女性のプライマリ・ケア医師は、男性医師と比較して、患者と過ごす時間が長く、社会性や感情面に焦点をあてた肯定的な話しを患者とする傾向がより高いと、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部(Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health)およびノースイースタン大学(Northeastern University)の研究チームは発表している。これは、医師のコミュニケーションに関する過去の調査を体系的に再考察した結果であり、その内容は、JAMA(アメリカ医学会ジャーナル)2002年8月14日号に掲載されている。
「我々の考察によると、女性医師は、患者を主体に考慮し、患者の状態を生活全体から捉えたコミュニケーションを持つ傾向が、男性医師以上に高いことが判明しました。女性医師は、質問やカウンセリング、また患者の気持ちに関する話や、建設的な話を通じて患者の心理的問題に取り組むことによって、このようなコミュニケーションを行っています。通常は医師の言うことが第一に考慮されますが、女性と男性ではコミュニケーションの方法も異なります。今回の結果は、日常生活で私達が予測する内容と一致しています」と、この調査レポートの主要著者で、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部の保健政策および保健管理学教授のDebra L. Roter博士は述べる。
この考察を行うにあたり調査グループはまず、1967〜2001年に公表された医師のコミュニケーションに関する研究をオンラインのデータベースで検索した。
その結果選択された23件の観察研究と、医師の報告に基いた診察時間に関する大規模調査3件を統計学的に分析した。
その結果、女性のプライマリ・ケア医師では、「医療関連の決定をするにあたり患者の参加を積極的に奨励する」、「医師と患者の地位を平等化する」とこの研究グループが説明する「協力的行動」をとる頻度が大幅に多いことが判明した。考察された12件の研究のうち6件で、積極的な協力体制をもつ頻度が女性医師の方で大幅に高く、2件ではその逆の状態が確認された。
またその他の研究では、女性医師は男性医師と比較して、肯定的な話し合い、心理的な質問やカウンセリング、そして感情面を重視した話を患者へ提供する傾向がはるかに高いことが分かった。しかしながら、社交的な会話や、診断、治療、予後診断に関する話し合いなど生物医学的情報の量、質、方法については、医師の性別による格差は確認されていない。
また今回の調査では、女性医師による患者の診療時間は、男性医師のそれと比較して約10%長いことも判明した。観察研究10件のうち5件、そして医師の報告に基いた大規模調査3件では、女性医師の診療時間の方が大幅に長く、平均では女性が患者の診療に23分を費やすのに対し、男性医師では21分であった。
研究グループは、今回の調査結果が、産科および婦人科には該当しないことを注記している。これらの科では男性医師の方が女性医師以上に、患者に長い時間を費やし、また感情面を重視した話し合いを行っている。プライマリ・ケア以外の医師を対象とした調査研究の数は少なく、下位専門分野の医師における性別による医療行為の格差を判断するには、さらなる研究が必要であると研究グループは話している。また今回考察された研究の中には、コミュニケーション能力と、臨床の成果を関連付けたものは無かった。
「我々が確認したのは実存する格差です。しかし今回明らかにされた影響の重要性はさほど大きなものではなく、男性医師と女性医師のコミュニケーションの方法には多くの共通点があります。インタビューのスタイルを変え、教育的な取り組みにオープンになるという点については、男性医師、女性医師の両方に改善の余地があります。また一部の研究は、医師にインタビューの方式を教えることは可能であると示唆しています。コミュニケーションに見られるこのような格差は、私達の社会の産物です。しかしこれを改善することは可能です」と、この研究レポートの共同著者で、ノースイースタン大学心理学部教授のJudith A. Hall博士は説明している。
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