および母親のアレルギー病歴もまた、抗生物質を摂取する子どものアレルギーのリスクを高めるとしている。子どもを対象に「抗生物質とアレルギー」および「抗生物質とぜん息」の関連性を明らかにした研究は、アメリカではおそらくこれが初めてである。
この研究内容は、9月30日にウィーンで開催されるヨーロッパ呼吸器学会年次大会で、本研究の主要著者であり、ヘンリー・フォード病院生物統計学&研究疫学部の上級研究疫学者のChristine Cole Johnson博士によって発表される。
「私は、子どもは抗生物質を摂取するべきではないと言っているわけではありません。しかしこのような早い時期における抗生物質の処方は、より慎重に行う必要があると思います。過去には大量の抗生物質が不必要に処方されて来ましたが、中でも風邪やインフルエンザといったウイルス感染向けのものは、何の効果も期待されていませんでした」と、Johnson博士は述べている。Johnson博士は、抗生物質の使用が胃腸管を冒し、子どもの免疫系の発達を変えてしまうのではないかという学説を立てている。
子どもの抗生物質の使用は1997年から1990年代初期にかけて増加したが、連邦衛生局はこの状況を「抗生物質耐性における公衆衛生の危機」と呼んだ。アメリカ疾病管理予防センターは、子どもへの抗生物質の処方に対するより慎重な対処を呼びかけるため、全国キャンペーンを要請した。
今回のヘンリー・フォードの研究は、同数の男女が含まれる合計448人の子どもを対象に、彼らの誕生から7歳まで追跡調査を行った。データの収集は、出生前と4歳までの各誕生日に行われた。そして子どもの年齢が6歳および7歳に達した後は、資格を持つアレルギー専門医による臨床評価が行われた。
データには、処方された全ての経口抗生物質、アレルギーを引き起こす抗体(免疫グロブリン E)を測定する血液検査、アレルゲンに対する過敏性の有無を示す皮膚反応検査などの情報が含まれている。また研究グループは、子ども達の通院の際にも毎回データを収集しており、環境サンプルの収集を目的とする家庭訪問も行っている。
448人の子どもの49%が、生後6ヶ月以内に抗生物質を摂取しており、処方された抗生物質のうち最も多かったのはペニシリンであった。その他以下のような結果が得られている。
- 生後6ヶ月以内に少なくとも1種類の抗生物質を摂取した子どもは、摂取しなかった子どもと比較して、7歳までにアレルギーを発症する比率が1.5倍、ぜん息を発症する比率が2.5倍高くなる。
- 生後6ヶ月以内に少なくとも1種類の抗生物質を摂取し、なおかつ2匹未満のペットと暮らしていた子どもでは、7歳までにアレルギーを発症する比率が1.7倍、ぜん息を発症する比率が3倍高くなる。
- 生後6ヶ月以内に少なくとも1種類の抗生物質を摂取し、なおかつ母親にアレルギーの病歴がある子どもでは、アレルギーを発症する比率が約2倍高くなる。
- 生後6ヶ月以内に少なくとも1種類の抗生物質を摂取し、なおかつ4箇月以上母乳を飲んでいた子どもでは、アレルギーを発症する比率が3倍高くなる。しかし母乳が、抗生物質によるぜん息のリスクに影響を及ぼすことはない。
永山洋子先生からのコメント:
Hygiene Hypothesisという仮説がありますが、衛生状態が良くなったため、子供の免疫がきたえられなくなり、それがアレルギー発症が増えたことの一因とする説です。これは小児科医にはかなり支持されている考えですが、仮説が複雑でいくつかの条件があるために、仮説だけが、一人歩きする危険があります。小児科医はこの文章を読むと、次のように考えます。抗生剤を飲まなければいけないような児は免疫機能が悪く、その結果、喘息になるのだろうと。単純に抗生剤が喘息発症を起こすとは考えにくいです。日本では外国より、多量な抗生剤が使われていると思いますので、抗生剤の制限は耐性菌の出現を起こすという点から、使い過ぎに注意をしましょう。
|