Subject:

Computer predicts outcome of breast cancer

乳がんの前途をコンピュータが予測 - 革新的技術が救命につながる

Source:

University of Newcastle upon Tyne News Release, July 24, 2002

(翻訳:生賀恵美;文責:松永晶子;監修:    提供:株式会社ライフモード)

 

乳がんの前途を予測することを目的に、科学者グループが、人間の思考を模倣するコンピュータシステムを「訓練」している。

このシステムは、女性患者100人を対象に行われた予備調査において、「乳がんが身体の他の部位へ転移するか」、「がんの再発が起らずに患者が5年間生存するか」という疑問について、10人中9人の確率でその前途を正確に予測した。

イギリスのニューキャッスル大学(Newcastle University)でこのシステムの開発にあたったGajanan Sherbet博士とRaouf Naguib博士は、集中治療を受けるべき患者を早い段階で発見できるよう専門家をサポートすることで、このシステムが将来患者の救命につながればと、話している。

イギリスの慈善団体キャンサー・リサーチ(Cancer Research UK)が資金を提供したこの研究は、ニュー・サイエンティスト(New Scientist)誌の2002年7月27日号に掲載されている。その中で同研究は、乳がんの進行状態の予測に現在使用されている統計学的手法の中には、信頼性に欠けるものがあることを示唆している。

Sherbet博士とNaguib博士は、ニューキャッスル大学電気・電子工学部において、コベントリー大学(Coventry University)の数学および情報科学学部の協力を得ながら、ニューラル・ネットワーク(神経回路網)とファジー論理を統合した強力なシステムを構築した。ニューラル・ネットワークには、脳の神経とニューロン(神経単位)をモデルとするコンピュータ回路が組み込まれている。またファジー論理は、元来自然言語の不確実性を模倣する手段として開発されたものだ。

構築されたシステムは次に、乳がん患者から採取された組織サンプルの細胞の画像を分析する訓練を受けた。疾患の前途を予測するにあたり、この異常性のパターン分析が使用される。

乳がん自体は比較的扱うのは簡単だが、問題はリンパ腺から身体の他の部位へ転移する危険性があることだ。リンパ腺の生体組織検査を定期的に行っても、がんは必ずしも早期段階で発見されるわけではない。

Sherbet博士とNaguib博士が開発したこの技術は、患者から腫瘍組織を採取し、その顕微鏡写真を撮影してコンピュータ解析する「イメージ・サイトメトリー(画像血球計算)」と呼ばれる既存技術を伸長させたものだ。

二人の博士は、がんの侵襲性を示唆する4つの指標を測定するようコンピュータをプログラムした。4つの指標とは、余分なDNAを持った細胞の割合、サンプル全体におけるDNAレベルのパターン、分裂を起こしている細胞の数、そして細胞核の形である。

これらの情報がニューラル・ネットワークへ入力され、そしてファジー論理が適用される。ニューラル・ネットワークはパターンの認識に特に優れており、またファジー論理は、可能な限り精密にそのパターンに適合するようデータに「負荷」をつける。

Sherbet博士とNaguib博士は、50人の乳がん患者から採取した組織サンプル、そしてがんの再発や5年生存率といった症例の前途に関するデータを使用しながら、システムの訓練/較正を行った。

そして追加50症例のデータをコンピュータへ入力し、そのうちどの患者がリンパ腺に腫瘍を形成するのかをコンピュータに予測させたところ、88%の確率で正しく予測した。さらにどの患者が5年後に生存しているかという予測についても、同様の精度を達成した。

Sherbet博士とNaguib博士、そしてこのリサーチに協力したイタリアのミラノの科学者グループは、ファジー論理とニューラル・ネットワークを統合したこのシステムは、既存のどの技術よりも洗練されたものであると公言している。

「この技術により、統計学やアーティフィシャル・ニューラル・ネットワークを基盤とする手法以上に信頼性の高い前兆的要因モデルが作成できたと、私たちは考えています。さらにこの研究結果は、個々の患者の症例における重要な前兆的要因の認識、そして疾患発症の予測という両方の点に関して、既存の統計学的手法の信頼性が低い可能性があることを示唆しています」と、研究グループは、この研究結果が掲載されているJournal of Anticancer Research(制がん研究ジャーナル)の中で述べている。

医学分野の経歴を持つSherbet博士は、「今回の研究では有望な結果が得られましたが、この技術を実際に病院に導入するには、まず本格規模の試験を行い、研究結果を確証する必要があります」とコメントしている。

Sherbet博士は、カリフォルニア州の分子医学研究所の教授でもあるが、今回はニューキャスル大学でNaguib博士とこの共同研究を行った。Naguib博士は最近、イギリスのコベントリー大学、数学・情報科学学部のバイオメディカル・コンピューティング教授に任命されている。