Subject:

UF 'smart home' demonstrates concept of automated elderly help and care

高齢者支援と介護の自動化コンセプトを実証 - フロリダ大学の「スマート・ホーム」

Source:

AAAS/EurekAlert!, November 19, 2003

(翻訳:生賀恵美;文責:松永晶子;監修:    提供:株式会社ライフモード)

 

85歳のマチルダさんは、虚弱で忘れっぽい。フロリダ州では、1人での生活が困難な州民の数が増加しているが、彼女もその段階に達したようだ。しかしマチルダさんは、アシスティッド・リビング型の施設や老人ホームへの入居を、しばらくは考えないだろう。少なくとも彼女が実際に人間の高齢者だったならばそうはしないだろう。

マチルダさんは実物大のマネキンで、その「PTAのお母さん」を思わせるめがねとかつらから、彼女が高齢者であることがうかがえる。彼女の自宅は、フロリダ大学に建設された500平方フットの実験的「スマート・ハウス」である。最新のコンピューターやセンサー技術が装備されたこの家では、自宅で生活するうえで、老化が進むにつれて必要となる支援が自動的に提供される。

スマート・ハウスは、家具付きのリビングルーム、キッチン、ベッドルーム、バスルームで構成され、フロリダ大学コンピューター・サイエンス・エンジニアリング学部校舎の4階にあるコンピュータ・ラボの大部分を占領している。単に居心地が良いだけではなく、この生活空間は完全装備されている。料理を認識して自動的に調理時間を決定する電子レンジから、高齢者の居場所を家の中で追跡するセンサーに至るまで、多様な生活支援デバイスが設置されている。またこれらのデバイスはコンピューター・ネットワークでリンクされ、相互に監視し合うよう設定されている。しかし何よりも重要なのは、衣服に設置された電子機器からマチルダさんを監視する機能である。

「このホームは、『支援デバイス』から『支援環境』への進展を示しています」と、コンピューターおよび情報科学・工学のSumi Helal助教授は話す。Helal助教授は、フロリダ大学のRehabilitation Engineering Research Center on Technology for Successful Aging(良好な老化をもたらす技術に関するリハビリテーション・エンジニアリング・リサーチセンター)の技術開発ディレクターでもある。

以下は、このスマート・ハウスが老化を経験する住人に提供する生活支援の一例である。

l 床に水漏れが起こると、家がそれを探知し、住人に携帯電話で警告する。
l ドアの外に訪問者が来ると、まずセンサーが住人の居る部屋を特定し、その部屋にあるテレビスクリーンに訪問者の画像を映す。
l ドアの鍵を解除する場合は、住人が携帯電話にそれを口頭で指示する。するとコードが送信されて電子ラッチが解除される。

先日National Institute for Disability, Rehabilitation and Research(アメリカ国立障害・リハビリテーション・リサーチ研究所)から450万ドルの助成金を受けた同リハビリテーション・センターは、人々がより長期にわたって自律した生活を送ること、そして彼らの介護費用を削減することを目指している。

日常生活をおくるうえで外部からの支援を必要とするのは、60歳代では全体の10%に過ぎないが、80歳以上では50%に上る。そのため同センターの研究グループは、研究対象を絞っていると、同センターのディレクターであり、フロリダ大学保険専門学部、作業療法学科教授・学部長のWilliam Mann氏は話す。

7,800万人のベビー・ブーマー世代のうち最も高い年齢層がちょうど60代に差し掛かるなか、支援介護の需要と費用は、今後20年に大幅に増加することが予測されると、Mann氏は話す。「医療費の使い方の問題が深刻化するのは20年後ですが、それ以前に多くの人々が支援介護を必要とするようになるでしょう」と、Mann氏は話す。

特に全州民のうち75歳以上が占める割合が、約9%(約150万人)と全米でも最も高いフロリダ州では、現在の支援介護の解決策が必須となる。この需要は増加する一方であり、フロリダ州立大学Pepper Institute on Aging & Public Policy(ペッパー老化&公共政策研究所)による2002年の「フロリダ州の高齢化人口」レポートでは、同州の85歳以上の人口数は、2020年までに約65万人へ倍増すると予測されている。

老化に関連して起こる障害を軽減するうえで技術がどのように役立つのかを10年以上にわたって研究して来たMann氏は、高齢者のあいだで支援デバイスの「驚異的な需要」が生まれることが、研究から明らかになったと話している。

彼の研究は、このようなデバイスを取得・使用する高齢者は、何の支援も受けていない高齢者と比較して、衰弱のスピードが遅くなる傾向があることを示唆している。またこれらの研究では、このシステムの費用は、通常の介護費用より少ないと評価されていると、Mann氏は加えている。

私達の固定観念に相反して、高齢者がテクノロジーを歓迎するケースは少なくない。コンピューターを受け取ったある女性は、「以前は朝起きると、『神様、どうぞ今すぐに私をお召しください』と祈ったものでしたが、今は毎朝『神様、コンピューターを使う時間をもう少し私にください』と、お願いしています」と言っていたと、Mann氏は話す。

スマート・ハウスは、テクノロジーを中核とする在宅介護の次のステップを提示している。現在使用されている、それぞれが独立した支援デバイスの集合とは異なり、スマート・ハウスは中央化されたコンピューター・ネットワークを基盤に、エアコンが、静かにそして自動的に冷気を家中に送り込むように、組織的に調整された支援を電子的に提供する。例えば音声コマンドを携帯電話に送ることで、住人は、電気、ステレオ、テレビのスイッチを入れることも、窓のカーテンの開け閉めもできる。住人がある部屋から別の部屋へ移動すると、スマート・ハウスがそれを感知し、住人が入った部屋のテレビのスイッチを入れて適切なチャンネルに合わせる。家のセキュリティーが心配になった場合、住人が携帯電話に家の安全性を尋ねると、電話がドアの状態を確認し、音声でその結果を報告する。

工学部からの3万8,000ドルの援助により装備されたこのスマート・ハウスについてHelal助教授は、「アイデアを試し、実際にどのように機能するのかを目で確かめることができる場所」であると説明している。しかし彼は、このビジョンは未だ完成されてはいないと加えており、将来的には、介護者がテクノロジーを使用して、遠隔地から住人の健康状態をモニターできるようになるだろうと話している。

センサーが動きを全く感知しない時は、介護者が住人に電話をかけたり、確認のために誰か人を送ることができる。痴呆症状のある患者では、行動の最中に自分が何をしていたのかを忘れてしまうことがよくあるが、このスマート・ハウスは、このような患者に何らかの刺激を与え、彼らの行動を促進することも可能だ。「ライフライン・タイプのデバイスを引くことから、環境全体で住人を支援する段階へと進化しています」と、Helal助教授は話す。